映画「アリー/スター誕生(現代:A Star Is Born)」は1937年に公開された映画「スタア誕生」のリメイク作品です。4度目のリメイクとなる今作ですが、前回のリメイクが1976年なので、前回のリメイクから40年以上が経っています。
「アリー/スター誕生」はレディー・ガガやブラッドリー・クーパーの歌声がとても素晴らしく、レディー・ガガの演技も違和感なく観ることができました。
今回は「アリー/スター誕生」を観たネタバレ感想や解説を書いていきます!
目次
映画「アリー/スター誕生」を観て学んだこと・感じたこと
・スター歌手になるまでの過程がカッコいい!
・音楽で繋がる二人の愛が素敵
・スターと言えども人間。孤独や苦悩もある
映画「アリー/スター誕生」の作品情報
公開日 | 2018年12月 |
監督 | ブラッドリー・クーパー |
脚本 | エリック・ロス ブラッドリー・クーパー ウィル・フェッターズ |
出演者 | ジャクソン・メイン(ブラッドリー・クーパー) アリー(レディー・ガガ) ロレンツォ(アンドリュー・ダイス・クレイ) レズ(ラフィ・ガヴロン) |
映画「アリー/スター誕生」のあらすじ・内容
ドラッグバーで稀に歌を披露しているアリーですが、人気歌手のジャクソンがたまたまバーを訪れます。その素晴らしい歌声に感動したジャクソンはアリーに話しかけ、互いに仲良くなります。
そして、ジャックは次のコンサートにアリーを招待し、ステージ上で歌ってみろと無茶振りをします。
それがきっかけとなり、アリーはスター歌手への階段を駆け上がります。
ちなみに、ジャクソン役は「アメリカン・スナイパー」「ハングオーバー!」などで知られるブラッドリー・クーパーですが、監督と脚本も手がけていることには驚きました。
映画「アリー/スター誕生」のネタバレ感想
レディー・ガガの演技とスターになる前の初々しさが良い
レディー・ガガの本格的な演技は今作が初めてということですが、驚くくらい演技が上手でした。スター歌手になるまでの過程を描いているので、実際にガガが歩んで来た人生と重なる部分があったのかもしれません。
ウェイトレスとして働きながらシンガーソングライターとして活動するアリーは、度々ドラッグバーでパフォーマンスをしていますが、この時は本格的な歌手としての活動をしていません。この序盤の演技が、レディー・ガガの初めての演技と役がリンクする様に感じて、とても良かったんですよね。
実際のレディー・ガガは既にスターなわけですから、ありのままの自分を出してしまうと自信満々な演技になってしまいます。しかし、「役者」としてのレディー・ガガを出すことで、スターになる前(素人時代)のアリーを上手く演じられている様に感じました。
アリーとジャクソンの歌声に鳥肌を超えて熱くなる
カントリーミュージックの歌手であるジャクソンにその才能を認められ、大舞台でアリーは歌うことになります。アリーが書いた曲「Shallow」の歌詞にジャクソンがメロディをつけてコンサートで歌いますが、この時のアリーの歌声が物凄く良いです。
この感動を文章で表すことは難しいのですが、アリーの迫力と繊細さを持ち合わせた歌声を聴くと、とにかく鳥肌が立って身体が熱くなりました。映画を観てここまで鳥肌が立ったのは初めてでしたね。これはレディー・ガガの表現力があってこそのものだと思います。
アリーが大舞台に立ち、大勢の観客を前にして歌う時の緊張感がひしひしと感じられ、歌っている最中に目を覆うシーンがありますが、そのシーンがまた良いです。緊張からジッとしてられないというか、この大勢の客を見てたら雰囲気にのまれちゃうよ!という様な感じです。
同時期に公開されていた「ボヘミアン・ラプソディ」も観ていましたが、個人的には「アリー/スター誕生」の方が好きな映画でした。
そして、この映画はレディー・ガガだけでなく、ジャクソンを演じるブラッドリー・クーパーの歌声にも心震えます。
楽曲が良いというのもあるのですが、本物のカントリーミュージックの歌手か?と思うくらい声が良いです。もちろん、歌手であるジャクソンがアリーと関わり、アリーがスターの階段を駆け上がっていくストーリーなので、ジャクソンの歌が下手ではいけないわけですが、予想を遥かに超える歌声で感動しました。
この映画では代表曲である「Shallow」の他にも、歌詞やメロディの良い曲が多く登場しています。エンドロールを観ている時に気づきましたが、ほとんどの曲で「written by Lady Gaga」とあったので納得しました。ここまでクオリティの高い曲が登場していた理由は、ガガ本人が曲を作っていたからなのですね。(ガガと一緒に様々な方が楽曲制作に関わっている様です。)
劇中で流れる音楽はどれも良いのですが、個人的に好きなのがアリーがピアノを弾きながら歌う「Always Remember Us This Way」です。
That Arizona sky burning in your eyes
You look at me and, babe, I wanna catch on fire
燃えるようなアリゾナの夕焼けがあなたの瞳に映っていた
この冒頭の歌詞と歌声で一瞬にして引き込まれました。英語を理解できる訳ではないので、私の解釈が正しいのかは分かりませんが、音楽を通して出会ったジャクソンへの想いを綴った詞です。
曲調がどこか悲しげなのは、好きな人と付き合っている時に誰しもが感じる「いつか終わりが来てしまうのではないか」という不安な気持ちを表現している様に思えました。バンドの演奏に終わりが来る様に、二人の関係や幸せな時間も終わりが来てしまうのではないかという気持ちですね。
この映画の結末を観た後に「Always Remember Us This Way」をまた聴くと泣けてきます。つらい未来を予期する様な心に残る一曲でした。
アリーがスターへの階段を駆け上がるのと同時にジャクソンが堕ちていく
アリーはステージでパフォーマンスをする度に賞賛され、徐々に人気が上がっていきます。それと同時にジャクソンの聴力は落ちていき、酒に溺れてひどいアルコール中毒になっていきます。
アリーがスターになっていくと、ジャクソンは人としてダメになってしまうのですね。まるで二人の気持ちが離れて、二人の関係がくれてしまう様に見えて悲しくなりました。そして、喧嘩も多くなってしまいます。
でも、アリーはジャクソンがどんな人物であっても、ずっと心の底から好きなんですよね。「Is That Alright」には「All of your words are like poems to me(あなたの言葉は全て詞の様に聞こえる)」という歌詞があります。ミュージシャンとしてアリーがジャクソンを尊敬していることが分かります。
そして歌詞の中には「私の目を見て愛してると言って欲しい」「人生が終わる時にあなたの顔を見ていたいの」とあります。死ぬまで一緒にいたいというアリーの気持ちを感じられます。
テレビで歌うアリーはレディー・ガガそのもの
「サタデーナイトライブ」というテレビ番組に呼ばれたアリーは「Why Did You Do That?」という曲を披露します。その姿はアリーというよりは、レディー・ガガそのものです。
アクター(俳優)としてのガガというよりも、アーティストとしてのガガを見ている様でした。「Why Did You Do That?」という曲は良いのですが、個人的にはダンス無しで歌うしっとりとした曲の方が好きでしたね。
ジャクソンの失態、苦悩、アルコール中毒
人気絶頂のアリーはグラミー賞にノミネートされますが、酔ったジャクソンに音楽性を否定され喧嘩が起きます。ここら辺の2,30分のシーンが二人の悪くなってしまった関係性をフォーカスするシーンで、アリーとジャクソンの音楽シーンがめっきり無くなります。
ここで退屈に感じてしまう方もいるかもしれませんが、このシーンがスターの苦悩を描いている様に感じました。
人気のあるスターを想像すると、人々から賞賛され莫大なお金を持っていて、毎日が楽しくキラキラしたものだと想像しがちです。しかし、スターと言えども人間な訳で、停滞する日常があったり、恋人と喧嘩をして振り回されたりと、一般人と同じ様なことで悩んだりすることもあります。
アリーは結局、周りからの賞賛よりも大好きなジャクソンにただ認められるだけで良かったんですよね。
そして、アリーは最優秀新人賞を受賞しステージでスピーチをすることになります。
ここでもアルコール中毒のジャクソンは酔っ払っている訳ですが、アリーがステージ上でスピーチをしている時にジャクソンはステージに上がり、舞台上で失禁してしまいます。アリーの晴れ舞台を夫であるジャクソンがぶち壊した訳ですね。
これをきっかけに、アルコール中毒という病気を治すためリハビリに励みます。リハビリ中にジャクソンは、13歳の時に自殺未遂をしたことを明かしています。
そして、2ヶ月間のリハビリを終え、アリーに対して申し訳ないことをしたと涙ながらに謝罪します。ジャクソン自身も酒に溺れてしまうことが悪い事というのは重々わかっていて、それでも酒に依存してしまう不甲斐ない自分を憂いています。
ジャクソンを通してアルコール中毒という病気の難しさが分かりますし、酷くなる耳鳴りや徐々に衰えていく聴力、歌手にとって耳が聞こえづらくなってしまうことは致命的です。この現実から逃れるため、酒に溺れてしまうのは理解できなくもないです。
ジャクソンの自殺。生きているだけで良いんだよ
アリーはツアーの中でジャクソンと共演することを望みますが、マネージャーのレズは断固拒否します。そして、アリーはリハビリから戻って来たジャクソンと過ごすため、残りのツアーを全てキャンセルします。
その後レズはジャクソンに対して、アリーを引き戻したこと、ジャクソンがアリーの晴れ舞台をぶち壊し、その対処が大変だったことを口調を強くして言い放ちます。この時、僕は「レズ、もうやめてくれ!ジャクソンだってよく分かっているんだから…」と思いました。
夫であるジャクソンが、妻の晴れ舞台をぶち壊したことは自身でよく分かっているはずですし、もの凄く反省しているんですよ。もうそんなに言わないであげてくれ…。
そしてアリーはジャクソンに対して一つ嘘をつきます。ツアーをキャンセルしたのは、セカンドアルバムの作成に集中するためというものです。
しかし、ジャクソンはこれが嘘であることは分かっていて、また自分のせいでアリーに迷惑をかけてしまったと感じています。アリーはその晩に行われるコンサートにジャクソンを招待して、コンサートで一緒に歌うことを約束しますが、一人になったジャクソンはガレージで自殺をしようとします。
このシーンがとても辛いんですよね。一度ジャクソンは車に乗ってコンサート会場に向かおうとするのですが、引き返して自殺を決行しようとします。自殺をする人の心の不安定さを描いている様にも感じました。
アリーはジャクソンがただ側にいるだけで良いのに、ジャクソンは自分がしてしまった数々の過ちへの懺悔の気持ちがあったのかもしれません。
ラストの「I’ll Never Love Again lyrics」を歌うシーンが圧巻
ジャクソンが13歳の時に自殺をしようとしたが、失敗に終わったということを笑いながら語るシーンがありました。「今回も失敗であってくれ」と願いながら映画を観ていた方は多いのではないでしょうか。
しかし、残念ながらジャクソンは亡くなってしまいます。そして、アリーの元にジャクソンの兄であるボビーが訪れ、ジャクソンの死はアリーのせいではないことを伝えます。
そこでジャクソンが詞を書いた楽曲を受け取り、ジャクソンのトリビュートコンサート(追悼公演)で披露します。
この時の「I’ll Never Love Again lyrics」の歌詞や歌声がとても良くて泣けます。
歌詞を見てみると「あなた以外、他の誰も愛することができない(あなたしかいない)」という内容になっています。しかも、これはアリーが書いた訳でなくジャクソンが書いている訳ですからね。お互いに心の底から本当に大好きだったんです。
それならば何故、アリーを置いて自殺なんてしてしまうだよ…とも思いました。本当はずっと過ごしたかったのと同時に、アリーに対して物凄く申し訳なかったんだろうなぁ。
また、この曲の出だし部分がとても好きです。ステージに立ったアリーは、イントロ部分で大きく深呼吸をする様に息を吸います。この息遣いがアリーの緊張感を表しているようにも感じて、初めてジャクソンとステージで「Shallow」を歌った時に似た、緊張感を感じるシーンでした。
愛する人を失った悲しい心情を歌っているので、失恋している人がこの映画を観ると心に来るものがあると思います。
アリーが書いた「Shallow」の歌詞にジャクソンが音楽をつけ、ジャクソンが書いた「I’ll Never Love Again lyrics」の歌詞にアリーが音楽をつける。音楽を綴り、お互いの愛を交換していく二人の姿には感動でした。
好きな人とこの映画を見れば、好きになって良かったと思えること間違いなしです!本当に素敵な作品です。