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映画『パディントン』ネタバレ感想・解説・考察!紳士な熊のパディントンがとにかく可愛い!

映画『パディントン』のあらすじ・内容

映画『パディントン』はペルーからやってきた熊のパディントンが、ロンドンで生活するブラウン一家と出会い、自分の家を見つける物語です。

本物の熊でありながら人語を理解し、まるで英国紳士のように振る舞うパディントン。彼の行動はとてもまじめであるがために非常にほほえましく、そして時に捧腹絶倒の笑いをもたらします。目まぐるしく切り替わる物語は、最初から最後までジェットコースターのように楽しむことができるはずです。

今回はそんな映画『パディントン』の感想や解説、そして一部考察を紹介します。なお、本作はネタバレを見ても楽しめる作品になっていますが、鑑賞前に読む場合は一応ご注意ください。

目次

映画『パディントン』を観て学んだこと・感じたこと

・パディントンにひたすら悶えていれば幸せになれる
・予定調和な展開に潜む秀逸なパロディ
・いつでも、だれとでも楽しめるコメディ作品

映画『パディントン』の作品情報

公開日2016年1月15日
監督ポール・キング
脚本ポール・キング
出演者パディントン(ベン・ウィショー)
ヘンリー・ブラウン(ヒュー・ボネヴィル)
メアリー・ブラウン(サリー・ホーキンス)
ジュディ・ブラウン(マデリン・ハリス)
ジョナサン・ブラウン(サミュエル・ジョスリン)
ミリセント・クライド(ニコール・キッドマン)

映画『パディントン』のあらすじ・内容

映画『パディントン』のあらすじ・内容

ペルーを探検していたイギリス人の探検家が、森の奥深くで知性を持った二匹の熊に出会いました。熊の名前はパストゥーゾとルーシー。言葉を理解し、道具を扱うパストゥーゾ達は、いつか探検家を訪ねてロンドンへ行くことを約束します。

それから40年後、パストゥーゾとルーシーは甥の小熊と3匹で暮らしていました。ある日、森を大地震が襲い、不幸にもパストゥーゾは亡くなってしまいます。甥の小熊はパストゥーゾが果たせなかった約束をたよりに、イギリスへ向かうことを決めました。

小熊を待っていたのは、想像とは異なるせわしないロンドンの街でした。行くあてもなく途方にくれる小熊に、一組の家族が声をかけます。彼らからパディントンという名前を与えられた小熊は、家族のもとでしばらくホームステイすることとなるのでした。

映画『パディントン』のネタバレ感想

【解説】紳士なくまパディントンはとにかく可愛い

【解説】紳士なくまパディントンはとにかく可愛い© 2015 – StudioCanal

2014年にイギリスで公開され、全世界でヒットした映画『パディントン』。本作はイギリスの作家マイケル・ボンドによる児童文学『くまのパディントン』が原作となっています。現実の世界で動き回るパディントンの姿はとてもかわいらしい一方で、非常にリアルな質感を持っているのが特徴です。そのモフモフなリアル感は、同じくイギリスを舞台にした『ピーターラビット』や『プーと大人になった僕』と比較しても遜色のない出来だといえるでしょう。

物語はペルーを探検するひとりのイギリス人探検家が、人語を理解し道具を操る熊のパストゥーゾとルーシーに遭遇するところから始まります。主人公のパディントンはパストゥーゾ達の甥にあたり、人間に例えると子どもよりも少し大きく、まだ大人になりきれていない様子です。パディントンはパストゥーゾ達の悲願でもあった探検家との再会と、新しい家を探すことを目的としてロンドンへやってきます。

パディントンは、青いダッフルコートに赤い帽子がトレードマークの熊です。人間社会に熊がやってくるという破天荒な設定は、児童文学という下地もあって深く突っ込まれるわけではありません。なぜ熊が人間のように動き喋るのかということに対して、作中でもある程度の驚きや疑問が生じるものの、基本的にはそんなのものかとだれもが素直に受け入れてしまいます。

人間と熊という、種族の違いは明らかなカルチャーショックを呼び起こすことに。浴室の使い方がわからずに部屋を水浸しにしてしまったり、歯ブラシを使って耳掃除をしたりする様子は、人間同士のカルチャーショックよりも強烈な笑いを誘います。

 

しかし、パディントンは単なるコメディタッチなキャラクターではありません。彼はパストゥーゾやルーシーを通じてちょっと怪しげな挨拶や振る舞いを身に付けているものの、その様子は英国紳士よりも紳士的です。挨拶のマナーに気を遣い、失礼な振る舞いには毅然とした態度を取るなど、熊でありながら人間以上に人間らしい姿を持っています。

けれども、そんなパディントンは人間ではなく熊なのです。最先端の3Dアニメーションと撮影技術を駆使して現実に降り立ったパディントンのリアルさは、彼が熊そのものであることを隠しきれません。好物のマーマレードに目がなく、熊でありながらカルチャーショックを巻き起こし、けれども紳士のように振る舞うパディントンの姿は、いくつもの意味でギャップ萌えをもたらすのです。

【解説】パディントンを迎え入れる家族の温かさ

【解説】パディントンを迎え入れる家族の温かさ© 2015 – StudioCanal

行くあてもなくロンドンをさまよっていたパディントンを迎え入れてくれたのが、ブラウン一家です。駅で途方にくれるパディントンを見つけた妻のメアリーが、彼を一時的に自宅で引き取るところから、物語は徐々に広がりを見せ始めます。なお、パディントンという名前は彼の本名ではなく、メアリーが駅名にちなんで着けたものです。本当の名前は人間の言葉では表現することができず、ここでも異種間交流のネタが顔をのぞかせます。

ブラウン一家は夫のヘンリー、妻のメアリー、長女のジュディ、長男のジョナサン、そして親戚で家政婦のバード夫人を含めた5人家族。ヘンリーはリスク管理の仕事をしている一家の大黒柱で、見ず知らずのパディントンが家に居座ることを煙たがっています。また、長女のジュディは「キモい」が口癖の女の子で、何かとトラブルを起こしてしまうパディントンのことを快く思っていません。一方、長男のジョナサンは元気いっぱいで好奇心旺盛な性格をしており、パディントンともすぐに打ち解けます。

パディントンの紳士的な行動は良い結果を次々ともたらすので、ヘンリーもジュディもだんだんその態度を軟化させていきます。いつしか、パディントンは熊でありながら、少しずつブラウン一家のなかへ居場所を見つけていくことに。物語の展開としてはありがちですが、ヘンリーもジュディも心の底からパディントンに忌避感があったわけではなく、ただきっかけが無かっただけなのだということがわかります。

 

そんなパディントンが家族にとって欠かせない存在となっていくのを、何よりも最初に気がついたのがバード夫人です。酒と掃除が何よりも好きで、家族から一歩離れた視点でパディントンのことを見ている様子が印象的なバード夫人。住み込みで働く親戚の家政婦ですが、古くからヘンリーやメアリーのことを知っており、パディントンと家族の関係を冷静に見抜くなど、妙に存在感のあるキャラクターです。

そして、挿絵画家として活躍する妻のメアリーは、少し天然な部分があるものの、感情豊かでとても優しいのが特徴です。何のためらいもなくパディントンに声をかける様子は、人間と熊の異種間コミュニケーションとは如何に?という難しいことを少しでも考えるのが馬鹿らしくなってしまいます。メアリーがいなかったら、パディントンの物語は始まることなく終わりを迎えていたことでしょう。

パディントンに対する最初の理解者として、メアリーの存在は非常に大きいといえます。物語の後半、とある事件がきっかけでパディントンが家を出て行くこととなった時でも、メアリーだけは彼の身を最後まで案じていました。多少盲目的であり、ともすれば博愛主義と誤解されそうな様子も見られますが、彼女の優しさがなければ、人間社会でパディントンは孤立したままだったでしょう。家族全員とパディントンとの絆が感じられる本作において、メアリーの愛情の深さはひときわ印象強く残ります。

【解説】異質な存在感を発揮するニコール・キッドマンに注目

【解説】異質な存在感を発揮するニコール・キッドマンに注目© 2015 – StudioCanal

映画『パディントン』には、ブラウン一家のほかにも、本作を語るうえで欠かすことができない重要なキャラクターが登場します。それは、剥製師のミリセント。表向きは動物愛護に賛同する博物館の職員を装いながら、裏では珍しい動物を剥製にすることを生きがいとしている女性です。

ミリセントは、原作には登場しない映画オリジナルのキャラクターです。しかし、彼女はパディントンと浅からぬ因縁を持っており、人間のように振る舞うパディントンを剥製にしようとあの手この手で襲ってきます。まさに、本作における強大な悪役です。

 

ミリセントを演じているのはあの大女優、ニコール・キッドマン。本作公開時には47歳ですが、綺麗に切りそろえられたショートカット、すらっと伸びた四肢によるキレのある演技は、年齢を感じさせない色気にあふれています。また、パディントンの原作の大ファンでもあり、ミリセントの造形や脚本について自身のアイデアを展開するなど、映画への思い入れは人一倍強かった様子です。

そんな彼女が演じるミリセントの魅力は、やはりその動きにあります。単純な立ち振る舞いだけでも絵になるのはもちろんのこと、その美貌で繰り広げるスパイ映画さながらのアクションは流石のひと言。逃げるパディントンを追いかけるシーンでは、本職が剥製師であることを微塵も感じさせない動きで麻酔銃を撃ちまくります。

 

そして、最大の見せ場は何といってもブラウン一家の住宅への侵入シーンでしょう。ワイヤーで逆さ吊りのまま天井から侵入する様子は、もちろんスパイ映画の名作『ミッション・インポッシブル』のシーンそのままです。同作はニコール・キッドマンの元夫であるトム・クルーズの代表作でもあり、彼女がこのパロディをよく承諾したと思わずにはいられません。

ミリセントの存在は、児童文学をもとにした映画『パディントン』において明らかに異質なものです。その意味では、やはり多少の場違い感は否めません。しかし、パディントンを救おうとするブラウン一家とミリセントとの対決は多くのネタにあふれており、原作には無かったコメディやアクションの要素を映画に付与しています。

また、『ピーターラビット』のように過剰な殺し合いを繰り広げるわけでもないため、児童文学においてアクションが必要以上に強調されるといったこともありません。ミリセントは本作において異質な存在でありながら、児童文学とコメディとアクションのバランスを綺麗に保つ役目を持っているのです。

【解説】息もつかせぬ展開に織り込まれたパロディや小ネタの数々

【解説】息もつかせぬ展開に織り込まれたパロディや小ネタの数々© 2015 – StudioCanal

児童文学を原作に持つ映画『パディントン』の物語は、とてもわかりやすくできています。それだけに、物語の展開を読みやすいといえるでしょう。しかし、とにかく観客を笑わせようとするさまざまな小ネタが用意されているので、見ていて一向に飽きることはありません。

先に挙げた『ミッション・インポッシブル』以外にも、本作にはさまざまなパロディが詰め込まれています。たとえば、スケボーに乗ったパディントンが財布を盗んだ泥棒を追いかけるシーンは、往年の名作『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を思い出さずにはいられません。さらに、スケボーから投げ出されたパディントンが傘を持って浮遊するシーンは、もちろん『メリー・ポピンズ』を意識したものであることがわかります。

 

また、物語の中盤、かつてペルーを訪れた探検家の足跡を探すために地理学者協会へ行くシーンでは、ヘンリーとパディントンが変装して協会に忍び込むことになります。わりと重量級の体格であるヘンリーが清掃のおばさんに変装するシーンはもちろんのこと、彼を呼び止めようとする職員がヘンリーに色目を使う場面は笑いをこらえきれないでしょう。

『パディントン』はバランス良くコメディのネタを詰め込んでいるため、原作を知らなくても十分に楽しめる内容となっています。熊のかわいらしさに癒やされながら、楽しく見ることができる映画として、本作はすべての人におすすめできる作品です。

なお、本作には原作者であるマイケル・ボンドが紳士役でカメオ出演しているので、これを探してみるのも面白いでしょう。惜しくも彼は2017年に亡くなりました。亡くなる数年前に原作者として実写映画に出演したというのは、偶然とはいえちょっとした運命を感じずにはいられません。

【考察】実は移民問題を絡めた作品?

【考察】実は移民問題を絡めた作品?© 2015 – StudioCanal

ところで、映画『パディントン』では、物語とは関係のない老人達のバンドが登場して突然歌い出すシーンが散見されます。ミュージカルのような面白い演出であるのはもちろんですが、彼らの歌を調べてみると、本作にはコメディとは異なる一面が隠れていることに気がつくでしょう。

老人達のバンドが演奏している楽曲はカリプソといい、かつてカリブ諸国、特にトリニダード・トバゴ共和国で発展した音楽ジャンルです。植民地時代に奴隷にされた人たちが意思疎通を行う際に、互いの言葉を理解できなかったため、コミュニケーション方法のひとつとして音楽を使用したのが始まりとされています。その後、カーニバルでの行進用音楽として発展するとともに、暗喩などを込めて政治批判などにも用いられました。

トリニダード・トバゴはイギリス領であったことから、第二次世界大戦の終了後はカリプソがイギリスに輸入され、1950年代には国内でブームを巻き起こすようになります。特に、トリニダード・トバゴからイギリスに渡ったアーティストのロード・キチナーは、カリプソにおける多くのヒット曲を生み出しました。

 

本作『パディントン』で流れる歌の原曲である『London Is the Place for Me』もまた、ロード・キチナーによるものです。作中では、あらゆる国よりもロンドンは住みやすくて良い街だと、ロンドンを賛美する歌詞が流れていきます。もしかすると、かつて植民地支配を行ったイギリスへの皮肉も込められているのかもしれません。しかし、ロンドンの都会的な風景とそこで暮らす人々の様子とともに流れる楽曲からは、基本的にロンドンが素晴らしいという意味にとれるでしょう。

カリプソを広げる場を求めてトリニダード・トバゴからやってきたロード・キチナーの存在は、家を探して遠くペルーからロンドンにやって来たパディントンと重なる部分が多くあります。ふたりの共通点は、イギリスへやって来た移民であること。『London Is the Place for Me』の楽曲は、そのことを少なからず想起させます。

本作は移民問題を直接取り上げた作品ではないので、問題に鋭くメスを切り込むようなメッセージ性はありません。しかし、船便に紛れてこっそり入国しようとするパディントンの姿は、熊に法律が適用されるかどうかはさておき、不法移民の姿と重なるのではないでしょうか。もちろん、パディントンが熊であることは、人種ではなく種族の違いとして、移民の要素をさらに強調します。

 

また、ブラウン一家のなかでも最後までパディントンを受け入れることに難色を示していたヘンリーの姿は、移民への忌避感を映し出しているといえます。そして、ブラウン一家がパディントンを受け入れる様子は、ロード・キチナーと同じように、パディントンもまた移民として迎え入れられたのだと解釈できるのではないでしょうか。ペルーからイギリスへ渡ってくるシーンや、イギリスでひとりさまようパディントンの様子には、どことなくアウトサイダーの雰囲気が漂います。

2000年以降にEUが東欧諸国へ拡大したことに伴い、イギリスで増えた移民の多くはかつての旧植民地からではなく、文化や宗教的価値観の似ている東欧からです。そのため、本作が同時代的な問題をそれとなく反映しているとはいえません。しかし、その点を抜きにしてみても、移民的な要素を感じさせる作品であることは事実です。パディントンの行動をイギリスにやってきた移民として追いかけていくと、別の面白さを感じられるかもしれません。

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