映画「AI崩壊」はAIが生活の基盤となった未来の日本を舞台に、突如として暴走してしまうAIとそれを止めるために奔走する科学者を描いた作品です。
監督は「22年目の告白 -私が殺人犯です-」などの作品で知られる入江悠です。本作は今後の社会を支えていくAIと人間はどう向き合うのか?と考えさせられる作品でした。
今回は映画「AI崩壊」のネタバレを含む感想や解説、考察を書いていきます。
目次
映画「AI崩壊」を観て学んだこと・感じたこと
・AIをどう使うかは結局のところ人間次第
・未来の社会を支えるAI技術はリアリティがある
映画「AI崩壊」の作品情報
公開日 | 2020年1月31日 |
監督 | 入江悠 |
脚本 | 入江悠 |
出演者 | 桐生浩介(大沢たかお) 西村悟(賀来賢人) 桜庭誠(岩田剛典) 奥瀬久未(広瀬アリス) 桐生望(松嶋菜々子) 合田京一(三浦友和) |
映画「AI崩壊」のあらすじ・内容

科学者の桐生浩介が作ったAI「のぞみ」。国民の個人情報を管理するのぞみですが、ある日突然暴走してしまい、生きる価値のある者とそうでない者の選別を始めてます。
のぞみ暴走の容疑をかけられた浩介は警察から逃げ、自らの潔白を証明するために奔走します。2030年という近い未来を舞台に、AIが発展した社会を描いた作品です。
映画「AI崩壊」ネタバレ感想
AIへの期待や不安。今後実際に起こるであろう社会を描く

昨今、AIの普及によって仕事が奪われるだったり、人間がAIをコントロールできなくなって人類は滅亡させられてしまうだったり、AIに対して漠然とした不安を感じる方もいるかもしれません。
最近ではAIやカメラ、センサーなどの技術で全てを管理する無人コンビニが登場するなど、レジ打ちのバイトのような仕事は急速に減っていくでしょう。
本作はそんなAIが浸透した社会を描いていて、全くありえない舞台設定というよりは実現しそうな世界が描かれており、かなりリアリティがありました。
映画の中にはAIによって命を救われた人もいれば、職を奪われて反AIを掲げる人もいたりしました。この映画はAIを全肯定・全否定するわけではなく、「AI技術が発展すればこういう未来があるかも」と提示しているような作品でした。
【解説】AIを暴走させた犯人は桜庭。結局AIは人間次第でどうにもなる

医療AI「のぞみ」を開発した科学者・桐生浩介ですが、元々このAIが誕生した理由は「人の命を救うこと」であり、正しい目的のために作られました。
「AIの暴走」と聞くとAI自らが感情を持ち、AIの意志で暴走してしまうと思われがちです。大抵のAIは大量のデータを人間がプログラムし、AIがそのデータを元に何かをサポートしたり、人間のような判断をするものです。
基本的に人間がプログラムを組み込むものなので、悪意のあるAIがあるとすれば初めから人間が悪意を持ってプログラムをするか、桜庭がAIを暴走させたように必ず人間の手が加わるのです。
ただ、これは現在の技術力だった場合の話です。「シンギュラリティ(AIが人間より賢い知能を生み出すことが可能になる時)」という言葉を耳にしたことがあるかもしれませんが、2029年には人間並みのAIが誕生し、2045年にはこのシンギュラリティが起こると言われています。
今までは人間がAIをプログラムしていましたが、2029年には人間並みの知能を持つAIが生まれ、2029年以降は人間の知能を越えるAIが誕生しています。では、その人間の知能を超えたAIがAIを作るとどうなるのか?そうなると人間には何が作られているのか分からなくなってしまうんですよね。
人間の知能を越えたAIが人間にとってプラスになるものを作るのか、それとも人間にとってマイナスになるものを作るのかは人間には分からないのです。映画の中で描かれていたような、人間の選別が行われるかもしれませんし、そもそも全ての人間っていらないよねと判断するかもしれません。
桜庭が逮捕された後、いずれ同じようなことが起きると話していましたが、技術の進歩を考えると将来的に全くあり得ない話ではないなと感じましたね。
ただ、人間だからこそできることもあります。それは「人間の知能を越えるAIにはAIを作らせない」というものです。地球規模でそういったルールを作る必要性も出てくると思いますが、中国で遺伝子を操作したデザイナベビーが誕生したり、クローン動物の研究が行われている現状を考えると、例えルールを作ったとしても人間の好奇心を抑えることはできないのでしょう。
「AIにAIを作らせてみたい」という感情は人間らしい部分ではありますが、それが愚かな行為にならなければいいなとも思います。結局、AIを上手く使うかどうかは、いつの時代になっても人間に左右されるのでしょうね。
【考察】警察庁が作るAI「百目」は賛成?反対?

AIを暴走させた犯人として逃亡する桐生に対して、警視庁は独自に開発したAI「百目」を使って追い詰めていきます。
百目は防犯カメラのみならず、街中にいる一般人のスマホやドライブレコーダーのカメラにも許可なく入り込んだり、どちらの方向に逃げる可能性が高いか確率を出したりと、人間ではできない操作能力を発揮します。
AI技術が発展していけば警察の操作で使われることも考えられますし、実際に中国では顔認証システムが搭載されたサングラスを警察官がつけた警察官が、5万人集まるコンサートで一人の犯人を見つけて捕まえたというニュースがありました。
現段階でもここまでのレベルなので、5年10年先には百目レベルのAIが誕生していてもおかしくはありません。
百目ほどの性能があれば逃げた犯人を簡単に捕まえることができるので、一般市民からすれ安心感もありますが、許可なくスマホのカメラが使われてしまうことは許せませんよね。
賀来賢人演じる西村悟が強すぎない?

警察の捜査から逃げる桐生は廃墟となった研究所に向かい悟と落ち合います。
ここでAIのぞみにアクセスしてのぞみを暴走させた人物の映像を調べますが、そこに映ってるのは悟でした。この段階では誰がAIを暴走させたのか分からないので、悟が犯人である可能性もあるわけですが、本当に犯人であれば悟自身が不正アクセスをした人物を探すなんてことはしませんよね。
そして、そこに桐生の居場所を突き止めた特殊部隊が突入し発砲します。そこで悟は身を投げ出して桐生を銃弾から守るのですが、撃たれた悟の息は徐々に弱くなり、「あ、これ絶対死ぬやつだ」と感じさせる神妙な演技をみせます。
「後は…任せた……ぞ……。」と言い残し、ガクッと死んでしまうような、よく映画にある展開ですね。
しかし、そんな悟は起き上がり、ノートパソコンの元へ一直線に走ったかと思えば、ノートパソコンを桐生に投げ渡します。銃で撃たれた悟がノートパソコンを桐生にピンポイントで投げるのもすごいですし、桐生もまたしっかりキャッチするんですよね。
そこでまた悟は撃たれてしまい、その光景を見てあたふたしてる桐生に対して「行けぇ!!!」と大声で叫びます。1発撃たれて死にそうだった悟がさらに2発撃たれ、こんな大声出るか普通?と思ってしまいましたね。
映画のワンシーンに現実的に突っ込むのもヤボですが、悟が死んでしまうという悲しいシーンがあまりにも現実離れしていて若干笑ってしまったシーンでした。
【考察】映画のラストで記者が問いかけた質問の答えについて
うろ覚えで申し訳ないのですが、映画のラストでAIに対して否定的な考えを持つ記者が桐生に「こんなことがあってもAIは人間を幸せにすると思いますか?」的な質問をし、桐生は「考えてきます」と言い、娘の心に対して「言いかえると、親は子供を幸せにできるか?とも言えるね」と答えます。
このセリフを聞いた時はよく意味がわからなかったのですが、よく考えてみると「親が子供を幸せにできるかどうか(AIが人間を救うかどうか)は親次第」ということなのでしょう。
AIでいうところの親はAIを作る人間であり、初めの方でも書きましたが、AIを良いことに使うのも悪いことに使うのも人間次第なのです。愛をもってAIを作れば人を救うAIができるので、子供を幸せにしたいと願うのと同じように、誰かを救うAIを作ろうとすることが大切だということを言いたかったのかもしれません。
主題歌を歌うAIがAI(人工知能)だと思ってた

最近はAIの技術が日々進歩しているので、AIが小説を作ったり絵を描いたり、映画を作ったなんてニュースも目にしたことがあります。
この映画が公開する前、ニュースサイトで「AI崩壊の主題歌をAIが担当!」的な見出しを見て、「AI(人工知能)が作った曲を主題歌にするなんて面白いことするな」と思ったのですが、歌手のAIさんが主題歌を歌ってたんですね。
すごくどうでもいい話をしてしまいましたが、AIさんの曲「僕らを待つ場所」めちゃくちゃ良い曲なので聴いてみてください!
AIの未来をリアルに描いた良作

AI技術が発展した未来をリアルに描き、どんな時代になっても「人間の愛」が一番大切であるということを教えてくれるような作品でした。
最近見た邦画の中ではメッセージ性もありレベルの高い作品でしたし、AI技術が発展しているいまだからこそ是非見ていただきたい映画です!