Netflix映画「カムガール」はネット配信の闇や不正アクセスの怖さ、人間の承認欲求などを描いた作品です。タイトルの「カムガール」の意味はWebカメラを使って、生中継をするモデルのことを言います。
顔の見えない相手との会話やエスカレートする行為など、ネット社会の現代にもありえそうな内容の映画でした。
今回はNetflix映画「カムガール」を視聴した感想や解説、考察をネタバレを含めて書いていきます!カムガールを視聴した方はぜひ見てみてください。
目次
映画「カムガール」を観て学んだこと・感じたこと
・顔出し配信することの危険性
・リアルリティのあるネットの闇
・人間の承認欲求について
映画「カムガール」の作品情報
公開日 | 2018年11月 |
監督 | ダニエル・ゴールドヘイバー |
脚本 | イーサ・マッツェイ |
出演者 | アリス(マデリーン・ブルーワー) ティンカー(パッチ・ダラー) バーニー(マイケル・デンプシー) フォックス(フローラ・ディアス) |
映画「カムガール」のあらすじ・内容
アリスは「Lola_Lola」というアカウントでネットにヌードショーを配信し、カムガールとして働いています。そのサイトにはランキング制度があり、彼女はランキング1位になるために過激なことをするようになります。
そんなある日、アリスがウェブ配信をしていない時に、自分のアカウントがオンラインになっていることに気づきます。配信を見てみると、自分がウェブ上で過激なことをする映像が流れていて、アカウントが乗っ取られていました。
過去の映像が流れているだけだと思っていましたが、この放送はリアルタイムで配信されていることがわかります。アカウントを乗っ取った犯人は誰なのか、アリスは犯人を探り出そうとします…。
映画「カムガール」のネタバレ感想
配信内容が過激になっていく様子はリアル
ランキングの下位にいるアリスは、ランキング上位に入ることを求めて配信内容がどんどん過激になっていきます。
映画冒頭のナイフで首を切って自殺するシーンはかなり衝撃でした。結局、自殺は見せかけだったわけですが、あそこまでして人気になりたい、ランキング上位を取りたいと思う人は実際にいますしね。
海外ではSNSにあげる動画のためにビルの屋上を歩き、誤って落下して死んでしまうというニュースが稀にあります。「カムガール」はただの「イイね」だけでなく、視聴しているユーザーから投げ銭をもらうことができるので、ランキング上位に入ればそれだけ視聴者が増え、収入も増えるわけですね。なので、多くのお金を得る為に過激な行動に出てしまう彼女の心理は理解できなくもないですが…。
そして、配信終了後にはファンのティンカーから通話がかかってきますが、課金額が0円のティンカーの電話は早々に切られてしまい、課金をしてくれるバーニーに対しては裸になってお風呂に入る映像をWebカメラに映します。
これもまた人間の闇の部分というか、課金を多くする人にはどんどんサービスをするわけですね。人間らしいと言えば人間らしいシーンでした。
ストーカー「ティンカー」がキモすぎる
アリスが買い物をしている時、視線を感じて周りをみるとティンカーが見ているというシーンがありましたが、ティンカーの犯罪臭が気持ち悪くて鳥肌ものでした。
アリスとティンカーはビデオ通話をしているので、アリスもティンカーの顔を知っています。それでも会いにきて、それがバレたら黙って逃げ出すってかなりの恐怖ですよね。
まだティンカーの顔を知っているから良いものの、不特定多数の人がネットの配信を見ているわけで、ティンカー以上に危ない人がネット配信を見ている可能性もあります。ネットで配信をすることが悪いとは言いませんが、顔や自分の情報を出すことは危険でしかありません。
日本でもYouTubeやTikTokなどが流行っていて、TikTokに至ってはスマホ一つで動画を簡単に投稿できる為、小学生が顔を出して動画を投稿をして事件に巻き込まれてしまうケースもあります。
子供達は顔を出してネットに動画をあげることの危険性を理解していないと思うので、この映画を見て「顔を出して動画をあげる(配信する)ことの危険性」を改めて感じました。
アカウントの乗っ取り、無能なサイト管理者
アリスがカムガール・クラブハウスから配信をして気絶。目を覚ますと、自分のアカウントから配信されていることに気づきます。
映像には自分の姿が映し出されていて、声も自分そのものです。この時アカウントは乗っ取られたけど映像は録画かな?と思いましたが、ライブ配信にチャットを打ってみると、しっかり返答があるんですよね。
自分の姿形で同じ声、それが会話をしながら配信をしているわけですからパニックになるはずです。アカウントにログインすることもできず、映し出される映像の自分は過激なことをしています。これは腹立たしいですよね。
サイトの運営に電話をかけてみるも、適切な対応はしてくれません。
新しいアカウントを作ったアリスは、個人チャットをするために2000枚のチップを払おうとしますが、新規アカウントでは個人チャットはできず「登録後5日必要です」の文字が表示されます。
「この仕様確かにありそう」と何だか納得してしまったシーンでした。
弟のジョーダンの誕生日に来ていた友達のクズっぷり
アリスの弟であるジョーダンの誕生日パーティーが家で開かれますが、そこに来ていたジョーダンの友達(?)たちは、スマホでアリスのネット配信をみて笑っています。
これもまた、顔を出して配信することのリスクです。弟の友達にも見られてしまうって、かなり最悪ですよね。でも実際に弟や父親、友達が見ている可能性もあるわけですからね…。
そして家族が集まっている目の前で、アリスがネットでアダルト配信をしていることをバラされてしまいます。映画とわかっていても、この状況の地獄さと言ったら目を伏せたくなるシーンでした。
アリスが「アダルト配信をしている」と家族の前で言ったからといって、誰も得しないんですよね…。性格の悪い友達だなぁと思うのと同時に、ジョーダンは友達が姉のアリスのことを悪く言っていることに怒ったわけですから、姉思いの弟であることは間違いないですよね。
ちなみに、弟のジョーダン役を演じるデヴィン・ドルイドですが、Netflixの人気ドラマ「13の理由」の主要キャラとしても出演していますよね。13の理由もかなり面白い作品なので、Netflixに加入している方はぜひ視聴してみてください!
偽物の自分が拳銃自殺、後に繋がる伏線
映し出されるライブ映像には、変な格好でエクササイズをするアリスが映し出されています。アリス本人にしてみればかなり腹立つ映像ですが、フザケている姿にクスっと笑えるんですよね。
そして、ライブ映像のアリスが拳銃を取り出し、5万コインで弾を込め10万コインで銃を撃つと言います。コメントは過熱してすぐに10万コインに達成して引き金を引きますが、映画の冒頭にあったナイフで自殺を見せかけた様に、この拳銃自殺もただの見せかけでした。
血だらけのアリスが起き上がる時にアリスの顔部分の映像が乱れるシーンがあ、これが後の重要なシーンに繋がる伏線になっています。初めこのシーンを見た時は、私のパソコンの調子が悪いのかな?と思っていましたが、あのシーンは犯人が映像を合成して切り替えているという意味だったのですね。
拳銃自殺のシーンで気になったのは、すぐに課金額が10万コインに達成したことです。まるで銃を撃って死ぬことを楽しむ様なコメントには恐怖を覚えました。
これは映画の中での出来事でしょ?と思うかもしれませんが、ちょうど半年くらい前のニュースで同じ様な出来事がありました。中国で起きたことですが、ビルの屋上に立って自殺をしようとする女性がいて、その下には野次馬たちが集まっています。
下に集まった野次馬たちは楽しそうに「飛び降りろ!飛び降りろ!」とコールを始めたというニュースでした。結局のところ、この女性は飛び降りなかった様ですが、実際に同じ様なことが現実にも起きているんですよね。そして、ネットであれば顔が見えない分、なおさら煽る様なコメントをすることも考えられます。
ネットの闇というか、人間の闇を見ている様な感覚になりました。
【考察】アカウントの乗っ取り、なりすましをしている犯人は誰なの?
ランキング上位にいるベイビーが既に事故死していることを知ったアリスは、アカウントを乗っ取られ成りすましされている人が自分だけで無いことを知ります。
そして、ベイビーが亡くなった後に誰と共同でライブ放送しているか確認してみると、サラ、ウィンター、ヘレンの名があり、その3人のフレンドにストーカーだった「ティンカー」の名前があることに気づきます。
ティンカーを問い詰めると「あれの正体や仕組みは知らない」と言います。ティンカーが犯人だと思っていましたが、結局のところティンカーが犯人ではなかったのですよね。
結局、真の犯人は語られることはありません。犯人はだれなのだろうか?と考えてみると「サイト運営者」「全く知らない第三者」のどちらかが考えられます。
サイトの収益を上げるために、サイトの運営者や会社ぐるみで成りすましをしているのかとも思いましたが、他のライブ配信サイトでも成りすましがあることや、アリスが顔を出して偽物と通話をしても本物と認識できなかった点を考えると、サイト運営者である可能性は低いんですよね。
一番犯人としてあり得るのが「全く知らない第三者」です。第三者と言っても、裏で人間がリアルタイムに会話をしているというわけでもなく、自動的にコメントを読んだり身体を動かしたりするソフトを作っていて、全て自動化しているという線がありそうです。
でも、そうであればアリスが偽物とビデオ通話をして、顔を机にぶつけるシーンがありましたが、そこで偽物が負けたからと言って、偽物はアカウントのパスワードを渡すんでしょうか?人間が動かしていれば「負けたのにここでパスワードを渡さないのはマズイ」と思って渡す可能性はありますが、ソフト(AI的なもの?)が自動的にアカウントのパスワードを渡したと考えると、それはそれで怖いですよね。
犯人が第三者であったとして目的は何だろう?と考えると、やっぱりお金なのでしょうか。ライブで過激なことをして投げ銭をしてもらい、自動的に稼ぐことができるシステムを作って設けているんですかね。そう考えると、それを放置しているサイト運営者との繋がりもある様に感じますが…。
進歩するテクノロジーに警鐘を鳴らしている?
少し前に見たニュースで、AIがオバマ大統領の声を生成し、その声が聞き分けるのが難しいほど本人とそっくりなものだったというニュースを見ました。
これは亡くなった歌手の声を再現できる技術としても注目されていますが、悪い方に使われると成りすましにも使われるわけです。技術が進めば、姿形も復元できる様になるでしょうし、リアルタイムでコメントが読める様になるのかもしれません。
そして、カムガールの結末で結局犯人が分からなかった様に、どこの誰が成りすましをしているのか分からないという事態になる可能性もあります。
カムガールに登場した無能な警察官が「ネットを見なきゃいい」と言っていましたが、結局のところ「顔を出してネット配信をしない」というのが最大の対策なのです。将来的にこの様なことが起きるかもしれませんね。
人間の承認欲求は恐ろしい
成りすまし相手からアカウントのパスワードを聞き出し、アカウントの削除をしたアリスでしたが、再びライブ配信をします。あんな嫌な思いをしたのにまだやるの?と驚きでしたが、これもまた人間の闇の部分でした。
カツラを被り、エミリー・ラムジーという名前で登録したアリスは、まるで別の人物に成りすましているかの様な結末を迎えます。そしてまた「ライブ配信」という世界に戻るのでした…。
Netflix映画というと「バード・ボックス」「ROMA/ローマ」といった作品が人気で「カムガール」はどうなんだろうと思っていましたが、最後まで犯人が気になってあっという間でした。
映画の中での話ですが、実際にありえそうな問題であり個人的に面白い作品でした。余談ですが、ウェブカメラに書かれた「眼」の文字が気になりますよね。