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映画『はじまりへの旅』ネタバレ感想・解説・考察!生き方や価値観を問いかける家族ドラマ

映画「はじまりへの旅」のあらすじ・内容

『はじまりへの旅』は2017年4月に公開された、ちょっと変わった家族の姿を描いたロードムービーです。本作は第69回カンヌ国際映画祭の「ある視点」に出品され、他にも様々な賞を受賞しています。

また、主演は『ロード・オブ・ザ・リング』のアラルゴン役で有名な、ヴィゴ・モーテンセンが主演を務めていることでも有名です。

そんな映画『はじまりへの旅』ですが、この記事では本作の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含む内容となっていますので、映画を未視聴な方は気をつけて下さい。

映画「はじまりへの旅」を見て学んだこと・感じたこと

・最後に生き方を決めるのは自分であること
・違う生き方や価値観を尊重することの大切さ
・普通とは何かを改めて考えさせられる

映画「はじまりへの旅」の作品情報

公開日2017年4月1日
監督マット・ロス
脚本マット・ロス
出演者ヴィゴ・モーテンセン(ベン・キャッシュ)
フランク・ランジェラ(ジャック)
キャスリン・ハーン(ハーパー)
スティーブ・ザーン(デイブ)

映画「はじまりへの旅」のあらすじ・内容

映画「はじまりへの旅」のあらすじ・内容

ベン・キャッシュは6人の子供達と森の中でヒッピー的な生活しています。そこでの生活は厳しく、父親仕込みのサバイバル教育で、子供達は皆アスリート並の筋力と高い学力を誇っていました。しかし、子供たちは現代社会に触れる機会がありません。

そんな中、ベンは双極性障害で入院しているベンの母、レスリーが自殺したという事実を告げられます。悲しみにくれるベン達ですが、レスリーの葬儀で都会に行くことになりました。

しかし、葬儀の仕方の問題で義父のジャックと口論になります。ジャックの葬儀のやり方が気に食わないベンはジャックの葬儀を台無しにして、レスリーの遺言通りの葬儀をしようと企みます。そして、子供達は初めての都会を経験することになりますが…。

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映画「はじまりへの旅」のネタバレ感想

【解説】普通とは何か?今までの価値観や生き方を問いかける物語

【解説】普通とは何か?今までの価値観や生き方を問いかける物語(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS,

『はじまりへの旅』は、鑑賞前はコメディ風のロードムービーかと思っていましたが、思っていた以上に真面目で深いテーマが掘り下げられた映画でした。本作のテーマは、ずばり価値観や生き方を問いかけることだと思います。

本作は森の中でヒッピーのように暮らしていた子供達が、現代社会に足を踏み入れ、今まで経験したことのない都会の生活を体験します。そして、自分たちのこれまでの生き方について考えを巡らせるという内容でした。同時に、森での生活を信じてきた父親であるベンにとっても、子供たちと同じように今までの生き方を見直すことになります。

ベンは過去に何があったのかは作中明らかにされていませんが、資本主義による消費されるような社会を忌み嫌っているような様子がありましたよね。ですが、実際に現代社会に戻ると、自分のやり方では解決できない問題が露わになりました。

 

そして、ベンの子供達からも本だけでは学べず、人や社会と接することで学ぶことも重要だと自覚し、ベンに反抗的な態度をとります。

子供達に反抗されることは、ベンにとってきついことであることは間違いありません。長年森の中で生活し、子供を必死になって育てきたのに、その育てた子供に生き方を否定されるのは想像以上の苦しみでしょう。

しかし、そんなベンの生き方も決して完全に間違っていたというわけではありませんでした。その証拠に子供達は新しい生き方を選択をするものの、最後はベンの元に駆け寄ってきて、ママの望みどおりの葬儀を行います。そして全てが片付いた後、ベン一家は新しい生活をはじめました。

これらのことは、これまでの価値観や生き方を見直して生活や生き方を変化させ、今までの生き方も肯定して新しい生活を迎えるということです。ベン一家の生き方は決して間違ったものではありません。ただこれまでと同じ生き方や価値観ではいけないという意識が芽生え、より良い方向に向かっていく物語なのです。

 

また、本作は普通のあり方を問いかける映画でもあったと思います。ベン一家の生き方は現代社会ではとても珍しく、文明の中で生きている私達にとっては、ある種異様とも言える生き方に見えたはずです。

しかし、ベン一家の教育や生き方を見ていくと、果たして現代の文明社会で普通と言われている生き方は、良いものであるのかどうか疑問を抱いた人もいなくはないと思います。

本作はベン一家の価値観が変化していく話ですが、同時に観客である私たちにも普通とは何かを考えさせられる物語でもあったと思います。本作を鑑賞した後、改めて私達を取り巻いている社会の常識や普通を考えると、本作にまた違った印象を抱くかもしれません。

【解説】ベンの父親としての教育は正しいのか?

【解説】ベンの父親としての教育は正しいのか?(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS,

『はじまりへの旅』を鑑賞して、まず最初に強烈に印象に残ったのがベンのスパルタ教育でした。そして、本作ではこのベンのスパルタ教育に疑問が投げかけられています。

果たしてベンの教育は正しかったのでしょうか。本作を鑑賞した方は、ベンの教育は正しいと思いますか。個人的にはベンの教育方法は白黒とはっきり区別がつけられないと思います。

森の中で暮らす家族の大黒柱であるベンの教育は驚くほどスパルタ式でした。その森の中のスパルタ教育を受けた子どもたちの心肺機能はアスリート並み、子供でも「カラマーゾフの兄弟」や「ロリータ」などの文学作品や、難しい哲学書などを読んでいます。結果として、ベンの子供達は都会の子供とは比べものにならないほど知識が豊富です。

 

しかし、森の中でハードな暮らしをしているベンの子供達には決定的に不足しているものがあります。それは外の社会との交流です。

ベンの教育は確かに、エリート教育にも負けないほどスパルタ式でしたが、家族以外の他者との交流がゼロと言っていいほど不足しています。

その証拠に、スーパーで万引きをした子供達は特に迷うことなくベンの言うことを聞いて、スーパーの商品を盗んでいました。ベンの子供達は、スーパーで買い物をしたことは恐らくほとんどありません。だからスーパーで万引きをすることは、悪いことだという自覚が無いのです。これらのことは、森で暮らす分には問題ありませんが、都会で暮らすには致命的な意識の欠如と言えるでしょう。

このような現代社会では当たり前のモラルや感覚というものが、森の中でしか生活したことのないベンの子供達には欠如しているのです。そして現代社会に必要なモラルや感覚の欠如を、ベンの子供達は初めて都会に接することで自覚することになります。

 

ここまで見るとベンの教育はどこか偏った教育方法だと思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。その場面を象徴するシーンがあります。それが、長女のヴェスパーが次男であるレリアンを自分たちのもとに取り戻そうと、屋根から侵入しようとしたシーンです。このシーンでは屋根の瓦が崩れて、ヴェスパーが屋根から落下して骨折してしまうシーンでした。

作中でも言及されていますが、普通なら下半身に麻痺が残るレベルの怪我なのに、ヴェスパーのアスリート並の体のおかげで障害を負わずに済みます。これは、ベンのスパルタ教育が子供をしっかりと守った意味でもあるのです。

もし、ベンのスパルタ式の教育でなければヴェスパーは死んでしまったのかもしれません。他の子供だったらと考えるとぞっとしますよね。このことから、ベンの教育は子供の命をしっかりと守っています。だから、ベンの教育は全てを否定できるものではありません。

こういったことから、ベンの教育は完全に間違ったものであるとは断言できないと思います。むしろ、ベンの教育は現代社会の脆弱性をカバーしているという見方もできるのではないでしょうか。人によってベンの教育方法は賛否両論があると思いますが、個人的には否定できるものではないと思いますし、むしろ多少は必要だと思っています。

もし、本作をもう一度鑑賞する際には、教育についてもう一度深く考えながら見ると、本作についてまた違った印象を抱くかもしれませんね。

【解説】レリアンの選択について

【解説】レリアンの選択について(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS,

『はじまりへの旅』ではベンが強く印象に残りますが、子供たちの方も忘れてはならない事でしょう。特に注目したいのが、レリアンの選択です。

ベンの義父であるジャックは、ベンの生き方や教育方法を認めてはいませんでしたが、最終的にはベンの生き方と教育を受け入れて尊重しています。もし、終始ジャックがベンの価値観を認めてなければ、子供を無理にでも引きとろうとしたはずです。これはベンも一緒であり、ジャックがベンの価値観を認めたと同じように、ベンもジャックの価値観を認めています。

そうした2人に共通することは、最終的な判断は子供達に任せているということです。子供達の選択はあくまで子供達で行っています。ベンのスパルタ教育を受けた子供達ですから、自分で選択するということは子供達にとっても当たり前だったのでしょう。そして、そのこともジャックはわかっていたのだと思います。

 

以上のことを踏まえて注目したいのがレリアンの選択です。作中でレリアンは最初、ベンのことが嫌いであることはなんとなく感じられましたし、さらに最初にベンの元から離れたいと言い出したのはレリアンです。

しかし、終盤で自分の教育と生き方に自信を失ったベンに、嫌いではないと一番に声を掛けたのもレリアンでした。この場面ですが個人的には少し違和感を覚えました。

確かにベンに育てられたからベンを慕うというのは当然のことですが、ベンの厳しさと価値観をベンの子供達全員が肯定して、また従うというのはちょっと不自然な感じがします。そして、ナイフを向けるほどベンのことを嫌っていたレリアンが、ベンの元にケロっと戻るのもなんだかモヤモヤしました。個人的にはレリアンは、ジャックの元での生活を選んだ方が物語的には自然的だったのではないかと思います。

ベンとジャックがお互いの生き方を尊重していて、どちらも間違ってはいないことを認めているからこそ、レリアンがジャックの方を選択するという展開があった方がよかったのではないかと個人的には思います。

とは言っても、それほどベンの父親としての存在が大きかったから、あのような展開になったのかもしれませんね。どちらの解釈の方がスッキリするかは人それぞれだと思います。

【考察】タイトル『はじまりへの旅』の意味

【考察】タイトル『はじまりへの旅』の意味(C)2016 CAPTAIN FANTASTIC PRODUCTIONS,

『はじまりへの旅』は、今までの価値観や生き方を見直すという内容ですが、同時に新しい生き方への出発の話でもあります。

そのことを象徴しているのが、長男のボウと父親のベンが髪を切るシーンです。髪を切るということは、この映画では新しい自分になることを意味していると思います。ボウが髪を切る時は、初めて家族以外の異性と接して大学へ行くことを決めた時ですが、これはボウが今までの生活の殻を突き破って、新しい自分と生活を受け入れようとしていることの象徴だと思います。

 

この新しい自分と生活を受け入れようとしているのはベンも一緒です。ベンも都会の価値観を受け入れて、新しい生活を受け入れる時に髭と髪を切りました。この映画における髪を切るというシーンは新しい生活を始め、新しい自分になることの象徴なのでしょう。

『はじまりへの旅』というタイトルで、『はじまり』とはまさにこの新しい生活と自分になること。そして『旅』とは、今までの森の生活を含めたこれまでのことなのです。上項でも述べたように、ベン達の森の生活は決して全てを否定できるものではないですし、無駄であったわけではありません。

新しい生き方になるとはいえ、今までのことが全てなくなるわけではないですよね。今までのこと全ての含めた末に新しい生き方、『はじまり』へと至ったというわけです。そして『旅』とは今までのこと全てのこと。そう考えると、本作のタイトルは非常に含蓄のあるタイトルだと思います。

【考察】ラストシーンが象徴しているものとは?

『はじまりへの旅』のラストシーンは会話が少なく、ベン一家の新しい生活の風景が描かれていました。ここではそのラストシーンを考察していきたいと思います。一見ラストシーンは静かな雰囲気で終わっていますが、以前の森の生活とは様々な面で変化が表れています。

まずはベン一家が住んでいる場所について。ベン一家は前のようなジャングルのような森ではなく、ラストシーンでは養鶏所あるいは農園のような場所で暮らしています。

本作の冒頭であったような深い森の中ではなく、都会と森の間あたりの生活をしているように個人的には感じました。生活様式が変化したことは明らかですが、都会と森の間あたりの生活というのが重要です。何故ならベン一家は今までの森での生活も大切にしているから。

ラストシーンの前に、ベンは自分の教育は間違っていると思っていましたが、ベンの子供達はベンを嫌っていません。最後には森の生活の最後のミッションである、ママの火葬を実行しています。このことから、ベン一家はかつての森の生活を完全に捨てているわけではなく、むしろ大切にしていることが分かります。

そして、都会という社会に触れ合うことの重要さも、一連の騒動で理解しているはずなので、ベン一家は都会と森のちょうど間のような生活に落ち着いたのだと思います。

 

また、ラストシーンでは生活の場所ではなく、生活そのものにも変化があります。

分かりやすいところは宿題。子供達は朝ごはんの前に学校の宿題をしていました。これだけでも、子どもたちは学校に通っていることがわかりますよね。つまりベン一家が、以前の森の生活で社会と断絶した生活から、都会との接点がある生活を持ち始めたという意味になります。

 

さらに、食事でも似たような意味を象徴しているところがあるのです。最後に本当に少しだけうっすらと映りますが、ベンがレリアンからシリアルのようなものを食卓で受け取るシーンがあります。これはベンが都会の価値観を少し受け入れたことと解釈することができるのではないでしょうか。

森の生活の頃のベンは、ファミレスに入った時何も注文せずに店を出て行くシーンがありました。この時のベンは、恐らく加工された薬品だらけの都会的で資本主義から生まれた食べ物を毛嫌いしていると思います。そして、シリアルはそんな都会的な食べ物の象徴なのです。

そんな都会的な食べ物であるシリアルをベンが受け取ったということは、ベンが嫌っていた都会の価値観を受け入れているという象徴になります。そして、なによりも父親であるベンの生き方に疑問を抱き、ベンに反抗していたレリアンからシリアルを受け取っているというのもまた感慨深いです。何気ない食卓のシーンですが、かなり考えられて作られていると思います。

もしかしたらここに書いた以外にも、何か象徴しているシーンがあるかもしれません。もう一度本作を鑑賞する時は、そういった何かを象徴しているシーンを探すとより本作の面白さが増すと思います。

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※2019年9月現在の情報です。

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