『search/サーチ』は2018年に公開されたサスペンススリラー映画です。ほぼ全編がパソコンの画面上のみで展開されることが話題となり、SNSなどで広まりました。
本作は行方不明になった娘をパソコン上でありとあらゆるSNSを駆使し、父親が娘を探していく物語です。この映画はSNSを中心にした非常に現代的でタイムリーな映画であり、現代でしか感じられない面白さを秘めています。
そんな映画『search/サーチ』の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含んだ内容となりますので、本作を未視聴の方はご注意ください。
目次
映画「search/サーチ」を見て学んだこと・感じたこと
・ほとんどがパソコンの画面のみの映像という斬新な映画
・父親と娘の絆、家族愛のシナリオに感動
・見事な伏線回収と情報量でエンタメ作品として完成度が高い
映画『search/サーチ』の作品情報
公開日 | 2018年10月26日 |
監督 | アニーシュ・チャガンティ |
脚本 | アニーシュ・チャガンティ |
出演者 | デビッド・キム(ジョン・チョー/浪川大輔) ローズマリー・ヴィック刑事(デブラ・メッシング/岡田恵) マーゴット・キム (ミシェル・ラー/内山茉莉) ピーター・キム(ジョセフ・リー/寸石和弘) |
映画『search/サーチ』のあらすじ・内容
デビッド・キムは愛する妻のパメラを失い、16歳となる娘マーゴットと平穏に暮らしていましたが、ある日マーゴットは友達の家で宿題をしてくるというメッセージを最後に忽然と姿をくらまし、連絡が途絶えてしまいます。
マーゴットと一切連絡が取れなくなったデビッドは、警察の捜索も待ちきれないでいました。そして、デビッドは独自に娘のパソコンやSNSを使って調査を始めます。
しかし、デビッドが見たのは普段のマーゴットとは考えられないような、娘の知られざる一面でした。驚きを隠せないデビッド、果たしてデビッドは娘の手がかりになるものを、広大なSNSの海から見つけることはできるのでしょうか…。
映画『search/サーチ』のネタバレ感想
【解説】全編パソコン上の画面という斬新なアイデアと工夫が面白い
『search/サーチ』はほぼ全編にわたってパソコン上の画面で物語が展開されるという、これまでにない演出が施された映画です。本作を鑑賞する前は、この設定で映画になるのだろうか?と不安に思っていましたが、予想を良い意味で裏切られ、SNS時代である現代社会をよく反映させたサスペンススリラー映画に仕上がっていました。
何と言っても、パソコンの画面上という特性を活かした演出や伏線がとても良く練られています。例えば、現実のSNSでよく見かけるなりすましや炎上など、インターネットならではの問題が映画に描かれていました。広大なSNSの情報から小さな伏線が散りばめられているところは、驚きの一言です。
鑑賞する前は、主人公であるデビッド周りの状況をどのようにパソコン上で演出していくのかと疑問でした。しかし、ニュースはパソコン上でYouTubeを使って見たり、警察との連絡はFacetimeを使ったりして、本当にパソコン一台の画面の中で物語が違和感なく進んでいきます。そのようなパソコンの画面のみという制限の中で、様々な工夫を凝らし、しっかりとしたエンターテイメントのサスペンススリラーとなっているのは、見事という他ありません。
本作『search/サーチ』のように、1つの画面や主人公の主観の目線で画面が展開していく映画はPOV(Point of View Shot)と呼ばれ、日本では「視点(主観)ショット」などと呼ばれます。POVの撮影手法を採用している映画は、ホラー映画の『REC』や『クローバーフィールド』『ハードコア』などがあります。
しかし、このPOVの映画は臨場感がある代わりに、あまりにも画面のブレが酷いことから賛否両論であることが多いです。POVは主人公の主観で映画が進んでいくため、上下の揺れがとても激しいことが少なくありません。
パニック映画などでPOVなどを採用していると、本当に凄まじいほど画面が揺れます。その揺れからか画面酔いをする人も少なくなく、画面の揺れで気が散ってしまうという意見も多いです。そのような理由から、POVはどうしても意見が割れてしまうことが少なからずあります。
本作の『search/サーチ』は、そのようなPOVの形式を採用しているのにもかかわらず、画面揺れによるストレスを感じさせない作りとなっています。また、サスペンス映画としてのテンポも良く、映画に飽きにくいように作られているので、非常に鑑賞しやすい映画です。本作は全体的に観客に配慮した作りになっていると思います。
そのような理由からも『search/サーチ』は本当に斬新なアイデアと工夫が施された映画であると言えます。
【解説】パソコンの画面に描かれる伏線や演出の工夫に驚くばかり
映画『search/サーチ』はパソコンの画面だけで展開されていますが、この斬新な撮り方や伏線、演出の工夫の洗練具合には感嘆するものがあります。
たくさんのアプリを起動させて画面が埋まっていく様子は、まさに日常でネットに浸かりきった人のデスクトップ画面です。その乱雑したデスクトップ上で、FacebookやTwitterなどの現代の日常的なSNSが多数登場します。
本作は、マーゴットの父親でデビッドが、パソコン上からマーゴットのSNSのアカウントを見て、犯人の手がかりを探していくというものです。その時の情報量や細かな演出が本当によく考えられていて、思わず2回鑑賞したくなるくらい作り込まれています。
例えば、検索窓にキーワードを打ち込むシーンです。このような何気ないシーンでも、デビッドの感情を表現するちょっとした工夫が施されています。デビッドが検索窓やメールにキーワードを打ち込む時、途端に手が止まったり、文章を消してしまうところがありました。これは、デビッドの複雑な心境をよく表していて、マーゴットに対する疑問や不安などの感情を観客は勘ぐることができます。
他にもデビッドの妻であるパムが死んでしまった時、パソコン上の家族の思い出の写真を削除していくシーンはとても悲しかったですよね。このようなシーンでも、演出の工夫でデビッドの心情がパソコン越しでも十分に伝わってきます。
このような演出はかつてなく、SNS時代だからこそ映える方法です。今まさにSNS時代である現代だからこそ、実現できた斬新な演出だったと思います。
【考察】よく考えたら怖い。普段使っているSNSの脆さ
『search/サーチ』は娘のSNSを使って犯人の手がかりを探っていく映画ですが、SNSの怖い部分が描かれています。
父親のマーゴットは、娘のマーゴットのTwitterやFacebookのアカウントを勝手に使用して、手がかりを探していくのですが、これが驚くほど簡単にマーゴットのアカウントを乗っとり、娘のプライベートを洗い出してくのです。いくら身内とはいえ、自分のSNSをくまなく見られるのは非常に不快なことですよね。
加えて、娘のアカウントにはパスワードがかけられているものの、新しいパスワードを発行して難なく娘のアカウントを利用できることは、現実で考えると思わず背筋が凍るような思いを覚えます。あんなにも簡単に個人情報が集まった他人のSNSを見られるのです。映画的にはテンポが良くて退屈せずに済むのですが、現実的に考えると非常に怖いことだと思います。そしてののSNSを普段何気なく使用しているものだからこそ、より恐怖を感じるのです。
警察ならまだしも、父親とはいえ娘のSNSのアカウントをここまで簡単に自由に覗いたり操ったりできることは、よく考えると不気味ですよね。パソコン1台で他人のプライベートをあそこまで正確に垣間見ることができ、人間関係を洗い出せるのはある意味で異常です。しかも、それを皆が平然と使っているのも不気味さを感じます。
このような点は、SNS時代の脆弱さや情報社会の危険性を象徴しています。エンターテイメント映画なのでそこまで意識はしないところですが、よく考えてみるとSNSやネットに関して、少し恐怖を感じるシーンは少なくなかったはずです。
他にも、SNS時代の現代に起こっている現象も描かれています。暴行の動画をネットに晒されSNS上で炎上してしまったり、他人のアカウントのなりすましなど、悪質ないたずらによる恐怖が本作には含まれています。SNSだからこそ可視化される悪質な行為や悪意に少なからず不快感を覚えることが、映画を鑑賞する上でいくつかあったはずです。そして、このようなことは現実でも日常的に起きています。
実際に娘のマーゴットが誘拐された理由も、SNSを通じてのものでした。SNSから犯罪に巻き込まれるケースは現実でも見かけるので、そう考えると『search/サーチ』はただのフィクション作品には感じられません。非常に現実的で、身近で起こり得る社会的な問題なのです。
このようなところから、本作『search/サーチ』はSNS時代に通じる恐怖が描かれた映画でした。そしてその怖さは、現実でも同じようにあるのです。そう考えると『search/サーチ』は現代のSNSの問題を反映させた、現代社会への問題提起も含んだ映画でもあります。
【考察】主人公側と犯人側、双方の親が抱える問題
『search/サーチ』では本編の人間関係にも重要なメッセージが込められていました。そのメッセージとは、子供を守る親の執念と親と子の関係についてです。
主人公側と犯人側の人間関係をよく比べると、ある共通点があることに気が付きます。両者の共通点は両者とも親と子の関係であり、どちらも必死に自分の子供を守ろうとしているというところです。
主人公でマーゴットの父親であるデビッドはマーゴットが行方不明になり、ネットを駆使して自力で娘を探していました。時には家族でも暴力を振るうほど、娘を救うために奔走しています。映画を見ていると、嫌でもデビッドから子供を守りたいという強い気持ちが伝わってきますよね。
実は犯人側も子供を守りたいという気持ちは、デビッドと同じです。犯人は息子が犯した過ちを必死に隠蔽するために、ありとあらゆる手段を使って事件の鎮圧を図りました。善悪は置いておいて、犯人側も親が子供を守りたいという気持ちから行動した結果なのです。つまり、お互いのとった行動は全く反対でありましたが、子供を守りたいという動機は犯人もデビットもほぼ同じでした。
この主人公側と犯人側は実に対照的に描かれていて、実に分かりやすい構図でした。『search/サーチ』は、家族愛の話でもあったのです。
他にも親と子供の関係にも注目するべきです。デビッドとマーゴットは母親の死によって、昔のようにお互いに腹を割って話せるような関係ではなくなってしまいました。表面上は仲の良い親子のようにみえますが、マーゴットのSNSを見ていく内に、マーゴットはずっと心にまだかまりを抱えたままであったことは明らかです。これは、いくらネットでいつでも繋がっているとはいえ、親子なのに心は通じ合っていなかったという皮肉にも感じます。
犯人側の親子の関係性はそこまで詳細には本編で語られていないので不明ですが、個人的には親子関係がうまくいっているとは思いません。子供が犯罪を犯したのにもかかわらずに、子供が全く登場せず、親も庇うだけというのはいささか引っかかるところがあるからです。
本作の親と子の関係には壁があり、事件を通じてその壁が取り払われたという話でもあったと思います。母親の死により、心を通じ合わせることが難しくなってしまった二人が、最後に笑顔で写真に写っているところは、物語の結末として相応しいですよね。そう考えると、『search/サーチ』は斬新なアイデアだけでなく、脚本も含めて面白い映画でした。
【考察】『search/サーチ』の結末が伝えるネット社会へのメッセージ
『search/サーチ』の結末は、デスクトップ上にデビッドとマーゴッドが幸せそうに笑ってる画像でエンドロールを迎えました。
冒頭の妻の写真を削除していった時の画面とは正反対の画像で締めくくられ、ラストまでパソコン画面上で結末を迎えました。多くの人が納得のいく終わり方だったのではないでしょうか。
しかし、この結末にはある種、SNSで誰とでも24時間繋がった現代社会に対してメッセージが込められているのではないかと思います。簡単に通話やチャットを行える時代、ネットだけで完結してしまう人間関係。そのようなSNS時代でも、現実での人との付き合い方やコミュニケーションは重要であるというメッセージです。
デビッドとキムは母のパムが死んでしまったことにより、お互い腹を割って話すことができなくなりました。そのことが原因でマーゴットは今回の事件に巻き込まれ、SNS上での秘密事をたくさん抱えてしまいます。
事件解決後、満身創痍となったマーゴットと必死にマーゴットを探したデビッドは、お互いの話をたくさんしたはずです。デビッドはマーゴットのSNSで何を抱えているのかを知ってしまったので、もう2人に隠し事はできません。だがら事件後、デビッドとマーゴットはこれまでのことや今回のこと、パムのことについてマーゴットと向き合って話をしたはずです。
直接映像でこのような会話が映されたわけではないですが、それは恐らくパソコンの画面上の外の会話だったでしょう。映像で描かれなかった会話は、腰を据えて顔と顔を向き合わせた現実の会話です。そのような現実の会話を経ることによって、デビッドとマーゴットはようやく元の仲が良く信頼し合える親子の関係に戻れました。
本作ではパソコン上の画面のみで展開される斬新な映画ですが、本作の結末は「本当に大事なことはネットの外側にある」というメッセージなのかもしれません。なので、デビッドとマーゴットの最後の会話はパソコン上には描かれなかったのです。そう考えると、本作の結末は非常に粋な終わり方だと思います。
これらのことを考えると『search/サーチ』の結末は、他者と信頼を築くためには、ネット内だけでののコミュニケーションでは不十分で、現実でのコミュニケーションが大事だというメッセージでもあると考えられます。そして、本作の結末は演出的にも脚本的にも素晴らしい結末を迎え、評価が高いのも頷けます。
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