映画「パルプ・フィクション」はアカデミー賞やカンヌ国際映画祭のパルムドール(グランプリ)に輝いた作品です。さまざまなメディアで絶賛され、公開から四半世紀が過ぎた今なお高い人気を誇る傑作映画であり、監督はハリウッドの鬼才クエンティン・タランティーノです。
脇役の一人ひとりまで個性的な登場人物、隅々まで趣向を凝らしたエピソードの数々。どの一場面を切り取っても面白い、とにかく楽しめるのがこの映画の特徴です。
内容が把握しづらく、難解ともいわれる映画『パルプ・フィクション』について、個人的な感想をまじえながら解説・考察してみたいと思います。ネタバレを含みますので、これから観る方はご注意ください!
目次
映画「パルプ・フィクション」を観て学んだ事・感じた事
・登場人物が一人ひとりそれぞれ個性的で魅力的!
・映画の中で使われる音楽が最高!サントラも最高!
・隅々までこだわり抜いた、とにかく面白い映画
パルプ・フィクションの作品情報
公開日 | 1994年 |
監督 | クエンティン・タランティーノ |
脚本 | クエンティン・タランティーノ |
出演者 | ジョン・トラボルタ(ヴィンセント・ベガ) サミュエル・L・ジャクソン(ジュールス・ウィンフィールド) ブルース・ウィリス(ブッチ・クーリッジ) ユマ・サーマン(ミア・ウォレス) クリストファー・ウォーケン(クーンツ大尉) ハーヴェイ・カイテル(ザ・ウルフ) |
映画「パルプ・フィクション」のあらすじ・内容
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ギャングのヴィンセント(ジョン・トラボルト)と、ジュールス(サミュエル・L・ジャクソン)は、ギャングのボス・マーセルスの命令で、裏切り者たちからアタッシュケースを取り戻しに行きます。無事アタッシュケースを手に入れた二人は、情報屋のマーヴィンを車に乗せてボスの元へ向かいました。
しかし、ふざけて銃をマーヴィンに向けていたヴィンセントは、うっかりマーヴィンを射殺してしまいます。二人は血まみれになった車と死体を友人のジミー(クエンティン・タランティーノ)と掃除屋のウルフ(ハーヴェイ・カイテル)に任せ、着替えて朝食を取りにレストランへ行きます。すると、そのレストランで強盗事件が発生!ジュールスは、客に向かって銃を向けるカップルの強盗を諭し、二人にお金を渡して強盗をやめさせるのでした。
無事アタッシュケースを届けたヴィンセントは、マーセルスの妻ミア(ユマ・サーマン)のお守を任されます。踊りに行ったり食事をしたり、ミアがヘロインを吸い込んでしまって死にかけたりと大騒ぎしながらも、なんとか無事に役目を終えることができました。
場面は変わり、ボクサーのブッチ(ブルース・ウィリス)は、マーセルスに掛け試合での八百長を頼まれていました。しかし、ブッチはこっそり自分に大金を掛けておいて、試合に勝利し、そのまま恋人と一緒に逃亡します。
ところが、ブッチは大切な形見の金時計を自宅に忘れてきてしまいます。あわてて自宅に戻るブッチ。そこには、マーセルスの部下ヴィンセントがいました。しかし、ブッチはうっかり銃を置いたままトイレに入っていたヴィンセントを射殺。無事、金時計を持って家を出ます。
逃走中のブッチは街でマーセルスに遭遇。バイクでひき殺そうとしますが失敗し、逃げ込んだ質屋で店主に捕まってしまいます。ブッチを追ってきたマーセルスも捕まり、変態の店主に縛られてしまいました。
なんとか縄をほどいたブッチはマーセルスを助けて店から脱出。助けてもらったマーセルスはブッチの裏切りを許し、ブッチは走り去っていくのでした…。
映画「パルプ・フィクション」のネタバレ感想
とにかくクール!おしゃれでカッコイイ映画の代名詞
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映画『パルプ・フィクション』が公開されたのは1994年。ユマ・サーマンがタバコをくゆらす刺激的なポスター、ベースラインが特徴的な音楽、とにかくクールでカッコイイ!というのが、この映画を見た最初の感想です。
デンデレデレデレ…というベースの音で始まるあの曲、一度聴いたら忘れられませんね。ちなみにこの曲は、ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズの「ミザルー」です。後ほどサントラについても詳しく紹介します。
映像やセリフ、ストーリー、音楽もカッコイイ映画『パルプ・フィクション』の魅力は、四半世紀が過ぎた今でも色あせることがありません。
その秘密はクエンティン・タランティーノ監督の圧倒的なセンス!独学で映画を学び、抜群のセンスでヒット作を作り続けるタランティーノ監督の活躍をみていると、映画の魅力は技術力や力量よりも、監督のセンス次第なのだということがよくわかります。
【考察】パルプ・フィクションはどうして難解な映画なのか?
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パルプ・フィクションはとにかく面白い映画ですが、それと同時に難解で一度では理解できない難解な映画ともいわれています。
あらすじの章でご紹介した通り、この映画には特に入り組んだ設定があるわけでもなく、実はとてもシンプルなストーリーなのです。登場人物も把握できないほど多いわけではありませんが、この映画はエピソードをバラバラにして、時系列の順番を入れ替えて構成しています。
過去から順にさかのぼっていくという映画はよくありますが、ここまで順番がめちゃくちゃな映画は珍しいのではないでしょうか。この突き抜けたところがクエンティン・タランティーノ監督の大きな魅力の一つであり、難解と言われる理由です。
【考察】バイオレンスなギャング映画なのに笑える理由
![【考察】バイオレンスなギャング映画なのに笑える理由](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
映画『パルプ・フィクション』は銃声が鳴り響き、人がバタバタ死んでいくギャング映画です。車の中で血しぶきが飛び散るシーンはかなりショッキングなのに、思わずクスっと笑ってしまう映画でもあります。
ギャング映画なのにシリアスでもなく、バイオレンスだけどそれほど怖くもないという、絶妙なバランスを保っているのは、タランティーノ監督の練り込まれた脚本だからこそ!
そして何より、演じる役者の巧みさではないでしょうか?この映画で復活を遂げたかつての青春スターであるジョン・トラボルタをはじめ、ハーヴェイ・カイテルやクリストファー・ウォーケン、ブルース・ウィリス、サミュエル・L・ジャクソン、ユマ・サーマン、タランティーノ作品の常連ティム・ロスなど、芸達者な俳優陣によるドタバタ劇はかなり見ごたえがあります。タランティーノ監督は役者を選ぶセンスも抜群ですね。
【解説】盗まれたアタッシュケースの中身とは?
![【解説】盗まれたアタッシュケースの中身とは?](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
映画の中で何度も登場する、ギャングのボスの元から盗まれたアタッシュケース。一体、中には何が入っていたのでしょうか?
最後までアタッシュケースの中身が明かされることはありませんが、アタッシュケースを開けたときに、中からまばゆい光が射しています。何かとても神々しいものが入っているようですね。アタッシュケースの中身を見たヴィンセントは、とてもハッピーだと語っています。
タランティーノ監督はアタッシュケースの中身について明確にしていません。ジュールス役のサミュエル・L・ジャクソンが監督に尋ねると、「お前が強く望むものだ」と答えたというエピソードが紹介されていますが、結局何なのかわかりませんね。
かなり有力な説のひとつとして、ギャングのボスである「マーセルスの魂」が入っているのではないかという考察があります。マーセルスは首の後ろに絆創膏を貼っており、そこから魂を抜いて悪魔に売り渡したというのです。なんだかオカルティックな話になってきました。
いつか何かのついでに、タランティーノ監督がアタッシュケースの中身を明かしてくれることに期待しましょう。
ハンバーガーとバニラシェイクの魅力
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映画『パルプ・フィクション』といえば、ハンバーガーとバニラシェイク。ギャングのヴィンセントとジュールスが車の中でくだらない話をしているのですが、その話の中にマクドナルドのハンバーガー「クォーターパウンダー・チーズ」が登場するのです。
今ではマクドナルドの定番メニューとしておなじみのクォーターパウンダーですが、もちろん、1994年当時の日本では販売されていませんでした。パリでの呼び名は「ロイヤル・ウィズ・チーズ」というのは本当かどうかわかりませんが、クォーターパウンダーという名前が何ともいえず美味しそうで、ものすごく憧れました。
そして、ユマ・サーマン演じるギャングのボスの妻ミラが、レストランでシェイクを注文します。当時日本のマクドナルドでもシェイクは販売されていましたが、まだそれほど一般的な飲み物ではなく、ミラが注文した5ドルのバニラシェイクすごく美味しそうなんですよね。
ちなみに、お店のメニューではバニラ味が「マーティン&ルイス」、チョコレート味が「エイモス&アンディ」となっています。「マーティン&ルイス」はディーン・マーティンとジェリー・ルイスという白人のコメディアンで「エイモス&アンディ」は黒人が主役のドラマ「エイモス・ン・アンディー」のこと。細かいところにまで、タランティーノ監督のこだわりが行き届いています。
ミアとのダンスでツイストを披露!ジョン・トラボルタが超クール
![ミアとのダンスでツイストを披露!ジョン・トラボルタが超クール](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
映画『パルプ・フィクション』の大ヒットで大きな注目を集めたのは、ギャングのヴィンセントを演じたジョン・トラボルタ。
1977年に公開された映画『サタデー・ナイト・フィーバー』で主演したのは、23歳の時でした。青春スターとして大人気になりますが、その後不遇の時代が続きます。なかなか作品に恵まれないまま、長い年月が過ぎました。
そして、映画『パルプ・フィクション』で、長い黒髪のギャングとして登場したのは、40歳になったジョン・トラボルタ。すっかり貫禄がついていましたが、チャーミングな笑顔はそのままで懐かしの映画を彷彿とさせるダンスも披露し、再びスターの地位を取り戻したのです。
少し年を取ったジョン・トラボルタは肩の力が抜け、とってもいい雰囲気でした。長髪のスーツ姿もとても似合っていて、新たなファンを獲得したのではないでしょうか。現在もコンスタントに俳優として活躍を続けています。
めちゃくちゃカッコイイ映画のサントラも大ヒット!
![めちゃくちゃカッコイイ映画のサントラも大ヒット!](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
タランティーノ監督は音楽の趣味の幅広さ、音楽のセンスの良さでも知られています。センス抜群のサントラは映画抜きにしてもかなり楽しめるので、かなりおすすめです。私ももちろん持っています。
映画で使われる音楽はほぼ自分のコレクションの中から選んでいるそうで、遥か昔の曲をリバイバルさせる名人でもあります。映画のテーマ曲にもなっている、ディック・デイル&ヒズ・デルトーンズの「ミザルー」は1962年のヒット曲です。半世紀も前の曲とは思えないほど、ベースの響きと掛け声がカッコいいんですよね。
この曲は映画に使われたことで30年ぶりに復活し、名ギタリストディック・デイルにも注目が集まりました。クール・アンド・ザ・ギャングの「ジャングル・ブギー」は、1974年のヒット曲。もともと有名な曲ではありますが、映画の中で聴くとカッコ良さ倍増して、映画の雰囲気にマッチしています。
この他にも懐かしくもクールな名曲がたくさん登場します。映画『パルプ・フィクション』のサントラ、ぜひ一度聴いてみてください。
こだわりが詰め込まれた小ネタの宝庫!
![こだわりが詰め込まれた小ネタの宝庫!](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
映画には面白いトリビアや小ネタがあります。例えば、超有名なSF映画『スターウォーズ』に登場するミレニアム・ファルコン号。ハリソン・フォード演じるハン・ソロ船長が操縦する宇宙船で、円形に一部分がとがった不思議な形をしていますが、モデルとなったのはピザ!一切れだけ食べた円形のピザを見て、この形を思いついたんだそうです。面白いですよね。
このような小ネタや裏情報、豆知識のようなものが映画『パルプ・フィクション』にもあります。あらゆるエピソードや登場人物、名前、小道具にまでタランティーノ監督のこだわりが詰め込まれているので、数え切れないほどの小ネタが隠されています。全部はとても紹介しきれないのですが、有名なところを少し紹介します…。
◎ヴィンセント・ベガ(ジョン・トラボルタ)は、タランティーノ監督の映画『レザボア・ドッグス』の登場人物、ミスター・ブロンドの弟という設定。ジミー(クエンティン・タランティーノ)も、ミスター・ホワイトと血縁関係があるという設定。
◎ヴィンセントとジュールスが取り戻しにいったアタッシュケースの暗証番号は「666」。
◎ジュールスが人を殺すときに暗唱する聖書の言葉(エゼキエル25章17節)、本来の17節は最後の一文だけで、とある映画のオープニングに流れる文言を引用している。
◎ヴィンセントが着ていたTシャツは、カリフォルニア大学サンタクルーズ校のマスコットのナメクジがデザインされたもの。当時、タランティーノ監督はこの大学の学生と付き合っていたらしい。
ハリウッドの鬼才!クエンティン・タランティーノ監督の魅力
![ハリウッドの鬼才!クエンティン・タランティーノ監督の魅力](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
映画『パルプ・フィクション』を原案、脚本、監督、自らも出演して作り上げたクエンティン・タランティーノ監督は、独学で映画を学んだそうです。レンタルビデオ店で働きながら、映画を見まくったというのは有名な話。映画オタクとしても知られ、その半端ない映画の知識が作品に活かされています。
タランティーノ監督はものすごい早口で、めちゃくちゃ喋ることでも有名です。なのでタランティーノ監督映画の登場人物たちは、みんなお喋りなんですよね。映画のストーリーとは全然関係ない、どうでもいい話をずっと話しています。この無駄話が延々と続くのが、タランティーノ作品の特徴にもなっていて、ほぼ映画には関係のない内容なのですが、結構面白かったりします。
そして、タランティーノ監督は出たがりな性格で、自分が関わる映画にはほとんど出演しています。もちろん、映画『パルプ・フィクション』にも、自宅のガレージに血まみれの車と死体を持って来られてしまうジミー役で登場。ちなみに、ジミーの奥さんは看護師ですごく怖いという、細かい設定にもこだわっています。
個人的にツボなのが、映画『キル・ビル Vol.1』でのタランティーノ監督登場シーン。死体の役として床に転がっています。
パルプ・フィクションの意味とは?肩の力を抜いて楽しめる映画
![パルプ・フィクションの意味とは?肩の力を抜いて楽しめる映画](https://filmest.jp/wp-content/plugins/lazy-load/images/1x1.trans.gif)
タイトルにもなっている「Pulp Fiction(パルプフィクション)」は、低俗な三文小説の意味です。安いペラペラな紙に印刷された、低級でくだらない小説やコミックのように、この映画も、安っぽい娯楽作品なのだという意味が込められているのでしょうか。
ギャングが登場する犯罪映画ですが、それほどシリアスではなくストーリー自体もそれほど込み入った話でもありません。エピソードや場面、セリフの一つひとつがめちゃくちゃ面白いのは、監督のこだわりが詰め込まれているからですね。
アカデミー賞やパルムドールまで受賞した名作映画ですが、難しいことは考えずに、とにかく楽しんで観れる映画です。初めて観る方も二度目、三度目という方も、ぜひ方の力を抜いて、軽い気持ちで楽しんでほしいおすすめの作品です!
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