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映画『裸足の季節』ネタバレ感想・解説・考察!美しい映像、古い価値観や男尊女卑が印象に残る芸術的な作品

映画『裸足の季節』のあらすじ・内容

『裸足の季節』は日本で2016年に公開されたフランス・ドイツ・トルコの合作映画です。内容は5人の若い姉妹たちが、厳格な家に抵抗する様子を描いたヒューマンドラマとなっています。

本作はアカデミー賞やカンヌ国際映画祭などの様々な賞でノミネートされ、高い評価を得ている作品です。ちなみに本作の監督は、監督にとって初の長編作品となっています。

そんな映画『裸足の季節』ですが、この記事では本作の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含む内容となっていますので、映画を未視聴な方はご注意下さい。

目次

映画「裸足の季節」を見て学んだこと・感じたこと

・芸術的とも言えるほどの姉妹達の映像がとにかく美しい
・根強く残る古い価値観についてとにかく考えさせられる
・自由を求める姉妹たちの行動に思わず応援したくなる

映画『裸足の季節』の作品情報

公開日2016年6月11日
監督デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
脚本デニズ・ガムゼ・エルギュヴェン
出演者ラーレ(ギュネシ・シェンソイ)
ヌル(ドア・ドゥウシル)
セルマ(トゥーバ・スングルオウル)
エジェ(エリット・イシジャン)
ソナイ(イライダ・アクドアン)

映画『裸足の季節』のあらすじ・内容

映画『裸足の季節』のあらすじ・内容(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

イスタンブールから1000km離れた村に、5人の姉妹が住んでいました。ある日、末っ子ラーレの大好きな先生がイスタンブールの学校に異動になり、その下校途中で男子生徒と騎馬戦で遊びました。

家に帰ってきた5人の姉妹は、祖母に男子生徒とふしだらな行為をしたと怒られてしまいます。5人の姉妹の家はとても厳格な家でした。そしてその日から姉妹たちは外出を禁じられ、花嫁修行をさせられることになります。

退屈な日々が繰り返される中、長女のソナイと次女のセルマに婚約の話が持ちかけられました。姉妹達にとっては不本意だが、為す術なく婚約を受け入れることに。しかし、それが5人の姉妹が全員で集まった最後の時なのでしたー。

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映画『裸足の季節』のネタバレ感想

【解説】姉妹たちの感情を表した美しい映像と季節

【解説】姉妹たちの感情を表した美しい映像と季節(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

『裸足の季節』で最も印象に残るのが、監獄のような家に閉じ込められている姉妹たちや自然の美しい映像でしょう。まるで絵画のような綺麗な映像でした。

その映像の美しさの理由は光にあります。中でも個人的に一番綺麗に映っていたと思うシーンは、姉妹たちが部屋の中で気怠そうに横たわっているところです。その時には、鉄格子から差し込んでいる太陽の光が姉妹達に注がれていて、この太陽の光が本当に美しく映っています。

監獄のような家から出られない姉妹たちが、あの太陽の暖かい光を目一杯全身に当たって外を駆け回ることは、もしかしたら姉妹達にはほとんどないかもしれないのです。太陽の光にも自由に浴びれずに、窓の隙間から少しだけ光が姉妹達に注がれている映像は、美しくも非常に儚いものとして捉えることができると思います。

 

他にも本作の映像は、凝っているところがたくさんあります。例えば、末っ子のラーレがどうにかして家から出れないかと庭を探索するシーンです。このシーンですが、映像の視点がラーレの視点になっています。

ラーレは姉妹の中では末っ子なので背が一番小さく、姉妹の中の視線ではラーレが一番家の壁が大きく見えます。ラーレが家の庭を彷徨うシーンでは、壁がどうしても大きく感じられる印象を受けました。これは末っ子のラーレにしか感じられなかったことですし、ラーレが絶対に壁の外に出たいと思うに至った強烈な動機でもあるのではないでしょうか。

他の姉妹にはこのような心理的にそびえるような壁のシーンはありません。だからラーレが庭を彷徨うシーンの映像は、本作の主人公とも言えるラーレの視線だけが映った映像とも言えるでしょう。その高く堅牢な壁はラーレにとっては、他の姉妹達よりも忌むべきものとして映ったのではないでしょうか。

上記のように『裸足の季節』では美しい映像はもちろん、姉妹たちの心情を表すような映像がとても印象に残る映画でした。美しい映像だけに留まらず、姉妹達の心情にも意識しているような映像は、芸術的で素晴らしいものだったと思います。そのような映像を姉妹達の心情を考えながら見直すと、より本作の魅力を味わえるでしょう。

【解説】根強く残るトルコの価値観、男尊女卑と生々しさ

【解説】根強く残るトルコの価値観、男尊女卑と生々しさ(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

美しい映像が印象に残る『裸足の季節』ですが、話のテーマ自体は、不快感を募らせるものです。まず誰もが感じると思いますが、本作では行き過ぎとも言えるおじの男尊女卑の価値観に、多くの方が不快感を覚えたと思えます。作中でもそのような価値観に、姉妹達が疑問と抵抗を示していました。ここではそんな価値観と生々しさについて書いていきたいと思います。

まず本作において、姉妹達が住んでいる舞台は明確には示されていません。イスタンブールから1000km離れたトルコの田舎ということだけは分かっています。トルコはイスラム教徒が多く、イスラム教徒の女性は肌を露出させてはいけないなどの厳しい戒律があることは有名ですね。作中では明確にイスラム教に関することは描かれていませんが、姉妹達の家には少なからずイスラム教の影響があるのでしょう。

 

しかし、厳しい戒律とは言っても本作の姉妹達のおじであるエロルの教育は、イスラム教の戒律よりも行き過ぎていると個人的には思いました。

ラーレが家から逃げ出そうとしてエロルが異様な執着を見せながら、ラーレを追いかけ回していたシーンでは、結婚式に呼ばれた男性から「もう行かせてやれ!」とエロルに叫ぶシーンがあります。このシーンから見るに、エロルの周りの人たちはエロルの教育方針を当たり前とは思っていなかったのではないでしょうか。もしエロルの姉妹達に対する仕打ちを当たり前だと思っていたら、「行かせてやれ」なんて言葉はでてこないと思います。

つまり、エロルの教育方針はイスラム教の戒律よりも厳しく、常軌を逸しているととれるでしょう。さらに、もしイスラム教徒の戒律を周りが知っているとしたら、学校の男子生徒があんなにも姉妹達にアプローチするのもなんだから不自然です。以上のことから、エロルの教育方針はイスラム教徒の戒律とはまた違い、異常とも言える教育方針だったのではないでしょうか。

 

しかし、エロルの教育方針は村の風習よりも一層厳しいものだったと思われますが、周囲の人々も表立って反対はしていないところから、はやり厳しい風習は残っているのでしょう。一番その価値観の生々しさを感じられたのが、姉妹達が処女であるかどうかわざわざ確認までしているところです。

新婚夫婦の夜の営みの後に、シーツに血がついてるかどうか親が確認させろというのは、現代の日本人からしてみれば明らかに異様だと受け取るでしょう。しかし、作中でエロル以外の人々も、処女検査を当然のことのように受け止めていました。姉妹達はそのことに疑問を持っていても、男性が支配している閉じられた世界観では異議を唱えても逆に姉妹達の価値観の方が異常だと思われてしまうのです。

ですが、そのような価値観に疑問を持っている人も少なからずいます。おばが姉妹達の胸中を思いやってサッカーの試合に行ったことの証拠を一生懸命にもみ消したり、姉妹達をなだめているところがありました。これらのシーンから、おばも男性の言うことが絶対とする価値観には多少は違和感を覚えていることがわかりますよね。しかし、それはあくまでそのような経験をしてきた女性のみが抱いている感情なのでしょう。男性達にはそのようなシーンはありませんでした。

本作は閉じられた田舎に根強く残る男性中心の価値観と、その価値観に基づく生々しい風習が美しい景色の裏で描かれています。不快感を感じるはずですが、そのようなえげつないシーンも本作では避けられないテーマなのです。そして本作ではイスラム教に留まらず、男性中心社会への反逆でもあるのだと思います。そしてそれは、トルコという国だけに留まる話ではないはずです。

【考察】虐待シーンや自殺シーンが明確に描かれなかった理由

【考察】虐待シーンや自殺シーンが明確に描かれなかった理由(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

『裸足の季節』は美しく芸術的な映像が魅力的で、思わず見とれてしまうかのような映像が印象的ですが、その裏では生々しい事柄が多く隠されています。

その生々しいシーンとは、三女のエジェが自殺するシーンとおじのエロルが性的虐待をしていたと思われるシーンです。エジェは作中で死んでしまったことが明らかでしたが、あまりにも突然でした。

そして、おじのエロルの性的虐待に関しては、そのようなシーンは明確に描かれていません。ここでは2つのシーンについて考察していきたいと思います。

 

本作で自殺や性的虐待のようなシーンは、この映画における闇とも言える部分。暴力と性という生々しいシーンです。『裸足の季節』はあくまで美しい映像が魅力でありますが、ある理由で暗喩として扱い、わざと生々しいシーンを映さなかったのではないかと思います。

まず先程述べましたように、エジェの自殺はあまりにも突然でしたし、血が流れたり死体の映像が直接的に流れたわけではありません。葬式をしているシーンが描かれていただけなので、エジェの身に何が起きたのかすぐには分からなかったですよね。

まず何故エジェが自殺したのかというと、エジェは結婚する前に処女ではなくなっていたことが大きな要因の1つです。エロルが車で銀行に行った時に、エロルの目が離れている間に車の中で性行為に及んでいました。ここでも直接的なシーンが描かれいてるわけではありません。

しかし、エジェが性行為に及んでしまったということは、処女ではなくなったということなので、この村の風習では致命的なことになります。もし、処女ではないことがバレたら結婚どころの話ではなく、恐らくですが折檻では済まされなかったといのは、映画を見ていれば察することができる思います。これだけでも相当生々しい事柄です。

これを映像で思いっきり映すとなると、もはや別の映画とも言えるほど違う雰囲気になってしまうと個人的には思います。綺麗な映像が台無しになってしまうから、あえて生々しいシーンはぼかしたということです。

 

そして、エロルの性的虐待シーンについてはより生々しい事柄です。暗い部屋でエロルが何か奇妙なことをやっているシーンしかありませんでしたが、まさか性的虐待まで行っていることは想像できませんでした。エロルは散々ふしだらな行為は許せないと言っていたくせに、自分は姉妹に性的虐待を行っていたのですから、紛うことなき最低な人物です。何故そのような行為に至ったのかは全く描かれていませんでしたが、やはり吐き気を催すものであることは間違いありません。

映画の中でもそうだと思いますが、上記のようなデリケートな問題は、中々表立って問題にすることができないのだと思われます。そう考えると映像に映さないのは、そのような生々しい行為が中々問題にならないことの暗喩とも考えることができるのではないでしょうか。あまりにも生々しく、グロテスクな問題でありながら問題として表にでにくい。そんなデリケートで生々しいから本作ではそういったシーンは排除したのです。

そう考えると鉄格子の影から差込む太陽の光で照らされる姉妹のシーンは、本作の光と影を映しているとも考えられます。そこま制作陣が計算していたかは不明ですが、そのような解釈もできるのではないでしょうか。

抽象的で推測が多いですが、そのように想像力を働かせられることも本作の魅力の一つだと思います。もう一度熟考して、本作を鑑賞したらより深くこの映画を味わうことができるでしょう。

【解説】唯一味方だった姉妹達の祖母について

【解説】唯一味方だった姉妹達の祖母について(C)2015 CG CINEMA – VISTAMAR Filmproduktion – UHLANDFILM- Bam Film – KINOLOGY

姉妹達を取り囲む人物にも『裸足の季節』では注目するべきだと思います。特に印象に残るのが、姉妹達の世話をしている祖母です。ここでは姉妹達の祖母について考察していきたいと思います。

姉妹達のおばは、おじのエロルに従いながらも必死で姉妹達を守り、理解を示してくれる人物です。姉妹達が序盤で姉妹達がどうしてもサッカーの試合を見たくて家を抜け出した時は、おじの目に入らぬように家中を停電させるまでしてくれましたよね。そしてエロルとは違い、そこまで激しく姉妹達を折檻するようなことはありませんでした。

 

恐らくですが、おばも姉妹達と同じような経験をしてきたのでしょう。不自由で男性に逆らえない悔しさと自由への渇望を知っていたからこそ、姉妹達の行動に理解を示し、まるで過去の自分を見ているかのような感覚だったのでしょう。ただ、それでもおばは家の風習を守ってきた人物。表立って姉妹達の行動を擁護するわけではないですが、姉妹達に理解を示しているからこそ、姉妹達を隠れながら擁護してくれたのです。

しかし、おばのことを考えると少し寂しい気持ちになったりもしました。おばはかつて自分も姉妹達と同じような境遇におかれて、姉妹達と同じように厳しい風習に対して、反発感を覚えていたのだと思います。それでも結婚した長女たちと同じように、いつかおばも諦めて、風習の通りに生きていったのでしょう。姉妹達に接する態度を見ているとそんな印象を受けました。

そういうことを考えると、おばの考えはある意味逆らっても良いことはないという諦めの境地があったと思います。実際に結婚した長女達もやけ酒を煽っていたりするところから、仕方なくこの定められた生き方を受け入れたと捉えることができるのではないでしょうか。

 

以上のことを踏まえておばの心境を考えると、とても寂しく切ない気持ちになります。長女は自分と同じように苦しみを抱えたまま望まない結婚を受け入れ、三女は耐えきれなくなって自殺。四女と五女は家出を強行。

そのような事態を目の前にして、おばの心境を考えると思わず悲しくなってしまいます。このように姉妹達以外の登場人物にも視点から見たら、また本作に対して違った印象を受けるはずです。

【解説】叔父のエロルについて

『裸足の季節』で疑問に思ったことは、おじのエロルについてです。おじのエロルは、有無を言わせないような暴君みたいな人物ですが、彼には謎が多いところがたくさんあります。

例えば、三女のエジェに対する性的虐待のことですが、何故エロルがそのような行為にエジェだけに行っていたのかが不明です。本作ではエロルという人物についてのことは何も描写されていないので、ただの暴君で非道い男であるという印象しか受けません。

なぜエロルがそのような人物になったのか。彼がどのような環境で育ったのかが何も言及されていないので、エロルという人物について考察することがほとんど不可能です。恐らく、男尊女卑が当たり前の風習で育ったのだろうということくらいしか想像できませんよね。そのような理由からエロルという人物を観客が理解するのは、ほぼ不可能なことに思います。

本編の描写でエロルのことも少し描写していれば、より物語と登場人物の関係の理解が深まるのではないかと思いました。エロルの描写がほとんど無かったことは、個人的には少し残念でしたが、芸術的な描写には一見の価値があります。

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