映画「十二人の死にたい子どもたち」は冲方丁の小説が原作で、「20世紀少年」「人魚の眠る家」などの映画で知られる堤幸彦監督が手がけました。
衝撃的なタイトルで話題を呼んでいる作品ですが、新田真剣佑や橋本環奈、杉咲花、北村匠海といった若手俳優が多く出演しています。
今回は若者の自殺や安楽死などの重いテーマを扱った映画「十二人の死にたい子どもたち」のネタバレ感想や解説、考察を紹介していこうと思います。
目次
映画「十二人の死にたい子どもたち」を観て学んだこと・感じたこと
・様々な理由で自殺をしようとする若者のリアルさ
・自殺をしたいと思う今の現状は不運な偶然
・テンポ良く謎が解明されていくミステリー作品
映画「十二人の死にたい子どもたち」の作品情報
公開日 | 2018年1月25日 |
監督 | 堤幸彦 |
脚本 | 倉持裕 |
原作 | 冲方丁 |
出演者 | サトシ(1番)/高杉真宙 ケンイチ(2番)/渕野右登 ミツエ(3番)/古川琴音 リョウコ(4番)/橋本環奈 シンジロウ(5番)/新田真剣佑 メイコ(6番)/黒島結菜 アンリ(7番)/杉咲花 タカヒロ(8番)/萩原利久 ノブオ(9番)/北村匠海 セイゴ(10番)/坂東龍汰 マイ(11番)/吉川愛 ユキ(12番)/竹内愛紗 0番/とまん |
映画「十二人の死にたい子どもたち」のあらすじ・内容

廃病院に集まった12人の子供たちの目的は、集団で安楽死をすることです。
病院に集まってみると、そこには正体の分からない13人目の少年がベッドに横たわっていました。
何故、12人しかいないはずのこの場所に13人目がいるのか?子供たちの死にたい理由は何なのか?謎が徐々に解明されていく作品です。
映画「十二人の死にたい子どもたち」のネタバレ感想
それぞれの自殺の理由。復讐や後追い、病気など様々

登場人物 | 自殺の理由・境遇 |
サトシ:1番 | 母と兄が自殺未遂、父は自殺 |
ケンイチ:2番 | いじめ |
ミツエ:3番 | 好きなバンドマンが自殺をしたため後追い自殺 |
リョウコ:4番 | 芸能人として大人に利用されることへの反発 |
シンジロウ:5番 | 病気 |
メイコ:6番 | 自殺をすることで父に自分を忘れさせないため |
アンリ:7番 | 生まれてこなければ良い命があることを大人や社会に抗議するため |
タカヒロ:8番 | 薬の服用、吃音症(きつおんしょう) |
ノブオ:9番 | いじめの主犯格を殺害、懺悔のため |
セイゴ:10番 | 親に保険金をかけられていて、自殺をすれば親にお金が入らない |
マイ:11番 | ヘルペス |
ユキ:12番 | 事故で後遺症に |
安楽死をするめたに集まった子供たちの「自殺したい理由」が徐々に明かされていきますが、それぞれが色々な悩みを抱えています。
いじめや病気、芸能人として大人に利用されることへの反発やヘルペスなど一見「そんな理由で自殺するの?」と感じてしまうものもありました。
しかし、映画を観ていて思ったのは、実際に自殺をしようと悩んでいる人や自殺をしてしまう人も、もしかするとこんな感じなのかもしれません。
もちろん大きな悩みを抱えている方もいますが、中にははたから見ると小さい悩みや死に値することではないとしても、当事者からすると誰にも言えず、心の中で苦しみ続けているのかもしれません。(ヘルペスで自殺は流石にありえないけど。)
日本の20〜30代の死亡理由の第1位は残念ながら自殺です。ブラック企業の仕事に耐えられずに自殺してしまう方もいて、そんな人を見て関係のない人は「仕事を辞めれば解決する」という言葉をかけたりします。
もちろん、仕事を辞めて苦しい場所や状況から離れるということは一番の解決策であることは間違いありませんが、自殺することで苦しい場所や状況から離れることができると考えてしまう人もいます。
つらい状況下では正しい判断や思考ができなくなるとも多く、自殺をすることが1番の解決策であると間違った思考を持つ人もいます。ちょっとした悩みであっても、その悩みが自分の中で少しずつ膨らんでしまい、自殺をしようと考えてしまう。この部分に関しては小説や映画だけでの話ではなく、リアリティのある作品だなと感じました。
【ネタバレ】結末にかけて13人目の謎がどんどん解明されていく!13人目の死を隠す必要はあったのか?

実際は12人が集まる予定でしたが、12人が集まった時には謎の13人目の人物(0番)がベッドに横たわっていました。
この12人の中に0番を殺した人がいるのではないかと不安になり、犯人を探すことになります。
映画の冒頭はシーンの切り替わりが早く、「ん?どういうこと?」と何を映しているのか良く分からないシーンが多々ありますが、謎を解明していく過程で答えが明らかになります。点と点が繋がり、あのシーンにはこういう意味があったのかという感じで、ラストに謎が残ることはありませんでした。
答えを言ってしまうと、13人目(ゼロ番)を連れてきたのは12番のユキだったことが分かります。そして、ゼロ番は死んでいたのではなく、植物状態で生きていたことがわかります。
映画を見ながら「死体ではなく実は生きてるんじゃ?」と思った方もいるかと思いますが、実は生きていたんですね。では、なぜ植物状態にあるゼロ番がベッドに横たわっているたかというと、ノブオとアンリが運んだからでした。
廃病院に先に来ていたノブオとアンリは、屋上から車イスを押してくる人物に気づきます。急いで階段を降りると、下には車イスに乗った人物(ゼロ番)しかいませんでした。
呼吸をしていないことに気づいた2人は、先に死んでしまったかの様に見せかけるため、他の参加者に気づかれない様にゼロ番を運びだそうとします。これがこの物語の真相でした。
もちろん、ユキも扉を開けるために一時的にゼロ番を放置していただけで、この病院に置いて自分だけ帰るつもりではありませんでした。
ゼロ番が死んでいたとしても、この後ノブオとアンリも自殺をするのであれば、死体を動かす必要はなかったのではないか?と個人的に思いましたが、ノブオとアンリが優しい人間だったからこその行動でしたね。
【考察】本当は死にたくない優しい子どもたち

ノブオとアンリ以外だけでなく、登場人物みんなが優しくて良い人たちばかりです。
吃音症でどもってしまうタカヒロに対してアンリは「さっきより聞き取りやすくなってる」と言ってあげたり、ミツエは後遺症で重い荷物を持つことができないユキの荷物を持ってあげたり、セイゴはケンイチにいじめをする人に対して「俺が言ってあげてもいいんだけどな」と声をかけます。
素直なマイは誰に対しても優しいですし、結果的にこの集会の場を作ったサトシは全員を生かそうとしているわけなので、登場人物がみんな良い人ばかりでした。
映画の中では「不運な偶然が重なってこのつらい状況がある」といった言葉がありました。
正にその通りで「何故自分だけこんな目にあってしまうんだ」と思う様なことは誰にもありますよね。そんな時に思いつめ、死んでしまいたいと考えることもあるかもしれませんが、その辛い状況は自分だけでなく、他にも同じ様な状況にある人もどこかにいます
辛い状況に陥ると周りが見えず孤独に思えてしまいがちですが、つらい状況にある子どもたちがここに集まったことで「孤独なのは自分だけではないんだ」と思うことができ「生きていたい」と感じることが出来たのでしょう。廃病院を出るときの笑顔が物語っていましたね。
シンジロウやノブオなど、現状が変わらない人もいる

自分の考え方を変えることで現状が変わる人もいますが、病気であるシンジロウは病気のままですし、同級生を殺してしまったノブオの罪が消えるわけでもなく、ユキの兄は植物状態のままです。
自殺願望のある12人の子どもたちが集まり、最終的には誰も死なずに迎えたラストは一見ハッピーエンドの様でしたが、彼らのその後を考えてみると少し辛いものがありましたね。
安楽死というよりは集団自殺?

本作は自殺願望のある人が集まり安楽死をするというものでしたが、死ぬ方法を見てみると「練炭自殺」でした。
安楽死とは苦痛を与えずに死ぬことを指しますが、練炭自殺は酸欠によって酷い頭痛が起き、手足が痺れながら死んでしまうとも言われています。なぜ「集団自殺」ではなく「安楽死」という言葉を使ったのかと考えてみると、「安楽死の是非」について問いかけているのかなとも感じました。
日本では安楽死の制度や法律はありませんが、オランダやスイスでは安楽死の制度があり、2016年のオランダでは6000人以上の方が安楽死しました。
もちろん、どんな方でも安楽死できるというわけではなく、治療法がない病気、耐え難い痛みを受けるなど、様々な要項を満たして初めて安楽死が認められます。これは自らが死を選ぶ「自死」であり、自殺と同じ様なものと思われがちですが意味はだいぶ異なります。
筆者自身はいじめや辛い日々の仕事から解放されるために自殺することには反対ですが、この安楽死制度には賛成です。60、70歳まで生きた人が治らない病気になり、お金をかけてつらい治療をして数ヶ月〜1年の寿命を延ばすのであれば、自ら死を選ぶというのは認められて良いのではないかと感じています。
本作に登場したシンジロウはどんな病気かは分かりませんが、髪の毛が抜け落ちる副作用がある薬を投薬していて、余命が短いことも明かされていました。
そう考えると、病気と投薬で苦しむシンジロウの自死は認めるべきものなのか、そもそも人の生き死にについて赤の他人がどこまで突っ込むべきなのか?と考えてしまいましたね。社会問題である「自殺」というテーマと共に、「安楽死」という裏テーマもあるようでした。
ツッコミどころも多い映画

自殺をするために12人が集まるシーンでは、1番のサトシが登場してイスに座り、話を始めようとしたところに「後ろの人は誰?」と聞かれ、サトシが後ろを振り返って「これは誰だ?」というようなシーンがありました。
サトシがイスに座る時、13人目の人が寝ているのが絶対に視線に入ると思うので「いや見えてるだろ!」と心の中で突っ込んだ人も多いでしょう。
他にも、廃病院に工事関係者(?)の人たちが入ってきそうなシーンがありましたが、あれは今後の展開に関係があり、誰かが仕掛けたものなのか?とも思いましたが全く関係ありませんでした。
「容易に外に出ることはできない」というのを示すためのシーンだったと思いますが、工事関係者は何しに来たんだとも思いましたね。
自殺を考えている人が見れば何か感じるものがあるかも

この映画は自殺をしようか悩んでいる人が見れば、何か感じるものがあるかもしれません。
筆者も過去に精神的に辛い時期があり自殺を考えたことがありましたが、数年経って振り返ってみると「何故あそこまで悩んでいたんだろう」と思うような時がいつか来ますし、「あの時の自分は頑張っていたな」とふと感じる時があります。
人間の数だけ悩みがあり、人によってその大きさも異なりますが、いつか報われる時は必ず来ると思います。
また、筆者の身近なところで言えば自分の叔父さんが自殺をしてしまったり、小学生の時に毎日の様に遊んでいた友達が自殺をしてしまった経験もあります。
叔父さんが亡くなった時は僕が小学生の頃でしたが、母親が何ヶ月も寝込んでずっと泣いていたのを記憶しています。友達が自殺したことを聞いた時は当時の記憶が蘇り、「何に思いつめて自殺をしてしまったのか」「死ぬ時に何を思ったのだろうか」と考えて涙しました。
どちらも自殺した理由については詳しく分かりませんが、自殺を選んでしまうほど自分の中で何かを思い苦しんでいたのでしょう。しかし、残される家族や友達も同じ様に「助けてやれなかった自分」を悔やみ、苦しい感情を抱えながらこの先の人生を生きていきます。
憶測ですが、自殺を考える人の根は純粋で優しい人が多いと思うんですよね。それ故に心が繊細であると思うのですが、その優しさをまず自分に向けて欲しいなと感じます。自分自身に優しさを向け、もし自分が死ぬことで悲しむであろう「残された人」のことを考えてみると、気持ちに多少の変化があるかもしれません。
いじめが理由であれば学校を変えたり、学校に行く必要もないですし、仕事が理由なら今すぐ辞めるべきです。環境を変えることで心身が回復することもあるので、一つ目の選択肢として自殺を選ぶことはしないで欲しいですね。
視聴前にハードルを上げない方が良いかも
「十二人の死にたい子どもたち」というタイトルが衝撃的ですし。人気の若手俳優が多く出演しているので「この映画は面白そう!」と観る前からハードルを上げてしまうと、「あれ、こういう展開?」と感じてしまうかと思います。
もの凄くつまらない映画というわけではないのですが、個人的には大絶賛できる作品というわけでもありませんでした。
ただ、役者さんの演技力がめちゃくちゃ高くて、上手なシリアスな演技は印象に残りました。ストーリー設定が「子供たちの集団自殺」という非現実的なので、演技が下手だと一瞬で現実に戻されてしまいがちですが、出演陣の悩みや闇を抱えている演技はとても良かったです。
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