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映画『シェイプ・オブ・ウォーター』のネタバレ感想・解説・考察!怪獣と人間の恋を描く恋愛映画

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のあらすじ・内容

映画『シェイプ・オブ・ウォーター』は「パシフィック・リム」などの作品で知られるギレルモ・デル・トロ監督による恋愛映画です。

すべての素材に舌を巻くほどの、監督の創作性が爆発した名作でした!

今回はそんな『シェイプ・オブ・ウォーター』の個人的な感想やネタバレ解説を書いていきます!

目次

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」を観て学んだ事・感じた事

・アカデミー賞13ノミネートは伊達じゃない。全シーンに魂がこもっていた
・映画好きはもちろん、異種族愛推しや特撮好きのオタク各位にもオススメ!
・生々しさと現実味は表裏一体。ディズニー的なキラキラした作風好きは観ない方がいい

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」の作品情報

公開日2017年(日本では2018年公開)
監督ギレルモ・デル・トロ
脚本ギレルモ・デル・トロ
ヴァネッサ・テイラー
出演者イライザ・エスポジート(サリー・ホーキンス)
リチャード・ストリックランド(マイケル・シャノン)
ジャイルズ(リチャード・ジェンキンス)
怪獣(ダグ・ジョーンズ)

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のあらすじ・内容

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」のあらすじ・内容

舞台は1962年、冷戦真っ只中のアメリカです。発話障害をもつ主人公イライザは、「航空宇宙研究センター」の夜間清掃員として働いています。

豊かでもなく恋人もいませんが、それなりに人間らしい生活を送っていました。

そんなある日、センターに水生の怪獣が運び込まれてきます。そこからイライザと怪物の恋が、ゆっくりと始まっていきます。

映画「シェイプ・オブ・ウォーター」の感想

いろんな意味でデータ通りな、大人の恋愛映画

いろんな意味でデータ通りな、大人の傑作© 2017 – Twentieth Century Fox

本作の肩書きといえば、やはり2017年のヴェネツィア国際映画祭とアカデミー賞で最高賞をダブル受賞したというものでしょう。同様の快挙というと『ハムレット(1948年)』あたりに限られるほど、非常に目覚ましいものです。

一方で興行収入の方は、あまりパッとするものではありません。2017年のランキングでいえば50位にも入らず、同じ「女性と怪物のラブストーリー」である『美女と野獣』(実写版)とは、全世界での売り上げで実に5倍以上の開きがあります。

こうしたデータからも推察できるように、『シェイプ・オブ・ウォーター』はまさに大人のための映画です。筆者が鑑賞した上でも、やはり甘々としたよくある恋愛作品とは違う、とても先進的な魅力をたたえた作品だと実感できました。派手でギラギラしたものはありませんが、一つ一つの素材から人間らしい醜さと美しさを感じられる傑作です。なにも考えずに観れるものでもなければ、上品で小綺麗なものでもありません。美しいけれど美しすぎず、居心地のいい映像世界がありました。

 

そういった意味では、本作は「恋愛映画が観たい!」という気持ちで観るものとは限らないのかもしれません。もちろん美しい恋愛もこの作品の大きなテーマの一つではありますが、「まったく観たことのないような映画が観たい!」という人にこそ勧めた方が本質的である可能性もあります。

安直に泣けるというものではないながら、どうしようもなく素晴らしい恋愛映画です。どうぞそのようなお気持ちを持って観てください。

暖かみがあって古臭くない音楽

暖かみがあって古臭くない音楽© 2017 – Twentieth Century Fox

もう、冒頭から流れてくるアコーディオン調の曲を聴くだけでも、この映画にノックアウトされてしまう人もいるでしょう。アレクサンドル・デスプラが手掛けたテーマ曲 “The Shape Of Water” 単体にさえ、人を惹きこむ力があります。

もちろん劇中でもうまく使われ、作品を彩っています。この主題歌の使い方はどことなく『タクシードライバー』を思い出させたりします(特に関連はありませんが)。

 

他の曲も独特の世界観に寄与する傑作ばかり、オリジナルばかりではなく、ハリー・ウォーレンが作曲した40年代の名曲 “You’ll Never Know” も要所で使っています。かつて現実にヒットした曲でありながら、年月によってまた神秘性を感じさせるのも面白いところです。

サントラはAmazon Unlimited等の聴き放題サービスでもラインナップされていますので、あわせてご鑑賞ください。

社会性とファンタジーが高度に混ざったストーリー

社会性とファンタジーが高度に混ざったストーリー© 2017 – Twentieth Century Fox

本作の登場人物たちは、「社会・マジョリティからはじき出される」という傾向を持っています。主人公は障碍者ですし、友人のゼルダは黒人かつ家庭で女性差別を受けています。近所に住むジャイルズは同性愛者であり、かつて会社をクビにされた身……といった具合です。

はじめはエリートとして登場するストリックランドやホフステトラー博士も、ある出来事をきっかけにマジョリティから弾き出されることに。皆がマイノリティという中でどう動くか?それが『シェイプ・オブ・ウォーター』のテーマの一つでもあります。単なるラブストーリーではないんですね。

それでいてリアルに傾倒しすぎることはなく、ファンタジーらしさも損なわれていません。導入部のモノローグでは海中に家が建っており、中には穏やかな時間が流れています。怪獣の容器も『海底二万マイル』を彷彿とさせるような、古典的SFの意匠。それらによって、怪獣が作品世界の中で浮くようなこともなく、生々しすぎることもない絶妙なフレーバーを出しています。

 

さらに、時折挟まれるセックスとバイオレンスが、独特のバランスを生み出しています。

どちらも社会派としては特に必要視されず、ファンタジーとしてはむしろ避けられるものです。これらが想起させるのは、大衆化する前の童話といったところでしょう。まさに世相と空想の融合した作品であり、それを21世紀に創造したあたりも感嘆させられる部分です。

恋愛映画なのに人間が汚い!

恋愛映画なのに人間が汚い!© 2017 – Twentieth Century Fox

ファンタジーやラブストーリーというと「言動のキレイな主人公たちと、身勝手な悪役の対立」が一般的だと思います(とりわけ20世紀中は)。しかし『シェイプ・オブ・ウォーター』の人物は、およそ全員が身勝手です。皆が皆、生身の人間らしい自己本位の行動を起こすところが、面白い要素の一つです。

南米で怪獣を捕獲した白人たちや、電気ショックで怪獣を拷問するストリックランドはもちろん身勝手ですし、褒められたことはしていません。けれど他の人物だってまったく模範的とは言えません。ゼルダは夫の愚痴を吐いてばかりですし、仕事中でも監視の目を盗んでタバコを吸ったりします。ジャイルズも、自身が狙っているパイ屋の店主の話ばかりしていたり、仕事がうまくいきそうな間は主人公の訴えを煙たがったり。かといってそれが上手くいかなくなると一転して協力するあたり、なんとも現金です(我々も似たようなものですけどね)。

 

同じことが主人公にまで言えるのが、本当に面白い部分です。本作は人間と人外の恋愛ということで『美女と野獣』などを連想しがちですが、彼女のどこをどう取ったってベルにはなりません!別段美しいわけでもなければ、若くもありません。

また、冒頭から浴槽で自慰にふけっているあたり、性的に欲求不満と見て間違いなさそうです。怪獣との恋は、本当に美しいだけのものか?それとも中年女性による、寂しさの埋め合わせにすぎないのか?特定を避けるように作られているのがユニークです。

イライザには教養だって見受けられません。中盤、ジャイルズにある作戦への協力を訴えるシーンがありますが、なんとも説得が下手なんですね。自分の気持ちを押しつけるばかりで、ジャイルズの都合を考慮しないんです。協力してジャイルズになんの得があるのかも明示しませんし、話を切り出すタイミングも最悪でした。大事な用事で外出する直前に頼み込んでも、話を聞いてもらえるはずはありませんからね。

あげく胸倉を掴んで、物に当たって……と、まるでスマートではありません。けれどその汚さが、かえってマイノリティらしさとリアリティを浮き彫りにしています。2010年代の作品としても、これが相応しいのだと言ってよいと思います。

 

これは蛇足ですが、ここ数年はマイノリティや負け犬に焦点を当てる風潮が高まっています。『万引き家族』が2018年のカンヌ国際映画祭最高賞を受賞したのも、記憶に新しいところではないでしょうか。

2016年に最高賞を受賞した『わたしは、ダニエル・ブレイク』も、社会的弱者をクローズアップしたという点では共通です。今の時代の流れを掴む上でも、一度ご覧ください。

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非言語表現の幅、演技がハンパない!

非言語表現の幅がハンパない!© 2017 – Twentieth Century Fox

「目は口ほどに物を言う」とはよく言ったものですが、演技としてそれを行うのは並大抵のワザではありません。キャラクターを真に深いレベルで理解してシンクロなければ、微細な表情の違いは出せませんからね。とりわけ『シェイプ・オブ・ウォーター』では主演男優・女優ともにセリフがない分、表情を始めとした「言葉に頼らない表現」が大きなウェイトを占めています。とても難しい役どころだったことは間違いないのですが、怪獣もイライザも見事に演じきっていました。

怪獣の方は総合力の結晶といった出来栄えでした。アクターであるダグ・ジョーンズの動きももちろんですが、デザインと合成、それに音響がしっかりと融合し「イライザが恋するほど高い知性をもった半魚人」というキャラクターを完璧に作り出していました。落ち着いて考えると、(Magic: The Gatheringに出てきそうな)ウロコのついた怪獣が一人の女性を夢中にするなんて、無理難題だったはずです。なのに実際に鑑賞すると、醜さと美しさを両立した見事な怪獣が出来上がっているんです!

始めて見るイライザを警戒し、拷問に苦しみ、次第にイライザを愛していく……それが伝わってくるのは、各分野のスペシャリストの努力があってこそでしょう。日本の特撮の怪獣(仮面ライダーにせよウルトラマンにせよ)は表情が一定であることが多いこともあって、一種の感動さえ覚えます。

 

一方のイライザはサリー・ホーキンスの技術の賜物ですね。惜しくも受賞は逃しましたが、アカデミー主演女優賞にノミネートされるだけの仕事をこなしていました。何も喋れなくても人並みに生活を楽しみ、怒り、憎み、焦り、誰かを愛し、性欲を持て余す等身大の女性になりきっていました。どこかにいそうな設定のキャラクターだからこそ、結果的に味のある主人公になっていたことがスゴいと思います。

以下からネタバレ有りになるので注意してください。

【ネタバレ】出会ってしまったイライザと怪獣はどうなる?

【ネタバレ】出会ってしまったイライザと怪獣はどうなる?© 2017 – Twentieth Century Fox

清掃員の立場を駆使して、主人公は怪獣との密会を重ねます。お互いに声は出せないながらも、心を通わせていく二人。しかし軍部の科学的見地の不足から、怪獣の解剖が決定していて、それを知ったイライザはジャイルズと協力して怪獣を連れ出すことを決意します。

同じころ、センター職員の一人ホフステトラー博士がソ連側のスパイであることが明かされます。彼は学者として怪獣を生かすことを望んでいましたが、センター側は要求を受け入れませんでした。しかもソ連側からは「解剖して情報を得る前に処分しろ」という命令まで下されてしまいます。

 

そして解剖当日、イライザは首尾よく怪獣を運び出します。途中でホフステトラー博士がそれに気づき、情報を与えると共に停電を起こして手助けをします。ゼルダにも気づかれてしまいますが、最終的にはジャイルズが用意した車で逃げ切ります。

その後怪獣は、イライザの部屋の浴槽で一命をとりとめます。大雨が降った日に海へ返す算段を立てつつ、しばし蜜月の日々を過ごします。愛せば愛すほど別れが辛くなっていきますが、イライザは完全に心を奪われていきます。ただ怪獣の方もアパートで生きていくには限界があり、自然に帰る必要がありました。

一方センターと軍部は血眼になって怪獣を探しますが成果は出ず、担当していたストリックランドの責任が追及されます。後がなくなった彼はホフステトラー博士に目星をつけて追及しますが、なかなか証拠が出ません。

 

それから数日後の大雨の日、ストリックランドはついに、ホフステトラー博士がソ連と繋がる現場に立ち会います。さらに怪獣がイライザの元にいることを知り、急いで確保に向かいます。ジャイルズとイライザ、怪獣が桟橋で別れを惜しんでいたところにストリックランドが現れ、銃で射撃。三人とも負傷しますが、ジャイルズと怪獣によってストリックランドは首を裂かれてしまいます。

遅れて現れた警察から逃げるように怪獣はイライザを抱えて海へダイブし、怪獣が口づけるとイライザの銃創はたちまち完治。さらに発話障害の原因となっていた首の古傷がエラに変わって蘇生します。二人は水の中、長く抱き合うのでした。

【ネタバレ】数十年前の芸術に新しい風を吹き込んだ!

【ネタバレ】数十年前の芸術に新しい風を吹き込んだ!© 2017 – Twentieth Century Fox

本作の中には、デル・トロ監督のさまざまな趣向が凝らされています。それは先述したように、マジョリティや怪獣にも色濃く表れています。イライザのアパートが映画館の上にあるのも、なんらかの意図があってのことでしょう。

それだけではありません。イライザがジャイルズの部屋に来たときなど、劇中ではたびたび白黒のテレビがついています。そこで流れているのは、いつも鮮やかなタップダンスの映像。史実として1962年にあれだけたくさんダンスが放映されていたとは考えにくいですから、やはりわざとでしょう。

このダンスが、終盤になって新しい表現として生まれ変わります。怪獣を海に逃がすと決めていた大雨の日、イライザは声にならない声で怪獣への愛を歌います。そこにスポットライトが当たり、色味が消え、いつの間にか怪獣と舞台の上へ……。妄想の中ながら、二人はバンドを前にして鮮やかに踊りあいます。

果たしてこれまで、半魚人と人間がデュエットで踊る映画なんてあったでしょうか!そもそもアカデミー賞に値するような怪獣の造形が今まで少なかったわけですから、きっとないでしょう。日本の怪獣が鮮やかにダンスをしてきたとも考えられません。これまでになく、奇異なはずなのに、どこまでも美しい愛の姿。本当によくぞ作ったというものです。新しい映像表現の方法というものは、まだまだあると思わされます。

【ネタバレ】悪役にも味がある

【ネタバレ】悪役にも味がある© 2017 – Twentieth Century Fox

本作で主人公を阻むのは、航空宇宙研究センターに出向してきたストリックランドです。白人至上主義的で意味不明なジンクスを持ち、怪獣を傷つけることに何のためらいも持たない、一見すると血も涙もないような男です。イライザやゼルダからすれば、最後まで鼻持ちならないエリートでしかありませんでした。

ただ一歩引いたところから考えると、彼にも同情の余地があるのが、社会的・現代史的な味わいを感じさせます。確かに差別的発言や、怪獣への一方的な虐待は完全な悪徳です。しかし彼にも家庭があり、非情ながらもしっかり働くことが、妻と子供のためになっていました。当時の理想を絵にかいたような生活に、家族みなが幸せそうにしているのが印象的です。

もしかするとストリックランドは、前時代的な先進思想・共産主義に対するアメリカ的な優位性の被害者として描く意図があったのかもしれません。一度のミスで上司から切り捨てられてしまった彼に、必ずしも「自業自得だ」という感想が適確なのかは微妙なところです。

マイノリティへの差別意識や、(ホフステトラー博士の意見を軽んじていることから)科学的な素養が少ないことが、怪獣を逃がされたことに直接関係したわけでもありません。そういったことで炎上するような時代でもないですしね。そもそも得体の知れないバケモノに対して暖かく接するというのがとても難しい話です。明らかに人間でないものと恋に落ちたイライザの方が、一般的な感覚からはズレていることを忘れてはいけません(忘れさせるくらい怪獣の動かし方が上手かったのは否定できませんが)。

 

実際、クライマックスの直前にはストリックランドへの同情を誘うシーンもありました。大雨の中、一人で車の中に引きこもっていたときのことです。せっかく購入した新車のキャデラックでしたが、何者か(ジャイルズの車)による損傷が放置されたままであろ、怪獣に切断されて無理やり接合した指は腐りきってしまったうえ、速く怪獣を見つけなければ職も失ってしまうという、まさにどん底の状況でした。

けれどそのことを家族に打ち明けもせず、それどころか辛い顔を見せないように一人で車に籠もるんですね。フロントガラス越しに向けられたカメラからはストリックランドの顔と雨の陰影が重なって、泣いているようにもなんとか堪えているようにも見えたりします。使える道具をすべて使った、本作の名シーンの一つでしょう。

総合するとストリックランドは、外では悪しき差別主義者でありながら、内では理想的な父親でした。イライザたちにも醜い部分がある分、悪役にも美しい部分があることを効果的に見せるのは、やはりデル・トロ監督の技術力があってこそでしょう。卓越したバランス感覚と創作力が見てとれます。

【考察】もはや旧時代のものとなった大義の対立

【考察】もはや旧時代のものとなった大義の対立© 2017 – Twentieth Century Fox

本作の舞台設定は1962年。スターリンが死亡して数年が経っているものの、いわゆるキューバ危機によって米ソ間の緊張がかなり高まっているころです。冷戦の終結まではさらに二十年以上を必要とするころでもあり、それぞれの国がまだまだ「自分たちの陣営が勝つ」と思い込んでいます。そして冷戦の側面の一つが宇宙開発でもありましたから、「航空宇宙研究センター」というのはその前線を示すのに格好の場所でした(どうも架空の建物のようですが)。

それだけに、物語には合衆国だけでなくソ連も関わってきました。内部にホフステトラー博士を送り込み、色々と指示を出していました。結果的には博士の独断で逃がせたものの、元々は怪獣を始末させる予定でいたあたり、ある種騒動の遠因になっていたとも言える部分があるでしょう。

 

そんなソ連を象徴するセリフが一つあります。ホフステトラー博士が怪獣について、学ぶ余地があるため生かすべきだと主張したのに対し、ソ連側の上官は「我々は学ぶ必要はない」と一蹴するのです。今の私たちからすると考えられない言い分ですよね。定期テスト前の中学生ならともかく、政府の高官が何を言っているんだという話です。けれど当時のソ連ならありえます。前進することを信条とする合衆国側に対して、共産主義的な平等を理想に掲げていたわけですからね。

もちろんその後、ソ連は崩壊します。しかし、勝利した資本主義がその後も繁栄を続けたわけではありませんでした。特に21世紀に入ってからその成長の陰りが増し、さらに純粋な市場主義ではない中国が伸張してきたことは、言うまでもありません。結局、東西冷戦のいずれの側も、完全だったとは言えないことが年月によって明らかにされつつあると思います。

それを踏まえて『シェイプ・オブ・ウォーター』の結末を振り返ると、米ソ両陣営が結局何も得をしなかったことに気づかされます。もちろん史実としてどちらかの手に水生の怪獣のデータが渡ったはずはないのですが、そこの整合性を持たせるならば、ソ連の目論見通り怪獣が殺されていてもよかったはずです。

むしろ結末よりも、その過程においてイライザたちが一切国の力を借りなかったことが象徴的なのかもしれません。彼女らは自分らが属する合衆国に肩入れすることもなく、私情からソ連を裏切ったホフステトラー博士の知恵にこそ助けられています。そしてそれが最終的に、イライザと怪獣(ついでにジャイルズ)の小さな幸せにも結びつきました。

 

あくまで個人の感想ではありますが、このことがデル・トロ監督から今後の市民へ向けたメッセージであるようにも思えます。

たしかにソ連の高官のように、大義に生きることは気分が良いでしょう。ストリックランドのように、地位の高さや豊かさを求めることで喜ぶ人がいるのも事実です。けれど、そうやって生きていける人はそう多くないのではないでしょうか。

無理にそういったものを求めず、等身大の幸せを求める……それは時に、怪獣のように醜い姿をしているかもしれないけれど、心には美しい愛がこもっているかもしれない!考えすぎかもしれませんが、どこかそんな現実離れした夢を、この映画から連想させられました。

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