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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』ネタバレ感想・解説!タランティーノの描く最高の「おとぎ話」

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のあらすじ・内容

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』は、映画マニアならその名を知らぬ人はいない天才監督、クエンティン・タランティーノの最新作です。

本作はこれまでのタランティーノ作品とは一風変わったスタイルで、「ハリウッド最悪の事件」とも称される「シャロン事件」という実在の悲劇をベースに、50~60年代のハリウッドを描き出した伝記映画という体をとっています。

そのため、本作を視聴する前にまず事実としての「シャロン事件」について、大まかな知識をもっておくと作品をかなり楽しむことができます。記事内では感想の他に解説を加えているので、ご鑑賞前でもそのくだりは目を通されるとよいでしょう。なお、ネタバレには注意してください。

目次

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』を観て学んだこと・感じたこと

・タランティーノが描く「おとぎ話」は流石の一言
・ブラピとレオ様の共演だけで一見の価値あり
・史実を思い出すと涙が出てくる

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』の作品情報

公開日2019年8月30日(日本)
監督クエンティン・タランティーノ
脚本クエンティン・タランティーノ
出演者リック・ダルトン(レオナルド・ディカプリオ)
クリフ・ブース(ブラッド・ピット)
シャロン・テート(マーゴット・ロビー)
ロマン・ポランスキー(ラファル・ザビエルチャ)
ジョージ・スパーン(ブルース・ダーン)

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のあらすじ・内容

映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のあらすじ・内容© Sony Pictures Entertainment

俳優として芽が出ないまま人生の佳境に差し掛かってしまったリック。そんな彼には、スタントマンという職業にありながら無二の親友であるクリフという存在がありました。

流行と廃りが交錯するエンタメ業界で生きていくうちに、精神的に不安定になっていくリックと、対象的にいつまでも自分らしい生き方を貫いていくクリフ。

彼らは正反対な存在でしたが、そこには固い絆が結ばれていました。

こうして日々を生き抜いていた彼らのもとに、当時売れっ子監督となっていたポランスキーと、その妻シャロン・テートが引っ越してきます。正反対の彼らは、この先で意外な形によって交流を持つことになるのです。

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映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のネタバレ感想

【解説】史実におけるシャロン・テート事件

【解説】史実におけるシャロン・テート事件© Sony Pictures Entertainment

まず、本作を楽しむ上で欠かせない予備知識が、史実において実際に起こった「シャロン事件」です。この事件について知っておくことで、映画の中身をより深く知ることができます。ただし、「ハリウッド最悪の事件」と称されるように凄惨な悲劇ですので、ショックを受けやすい方は閲覧にご注意ください。

事件の発端は、映画同様にポランスキー監督と結婚し、彼の豪邸にシャロンが住んでいたことから始まります。ポランスキーは映画撮影のために自宅を空けており、彼女は自身の友人らと共に過ごしていました。

しかし、そんな彼らが何者かによって殺害されているという通報が、現地警察のもとに届けられます。通報を受けた警察が現場に急行すると、そこにはシャロンの凄惨な死体が天井から吊り下げられていたのです。彼女は当時妊娠八か月であり、母子ともに殺害されてしまうという悲劇的な結末を迎えてしまいました。

 

では、なぜシャロンは殺害されなければならなかったのか。その理由も驚くべきもので、なんと「カルト教徒による人違い殺人」であったのです。彼女の殺害を実行したのは、狂信的なカルト教祖であるチャールズ・マンソンとその信者たち3名でしたが、殺害理由は「シャロンが引っ越してくる以前に同敷地に住んでいた音楽プロデューサーに対する恨み」であったとされ、シャロンに非は全くなかったのです。

こうした事件の悲劇性や恐ろしさから「シャロン事件」の名は瞬く間に全米へと広がり、マンソンや実行犯は終身刑を処され、カリフォルニアの仮釈放を認めていた当時の州法を変えてまで彼らの仮釈放が認められることはありませんでした。

以上がシャロン事件の全貌です。ただし、本作は史実に極めて忠実なタイプの伝記映画ではありませんから、上記の内容が直接的なネタバレにはなりません。それでも背景となっている事件について知っておくことの重要性はタランティーノ本人も認めており、「必ずしも事件を知っている必要はないが、事前に映画の時代背景を知っていると得るものがあるはずだ」とインタビューにて回答しています。この回答からも分かるように、当時のハリウッドを知っていると、より映画を楽しむことができるでしょう。

【解説】ブラピとレオ様に、実在の超豪華映画スターを演じるキャストたち

【解説】ブラピとレオ様に、実在の超豪華映画スターを演じるキャストたち© Sony Pictures Entertainment

本作の見どころはタランティーノらしい作風に他ならないのですが、他に注目すべきところを挙げるとすればその超豪華なキャストでしょう。まず、なんと言ってもあのブラッド・ピットと、レオナルド・ディカプリオが夢の共演を果たしているということに触れないわけにはいきません。

どちらも日本において抜群の知名度を誇るイケメン俳優ですが、意外なことに調べてみる限り共演は本作が初めて。ただ、考えてみればどちらも屈指の二枚目俳優なので、二人を画面に出すと見ごたえはあっても映画として華がありすぎたために、これまで共演がなかったのかもしれませんね。

とはいえ、二人の相性はとてもいいように見えました。仮に十数年前で二人がまだトレンド俳優の一角でしかなかった時期ではどうだったか分かりませんが、現在はお互いに単なる二枚目俳優の域を超えた演技派としての地位を確立しています。当時であれば落ちぶれている売れない俳優役をディカプリオが演じること自体ありえなかったかもしれませんが、さらに彼を親友として支えるブラピの存在も素晴らしかったです。単に二人の超豪華キャストを配置したというだけでなく、しっかりとその必要性を見せてくれています。

 

さらに、彼らの脇を固める実在の超豪華スターたちもご紹介しておきましょう。シャロンという女性自体は日本でそれほど高い知名度を獲得しているわけではありませんが、知名度の高いところだとスティーブ・マックイーンやブルース・リーあたりは映画ファンなら誰でも名前くらいは知っていると思います。

歴史的スターたちの再現度もかなり高いらしく、筆者の知識では把握しきれなかったところも非常に好評なレビューが目立ちます。加えて、実在のスターたちをしっかりと再現すると同時に、この時期のハリウッドを再現するために世界観の細部までがこだわり抜かれている点からも目が離せません。実在のテレビ番組や飛行機、レストランやラジオに至るまで、当時のハリウッドを再現するべく創意工夫がなされています。

我々からすれば当時のハリウッドは歴史の中でしか分からないので、「こういう世界だったのか」という楽しみ方をすることになるでしょう。しかし、当時を知っているコアな映画ファンの方であれば「懐かしい気分になるなぁ」と、過ぎ去りし過去を振り返りながら鑑賞するという楽しみ方もできるのかもしれません。

映画製作の裏側にあるスターたちの一面が垣間見える

映画製作の裏側にあるスターたちの一面が垣間見える© Sony Pictures Entertainment

この作品の大きな特徴として、先にも触れた豪華スターたちの知られざる素顔のようなものを垣間見ることができます。例えば、本作のヒロインに相当するシャロンの素顔についてはタランティーノが「相当調べた」と語っているように、我々の知っている悲劇のヒロイン以外に様々な側面のある人物であることがわかってきます。

まず、作中の彼女は基本的に快活な女性であり、悲劇のヒロイン的な彼女の姿はあまり見ることができません。さらに、自身が出演した作品を見て喜んでいる観客の姿を目にするため、お忍びで出演作が上映されている場所へ足を運ぶなど、あくまで等身大の彼女を描き出そうとするタランティーノの方針が印象的でした。周囲の人々に愛されていた彼女の人柄がおぼろげながら想像できて、史実における悲劇がさらに強調されているように思えました。

他にも、史実通りかはともかく、かなり気難しい人物であることがうかがえるブルース・リーや、セリフが覚えられず怒りをあらわにするリックなど、我々の知らない映画界の裏側が逃げることなく描かれています。

このあたりの演出に関しては、やはり「映画オタク」のタランティーノならではのこだわりによって撮影されたものと考えても良いでしょう。彼がどれだけ映画そのものを愛しているかということに関しては今さら語るまでもなく、こうした「映画界の裏の顔」も含めて映画を愛しており、それを我々にも伝えたいという彼の心が見えてくるようです。

 

そして、こうしたキャラクターたちの掛け合いは、タランティーノらしい「セリフ回し」によって巧みに表現されています。彼の映画を見たことがある方であれば、一見無駄の多く冗長な会話が至るところにちりばめられていることをご存知でしょう。これはもちろん好き嫌いが分かれるところだとは思いますが、本作に関しては登場人物たちが演技に関係なく日常を送っているような世界観の構築に一役買っており、無駄話が作品の没入感を高めてくれます。

長い映画の中で描かれるハリウッドの日常を満喫していると、あのラストシーンがより輝いて見えることになるわけです。史実を思えばますます悲劇性が助長されていく一方で、タランティーノ的解釈によってめちゃくちゃな世界観の中にも、シャロンやポランスキーを「フィクションの中だけでも」救うことができているのです。

【解説】史実完全無視の「タランティーノ的ラスト」が超爽快!

【解説】史実完全無視の「タランティーノ的ラスト」が超爽快!© Sony Pictures Entertainment

さて、本作最大の見せ場である映画のラストは、結論から言えば実在の出来事とは大きく異なる痛快でハッピーなものとなりました。シャロン殺害を企てていたヒッピー達ですが、泥酔している彼らに激怒したリックは、シャロン殺害前に自身も殺害対象とされてしまったのです。

こうしてリック宅に侵入してきたヒッピーでしたが、その不審な様子に感づいたクリフと彼の犬が反撃に出ます。ここからはもうタランティーノ節全開で、ヒッピー側がバッタバッタと死ぬわ火炎放射器は出てくるわ股間をかみちぎられるわ…と、ここまでリアルに忠実な形で描かれてきた映画そのものをぶっ壊すような、強烈極まりない展開が待ち受けているのです。この笑ってしまうような展開の末、図らずもリックらはシャロンの殺害を阻止することになるのでした。

 

ラスト十数分シーンを整理してきましたが、あの場面をテキストで説明することは極めて困難であると言わざるを得ません。ただ、あのラストシーンはやはりヒトラーを爆殺してしまうタランティーノらしい大胆すぎる演出で、彼の作品を待ち望んでいたファンは大喜びだったでしょう。

しかし、せっかくここまでリアルに忠実な作品を作り上げてきたのに、最後でドがつくほどのフィクションになってしまったことを受け入れられない方もいらっしゃるかと思われます。もちろんそのご意見も一理はあるのですが、そもそもタランティーノはこの作品を「おとぎ話である」と言い切っています。本作のタイトルである「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を訳すと「むかしむかし、ハリウッドにて…」という「日本むかし話」のような文意になるのです。

つまり、タランティーノは最初から「おとぎ話」を作るためにそこまでの過程を描き出していたわけで、映画の9割を投じた「壮大な伏線」という見方もできるでしょう。確かに、あのままリアル路線でシャロンが殺害されてしまえば、伝記映画としては一流である一方でエンタメ映画として「人を笑わせること」はできなかったかもしれません。そこで、限りなくリアルを再現しておいて最後で斜め上の裏切り方を見せることで、「当時のハリウッドやシャロンの再現」と「映画的な面白さ」を両立させたのではないかと感じました。

もちろん、映画の中でシャロンが救われても現実は変わらないかもしれませんが、それでもタランティーノはシャロンを救いたかったのでしょう。この作品はある意味で彼にとってあこがれの舞台であった当時のハリウッドを夢見た、タランティーノ少年の物語でもあるからです。

【評価】映画オタクのタランティーノが描く、最高の「おとぎ話」

【評価】映画オタクのタランティーノが描く、最高の「おとぎ話」© Sony Pictures Entertainment

本作の中身について、個人的にタランティーノ映画が好きということもあって非常に満足のいくものに仕上がっていたと思います。確かに良くも悪くも人を選ぶ映画であることは事実ですが、過去に彼の作品を好んでみていた方であれば鑑賞して損はしないと思います。

そして、先から触れているように本作は「タランティーノ少年が夢見たハリウッドの姿」が描かれており、ここまでは「リアル」と解説してきた華々しい世界ですらも、実のところ当時のハリウッドをかなり一面的に描き出しているに過ぎません。

シャロン事件が勃発したのは1969年ですが、60年代のハリウッドは戦前に見られた「黄金期」から凋落しつつあった時代であり、アメリカ社会全体もベトナム戦争によるヒッピー・ムーヴメント全盛期にありました。そのため、映画界にもこうした風潮は大きな影響を与え、当時のハリウッドではアメリカン・ニューシネマという体制に歯向かうアウトローが、最終的に権力によって打ち負かされるという暗い作品が流行作となっていたのです。

 

つまり、本作で見られるような「映画の都ハリウッド」を描くのであれば、1930年代~1940年代あたりのハリウッドを描くのが王道になるのでしょう。しかし、タランティーノはあえてハリウッド低迷期に焦点を当て、かつその世界を肯定的な形で描き出しました。

ここに、本作が「おとぎ話」的な色彩が全面に取り入れられている理由が分かるでしょう。本作で描かれているハリウッドの姿は、当時のありのままを描き出したというより、少年時代のタランティーノが憧れたハリウッドのそれに他ならないのではないでしょうか。

確かに、前後の比較をしてみれば当時のハリウッドは明らかな衰退期であると指摘できます。しかし、まだ幼いタランティーノからすればそれでも光り輝いて見えたのでしょうし、それは自身が映画人になったとしても、ノスタルジーという形で彼の中に生き続けているのでしょう。

本作を「史実に基づいた伝記映画」として鑑賞するのは大きな間違いです。この作品はタランティーノが憧れ、そして夢見た在りし日のハリウッドを描き出した物語であり、それゆえにシャロン・テートは我々およびタランティーノの心中で永遠の存在になることができたのです。

そういう意味で言えば本作は「タランティーノの心中」を推しはかるために重要な作品であり、後世で彼の作品を研究する上では外せない作品になるかもしれません。

(Written by とーじん)

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