Netflixで配信されている映画「サイトレス/SIGHTLESS」は、ある日突然何者かに襲われ、失明してしまったバイオリニストの女性を描いたスリラー映画です。
若干先の展開が読めるものの、作品は89分と短いので気軽にみることができ、「盲目の主人公が頭の中で想像した世界」が描かれていました。今回は映画「サイトレス」の感想や解説、考察をしていきます。ネタバレも含みますので注意してください!
目次
映画「サイトレス」を観て学んだこと・感じたこと
・突如視力を奪われた後の生活って大変
・その人の声や話し方でなんとなく顔を想像することってあるよね
・犯人さん見えていない相手にやられすぎじゃ…?
映画「サイトレス」の作品情報
公開日 | 2020年6月 |
監督 | クーパー・カール |
脚本 | クーパー・カール |
出演者 | エレン(マデライン・ペッチ クレイトン(アレクサンダー・コック) ラナ(ディセンバー・エンスミンガー) |
映画「サイトレス」のあらすじ・内容

ある日、ヴァイオリニストのエレンは何者かに襲われ、目に吹きかけられたスプレーが原因で視力を失ってしまいます。
そんなエレンの元に世話係としてクレイトンという男性が派遣され、クレイトンの指導の元、目の見えない生活が始まりますが、アパートの外で決まった時間に車の警報音が鳴ったりと奇妙なことが次々に起き、彼女は疑念を抱き始めます。
映画「サイトレス」ネタバレ感想
【解説】鳥の色や人の顔が一瞬で変わる描写は良かった

この映画は主人公のエレンが盲目ということもあり、「映画の中で映し出されているものが本物かどうかは分からない」という描き方をされています。
例えば、クレイトンが盲目のエレンにインコをプレゼントするシーンでは、黄色のインコが映し出されていて、エレンの「鳥の色は?」という問いに対してクレイトンは「ベビーブルー」と返答し、一瞬でインコの色が黄色からベビーブルーの色に変化するというシーンがあります。
このシーンは今後の展開でも重要になってくる要素で、映画の中で描かれる物や人の姿は全て「目の見えないエレンが想像したもの」であることがわかります。
なのでエレンの部屋に勝手に入り込んできた人物がクレイトンだと思ったら、隣の部屋に住んでる男だった!という恐怖シーンもありましたが、盲目のエレンにとっては目の前にいる人が誰なのか分からないという「目の見えない恐怖」が非常に上手く描かれた作品でした。
とは言え結果的に見れば、エレンの隣の部屋に住んでいた危険な男も実際には存在していなくて、その男もクレイトンだったというオチなんですけどね。
【考察】医師や刑事もクレイトンだったけど、声でエレンは気づかないものかね?

事件の捜査をしていた黒人刑事だったり、エレンと関わってきた人物はラナを除いて全てがクレイトンの多重人格であったことが物語の後半で判明しますが、さすがに声の質だったり喋り方で「クレイトンでは?」とエレンは気づくと思うんですよね…。
もし電話だけのやり取りであれば、声を変換していて判別できなかったということも理解できますが、刑事とのやり取りでは何度も至近距離で直接会話をしていますし、気が動転しているとは言え「さすがに気づくだろ!」とツッコミを入れたくなりました。
ただ、それだけ人間は視覚からの情報に頼っているとも言えるかもしれません。目を瞑ったまま日常生活を送ることの難しさは想像以上でしょうし、先天的に目が見えず、目の見えない期間が長いのであればまだしも、エレンは今まで見えてたものがある日突然見えなくなったわけですから、聴覚など視覚以外の感覚が鋭いわけでもないですしね。
「サイトレス」は個人的にスリラー映画として悪くはないと感じましたが、こういった設定として甘いところが作品としての評価が低くなった原因かもしれません。
【ネタバレ解説】犯人・クレイトンの犯行動機が薄くない?

クレイトンがエレンに執着する理由が物語の後半で明かされますが、中々に薄っぺらい犯行動機でしたね。
映画を見ていない人にも簡単に説明すると、クレイトンの母が死んだことで父は変わってしまい、クレイトンを3年半もの間地下室に閉じ込めます。地下室での生活に絶望を感じていた彼ですが、妹が父にバレないように通気口を通じて、母とクレイトンがよく聴いていた曲を流してくれていました。
その曲というのがエレンが演奏していたもので、暗い地下室の中で流れたエレンの演奏がクレイトンにとって唯一の希望であり、その想いがエレンへの狂気的な執着に繋がったというものでした。
クレイトンにとっては希望の存在であったエレンを傷つけて監禁するのか…と、愛情が行き過ぎて狂気に変わってしまう様子はサイコパス的でもあるのですが、個人的には「そんな犯行理由?」と思わずにはいられませんでした。
犯人は誰なのか?犯行理由は何なのか?と後半に向けて大事な部分を引っ張ってきていたので、もう少し驚きの内容であれば良かったんですけどね…。
声しか分からない人の顔を想像してしまうことってあるよね

先ほどから何度も言っている通り、映画の中で登場していたほとんどの人物はクレイトンでした。これは目の見えないエレンが多重人格のクレイトンの声や喋り方から、人種や年齢、顔を想像したものであり、あのクレイトン本人の姿ですら、もしかするとエレンの想像嬢のものなのかもしれません。
しかし、声だけを聞いてその人の顔を想像してしまうことって意外と経験があったりしますよね。
日常的にYouTubeを見る方も多いと思いますが、動画や生放送をしている方の中には顔を公開せずに声だけで動画を投稿している人も多いですよね。その声を聞いて「何となくこの人の顔はこんな感じ」と無意識のうちに想像してしまう方もいるのではないでしょうか。
顔は見えないけど声は聞こえる。その声を聞いて顔を想像してしまう。これはまさしく目の見えないエレンと同じ状態であり、盲目の人と全く同じとは言わないまでも、同じような体験をしているのかもしれませんね。
【評価】突っ込みどころはあるもののコンパクトにまとまっていて、目の見えない恐怖や困難さを感じれるスリラー映画

エレンが仮住まいのアパートに連れられてくるまでの記憶がなかったり、全く目が見えないエレンへのサポートがお粗末なものだったり、クレイトンがすぐにエレンの事を好きになったりと、あからさま過ぎるくらいにクレイトンが怪しくて、「クレイトンが犯人なんじゃ?」と早い段階で感じた人も多いかと思います。
映画の中で何度も描かれていた「エレンの想像を裏切ってくる」展開のように、私たちの想像を裏切ってくるような展開があるかと思いきや、「想像通りクレイトンが犯人でした〜」というオチには「何じゃそれ」と思う部分もありました…。
ただ、エレンが実際にいた場所は高層マンションでもなく、外の騒音は全てスピーカーから流れる音で作られたものであったりと、私たちに見えていた映像は目の見えないエレンが頭の中で想像した世界であり、現実はちがっていたという展開は新しいものがありましたし、クレイトンがエレンにやられすぎ感はあったものの、スリラー映画としては個人的に楽しめた作品でした。
最終的にエレンの視力が回復してくれれば…と思いましたが、ラストシーンで描かれた事件から6ヶ月後のヴァイオリンの演奏シーンを見る限り、視力は回復していないのでしょう。
目が見えないながらもヴァイオリンの演奏家として復帰するラストは、ある日突然視力を奪われてしまったエレンが前を向いて進み始めた、救いのシーンだと感じました。コンパクトにまとまった映画なのでまだ見ていない方はぜひ!