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『僕たちは希望という名の列車に乗った』ネタバレ感想・解説・考察!東西冷戦下の東ドイツで起きる若者達の革命と青春の物語!

【解説】登場人物達の背景を整理する

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」は、冷戦下の東ドイツで起きた実話を元に作られた映画です。

教室の中で生徒たちが行なった2分間の黙祷が国家への反逆行為と見なされてしまった生徒たちが、自分の信念や友情と将来を天秤にかけ、人生を左右する決断をするまでを描いています。

今回は映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」のネタバレ感想・解説・考察を書いていきます。

目次

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」を見て学んだ事・感じた事

・冷戦下の東ドイツで生きる人々のリアルな姿
・自分たちの信念を貫くためにもがく若者たちの力強い姿に心打たれる
・時代背景、人物などを細かく考えると深く見ることができる

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の作品情報

公開日2019年5月17日
監督ラース・クラウメ
脚本ラース・クラウメ
出演者テオ・レムケ(レオナルド・シャイヒャー)
クルト・ヴェヒター(トム・グラメンツ)
レナ(レナ・クレンケ)
パウル(イシャイア・ミヒャルスキ)
エリック・バビンスキー(ヨナス・ダスラー)

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」のあらすじ・内容

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」のあらすじ・内容

1956年、冷戦真っ只中で東西に分断した東ドイツの高校に通っていたテオとクルト。ある日、列車に乗って西ドイツの映画館にやってきた二人はハンガリーの民衆蜂起のニュースを目にします。

学校に戻った二人はハンガリーでの出来事に敬意を示し、自由な思想に共感を表すためにクラスメイト全員で2分間の黙祷を捧げました。しかし、その行為が社会主義国家でもある東ドイツに対する反逆として見なされてしまい、しまいには当局の人間が学校にやってきて調査が始まります。

首謀者を告げないとクラスを閉鎖し、進学ができないと言われた生徒たちは、自分たちの信念と輝かしいキャリアを間で、どちらを選ぶのか…。

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」のネタバレ感想

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」のネタバレ感想(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」は、東西冷戦下にあった東ドイツのとある高校で実際に起きた小さな革命を映画化したものです。

ソ連の影響下に社会主義国家として存在していた東ドイツの高校に通う高校生が、同じくソ連の体制下にあったハンガリーで起きた民衆蜂起を契機に、暴動の中で死亡した人々への哀悼を捧げるため、クラスメイトたちが教室の中で黙祷を行います。

しかし、社会主義国家の東ドイツで資本主義に共感するような行為は反逆と見なされてしまい大問題へと発展していきます。

 

この映画は、東西冷戦下の分断されたドイツの模様や冷戦下で対立する資本主義国家と社会主義国家、このような大きなスケールで描かれながらも、物語の主人公になっているのは、とある高校に通う10代の若者達です。

若者達は高校に通えるステータスを持っており、このまま無事に卒業すれば、輝かしい将来が待っているのですが、自分たちの信念を形として表してしまったために、それがフイになってしまう状況に陥ってしまいます。

そんな冷戦下のドイツで起きた理不尽な出来事と、それでも自分たちの信念を貫こうと抗う人々を描いています。なので、当時の国家間の争いや、そこで生きる人々などへ意識を向けることによって、この映画はより深く楽しむことができるでしょう。

ここでは、映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の感想を1つ1つの項目に分けて書いていきます。

【解説】映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の舞台となっている東ドイツの時代背景をおさらい

【解説】映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の舞台となっている東ドイツの時代背景をおさらい(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の舞台となっているのは1956年の東ドイツです。この映画の時代背景を知るためにも当時の情勢を軽く解説していきます。

第二次世界大戦が集結し、世界の勢力図が大きく塗り替えられる中で、資本主義国家と社会主義国家の争い、いわゆる「冷戦」が始まりました。資本主義国家のアメリカと社会主義国家のソ連が激しく対立し、世界各国で両者の影響を強く受けていきます。

ドイツに関しても、第二次世界大戦での敗戦によりナチスドイツが崩壊、戦勝国による分割統治が開始されます。その中で、ソ連側の影響を強く受けていたのが「東ドイツ」、アメリカ側の影響を受けていたのが「西ドイツ」でした。

そして、冷戦による両国の対立によって、ドイツ国内でも東西での分断が強まっていき、東西の通行も困難になっていく状態にありました。

 

そんな中で建設されたのが「ベルリンの壁」です。これは西ドイツへの人口流出が続いていたことで深刻な影響を受けていた東ドイツが1961年に建設したもので、東西の通行が完全に遮断されてしまいます。

これによりベルリンの壁が東西冷戦の象徴的存在となり、1989年の壁崩壊に到るまで東西ドイツが分断された状態が続きます。映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」の舞台となっているのは1956年の東ドイツなので、ベルリンの壁はまだ建設されていません。

東西の分断は強まっているのですが、東西の移動はまだ可能となっていました。映画の序盤では、テオとクルトが列車に乗って、東ドイツから西ドイツへと渡り、西側の映画館にいくというシーンがありました。

しかし、移動はできても、境界線付近の駅では身分証明書を提示し、移動の目的を言わなければならないといった状態でもありました。このような内容がこの映画の時代背景となります。

【解説】自由な西側に対して、不自由な東側

【解説】自由な西側に対して、不自由な東側(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

この映画の中で度々描かれるのが、自由な西側に対して不自由な東側という構図です。

西ドイツでは映画が自由に見れるという状況で、東ドイツに住んでいたテオたちは、西側に行かなければ、それらを見ることはできません。当然ながら、東ドイツでアメリカの映画を見ることはできません。

 

また、報道についても同様のことがいえます。東ドイツでは情報統制が敷かれており、正しい事実を手に入れることは困難です。報道に関しても政府のプロパガンダに使われるだけでもありました。

映画ではパウルの大伯父の家にクラスメイトが集まり、西側のラジオ放送を聴かせるというシーンもありました。世界がどのようになっているのかを知るには、隠れて西側の放送を聴かなければならないという状況があり、そういった行為すら政府から反逆行為として見なされてしまうので、非常にリスキーな行いでもあります。

東ドイツでは社会主義国家に対して反意を示すような行為は全て反逆として見なされるだけではなく、西側の資本主義国家に共感するような行為すら許されていませんでした。そのため、ソ連の支配下にあったハンガリーで生じた民衆蜂起に対して、クラスが黙祷を捧げたという行為は東ドイツないで反逆と見なされてしまうのです。

 

この映画では、そのような不自由な体制下に生まれたものの、自由な思想への憧れや共感を持っていた若者達が、巨大な権力に対してどのように抗うのかというのが中心になっています。

現代に生きる私たちからみれば考えもつかないような状況ではありますが、歴史上こういった時代があったことは知っておくべき事実でもあります。

【解説】登場人物達の背景を整理する

【解説】登場人物達の背景を整理する(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

時代背景などを理解しながら映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」を見ると、より登場人物達の内面を汲み取ることができるでしょう。

ここでは、さらに登場人物一人一人の背景を整理していきながら、どういった状況に陥っていたのかを把握していきます。

テオ・レムケ

まず、主人公のテオからいきましょう。テオはクラスの中心的存在で、西側の映画館に行って映画を見たり西側の報道を聴くなど、自由思想への共感を持っており、社会主義体制への反感を抱いています。

しかし、彼は同時に労働者階級出身の子供でもありました。父親のヘルマンは製鉄所で働く労働者でもあり、日々過酷な労働に従事しながら家族を支えています。

 

そんな中、テオは一族で唯一のエリート高校に進学した人でもあり、テオはこのままスムーズに高校を卒業すればエリートとしての道がひらけていましたが、黙祷の件が問題化した際に、首謀者の通告or退学という選択を迫られてしまいます。

テオ自身は一族の期待を背負ってエリート高校を卒業して、家族を支えるという使命を持っています。しかし、自分の信念を簡単に曲げることはできません。信念を曲げなければ高校を卒業することはできず、父親のような労働者の道しか待っていません。

自分自身の保身や家族の期待などもあり、信念が揺らいでしまう描写もあったのですが、それは仕方のないことといえるでしょう。思い切った決断をするために充分な地盤が彼にはありません。

クルト・ヴェヒター

一方、テオの親友でクラスメイトに黙祷を提案したクルトは労働者階級ではなく、エリート階級の生まれです。父親は市議会議員?のようないわゆるエリートの職業に従事しています。

クルト自身はエリートの生まれで、エリート高校に通いエリートの道を進むという典型的な人物でもありました。しかし、クルト自身は社会主義体制への疑問を持ち、資本主義への好感を抱いていました。

当然ながら、東ドイツでエリート職業についている父親とは激しく対立します。息子が国家に対して反逆的な思想を持っているというだけでも自分自身への影響は計り知れないでしょう。

もちろん将来エリートの道へと進む息子を心配していた部分もありますが、クルトはそれに反して自由主義的な思想に共感してしまいます。

 

そして、黙祷の首謀者でもあるクルトですが、テオとは明確に異なった立場であることも描かれています。

それは、黙祷の説明を教師から求められた際、「ハンガリー民衆蜂起への黙祷」だと確実に反逆と見なされてしまうため、「ハンガリー民衆蜂起でサッカー選手のプスカシュが死亡したという情報を聞いたために黙祷をした」という言い訳で誤魔化そうとしていました。

当然ながら、自分たちの信念を偽って言い訳をする形になるのですが、これに対してクルトとテオは異なる立場を示します。

 

まず、テオは言い訳をして穏便に済ませようとする立場でした。一方、クルトは言い訳には反対しており、自分たちの考えを表明したいと思っていました。

この考え方の相違は、もしかしたらテオとクルトの家系が影響しているかもしれません。

労働者階級出身でエリート街道を進むことが求められ、自分を守る地盤を持たないテオと、エリートの家系で裕福な生活を送っているであろうクルト。ここ一番の際に保身に走るか、リスクをとって意地を貫くかはこれが影響していたと私は思います。

最終的にはクラスメイトによる多数決で言い訳をすることにしたのですが、この辺は民主主義的な思想を持ったクラスであることをよく表しています。

エリック・バビンスキー

エリックはテオたちのクラスメイトで黙祷に参加したメンバーの一人です。しかし、彼自身は共産主義の英雄であった亡き父を敬愛しており、社会主義体制への従順な姿勢を見せています。

そのため、当初黙祷に対しては反対の姿勢をとっていました。クラスメイトでパウルの大伯父の家で西側の放送を聴く集会にもエリックだけでは参加していませんでしたし、どちらかといえば、彼らとは距離を感じる人物でもありました。

それが原因で当局の操作のターゲットになってしまいます。首謀者を探る当局はエリックに対して執拗な取調べを続けます。

 

そして、クラスにエリックが首謀者を漏らしたと嘘の情報を流して、クラスが分断されそうにもなりました。ただ、これだけでクラスが崩壊したわけではありませんでした。

取調べの最中、当局が提示した情報がエリックを混乱に貶めます。共産主義の英雄だと思っていた亡き父親が実はナチスの一員に寝返っており、処刑されたという事実です。共産主義者として父親を盲信していたエリックだったのですが、その父親がナチだった事実が判明してしまい深い悲しみに包まれます。

それだけではなく、この事実を新聞に掲載すると当局に脅されてしまい、ついには首謀者の名前を口にしてしまいます。その後、パニック状態になり、射撃の教官を銃で撃ってしまい捕まってしまうのですが、エリックという人物がクラスメイトたちとは少し違った考え方を持っており、それがこの映画のキーになっていきます。

【解説】そして希望という名の列車に乗る若者たち

【解説】そして希望という名の列車に乗る若者たち(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

最終的には、首謀者がクルトであることは当局に知られてしまいます。それによって、クルトは事実が明るみに出る前に西ドイツに行くことを決断します。生徒たちは最終期限となっていた日の教室で首謀者を明かすことを求められます。

しかし、生徒たちは首謀者の名を口にすることはなく、一様に自分が首謀者であると嘘をつきます。その結果、彼らは退学になってしまいます。

その後、生徒たちは西ドイツに渡り高校の卒業試験を受けるのですが、タイトルにあるように「希望という名の列車に乗った」わけですね。

 

ただ、考えなければならないのが、彼らのその後です。テオは西ドイツに渡る前、家族に別れを告げるようなシーンもありました。その際には両親が涙を堪えるといったシーンも見られます。

この映画の舞台となっているのは1956年の東ドイツ、そして、東西を完全に分断するベルリンの壁が建設されるのが5年後の1961年です。もしかすれば、これが最後の別れになってしまう可能性だってあるわけです。だからこそ、西ドイツへ渡ろうとするテオに対して、両親は悲しみの顔を浮かべていました。

この映画の後の歴史を考えると、生徒たちの未来はさらに過酷なものになっていったと想像ができます。それでも自由を求めて、希望という名の列車に乗った彼らの力強い姿が心に残ります。

ドイツの東西分断というスケールの大きな歴史的事実の中に生きる人々の苦悩や、それでも折れない信念が描かれており、社会性の強い映画ではありますが、ドラマチックな人間模様も同時に現れている魅力がありました。

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」は冷戦下で人生をかけた決断をする若者たちのドラマ

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」は冷戦下で人生をかけた決断をする若者たちのドラマ(C)Studiocanal GmbH Julia Terjung

映画「僕たちは希望という名の列車に乗った」は時代背景や国家間の対立などを理解しながらこの映画を見ていくと、より深く生徒たちの葛藤や悩みに感情移入することができるでしょう。

冷戦下の東ドイツを題材にした映画はたくさんあるとは思いますが、この映画はそういった時代の中で、自分たちの信念を貫くために悩みもがく若者たちの青春を描いた心揺さぶられる映画です。

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