映画「アザーフッド 私の人生」はNetflixで配信されている作品です。
成人した子供とその母親の関係をコミカルに描いた作品で、国は違えど子供と大人の関係というのはそこまで変わらないのだなと感じた作品でした。そして、ママ友3人の友情、それぞれが抱えている悩みや問題もよく描かれていました。
今回は「アザーフッド 私の人生」を視聴した感想や解説、考察を書いていきます。ネタバレも含みますのでご了承ください。
目次
映画「アザーフッド 私の人生」を観て学んだこと・感じたこと
・母と子、見る立場で共感できるポイントが違うかも
・長く続く友情はやっぱり素晴らしい!
・それぞれが問題を解決して前に進むハッピーエンド
映画「アザーフッド 私の人生」の作品情報
公開日 | 2019年8月2日 |
監督 | シンディ・チュパック |
脚本 | シンディ・チュパック マーク・アンドラス |
原作 | ウィリアム・サトクリフ『Whatever Makes You Happy』 |
出演者 | キャロル・ウォーカー(アンジェラ・バセット) ジリアン・リーバーマン(パトリシア・アークエット) ヘレン・ハルストン(フェリシティ・ハフマン) ダニエル・リーバーマン(ジェイク・ホフマン) ポール・ハルストン=マイヤーズ(ジェイク・レイシー) マット・ウォーカー(シンカ・ウォールズ) |
映画「アザーフッド 私の人生」のあらすじ・内容
キャロル、ジリアン、ヘレンの3人は仲が良く、母の日に3人で集まりますが、連絡を全くよこさない息子たちに不満を持ちます。
そんな3人は、ニューヨークに暮らす息子たちの元へ訪れる旅を決行することにします。
しかし、息子達と会うことで親と大人になっていく自分の子供たちの関係性、それぞれが想いや悩みを抱えていることがわかり、キャロル、ジリアン、ヘレンも自分たちの人生を見つめ直すことになります。
映画「アザーフッド 私の人生」ネタバレ感想
母と大人になった息子。母の日の出来事は万国共通
この映画では成人して家を出て行った息子とその母が描かれていますが、一人暮らしをした途端、連絡もよこさなくなり疎遠になってしまう家族の関係というのは、日本のみならず他の国でも同じようなものなんだなと思いました。
そして、母の日という特別な日であっても、連絡をしたりプレゼントをしない人がいるのも万国共通なんですね。筆者は20代なので、どちらかというと息子たち側に共感してしまうことが多かったです。母の日に何かをすることもあれば忘れてしまうこともあったり…忘れられた側である母親たちの心情をみると、母の日や誕生日など、1年に1回の特別な日には何かしなくてはダメだなと感じましたね。
1年に1度の特別な日だからといって高価なものをあげる必要はなく、ただ会いに行ったり食事をしたり、花を贈るだけでも十分嬉しいんだと思います。
急に子供達に会いに行く母たちの行動力!息子からすると嫌だろうな…
ノリで息子たちに会いに行こうとする母たちは楽しそうで、はたから見ている分には良かったです。
しかし、息子たちからすれば連絡もなく急に訪ねて来て「何日か泊まるから」と言われてしまったらと考えると絶対に嫌でしょうね…。とは言っても息子たちは寛容で優しく、そこまで反発せずに受け入れることから、心の中では母親のことを想って愛しているのが伝わります。
また、急に訪ねたことで気まずいシーンもいくつかありましたね。
キャロルがマットの家に訪れた時には女性物の下着を見つけてしまったり、ヘレンがポールの家を訪ねてみるとゲイ同士のシェアハウスであり、前から薄々気づいていたみたいですが、これをきっかけにカミングアウトをしたりするシーンもありました。
相手に何も伝えずに尋ねることはサプライズ的な要素がありますが、何も準備をしていない側からすると困ってしまうことも出てきてしまいますよね…。
【解説】ゲイのカミングアウトについては「確かに」と思った
ヘレンはポールに「正式にゲイであるとカミングアウトをされていない」と言い、それに対してポールは「わざわざカミングアウトするなんておかしいと思わないか。異性愛者が家族を集めて、私は異性愛者だとは言わないだろ。」と返します。これが正論すぎて納得してしまいました。
LGBTの中にはLGBTであることに悩んでいる人もいますし、カミングアウトする人、しない人、したいと思っていてもできない人など様々です。家族や友達に同性愛者だとカミングアウトすることができず、まるで騙しているように感じて罪悪感を抱えているというゲイの方のインタビュー記事を見たことがありますが、そもそも異性愛者の人が普段抱えていない罪悪感や辛さをなぜ感じているのだろう?と考えてみると、「恋愛や結婚は異性同士がするものだ」という固定観念が原因だと思います。
この固定観念はLGBT当事者では無い方が持っている考えが原因であり(LGBT当事者も持っているかもしれませんが)、全ての人が「恋愛や結婚は異性同士、同性同士でもするもの」という考えが当たり前になれば、異性愛者であるふりをして罪悪感を感じたり、悩みを抱えることも少なくなるのかなと思いました。
なので、LGBT当事者が「悩みを抱えながらカミングアウトしなければいけないこと」は、LGBT当事者ではない人たちの不寛容や無知が作り出したものなのかもしれません。ポールのようにゲイであることに悩んでいない(いなそう)な人もいれば、悩んでいる人もいるわけですからね。
そして、異性愛者と同性愛者のどちらが多いかと考えると異性愛者が多いとは思うのですが、多数派が正しくて一般的であるというわけではありません。14人に1人(7%)がLGBT当事者だったり、日本で一番多い苗字トップ4の佐藤・鈴木・高橋・田中を合わせた数(約5%)よりも、日本にいるLGBTの方の数が多いことを考えると、自分が知らないだけで身近に当事者の方はいるわけです。
こういった問題は全ての人が疑問をもって気づくことが大切なのだと感じました。
レズビアンカップルに精子提供をするポール
ポールは母に自分は子供を持つ予定がないこと、レズビアンカップルに精子を提供してその子供が既に産まれたことを伝えます。
ヘレンは「子供を持つ予定がないこと」よりも「レズビアンカップルに精子を提供してその子供が既に産まれたこと」にショックを受けていましたが、そこまでショックを受けることなの?と疑問に思ってしまいました。
自分の息子の遺伝子が受け継がれた子供というのは分かるのですが、男女カップル間での人工授精はよくありますし、精子を提供したというだけで直接育て上げるのはレズビアンカップルの二人なので、「遺伝子的な繋がりはあるけど他人の子供」という感覚が個人的には強かったです。子供を持った経験はないので、母になった経験がある方であれば理解できるのでしょうかね。
理解できる点があるとすれば、ヘレンは孫を楽しみにしていましたし、レズビアンカップルに精子提供をしたのも事後報告、ゲイであることを父に告げるも自分に告げていなかったという積み重ねがあって、あんなにショックを受けたのかなとも思いました。
しかし、その後ヘレンはレズビアンカップルを尾行して接触することに成功します。
そして理解を得て、その後は家族ぐるみの付き合いをすることができるようになったので、ハッピーな結末を迎えることができたのは良かったですね。子供にとっても、多くの人と関わって育つことはいいことですし、今後も関係は続くのでしょう。
いくつになっても親と子の関係は変わらない。そして互いに成長する
親にとっても子供にとっても親子の関係は変わらず、子供が成人を迎えたとしてもその関係は変わりません。
しかし、いつの間にか子供は身体だけでなく心や考え方も成長していて、母親自身も子供たちに気付かされ成長していきます。そしてこの映画を見ていると、ポールの告白を受けて泣きじゃくるヘレンや我を忘れて踊るキャロルなど、母親たちが逆に子供っぽくなり、若さを取り戻していく様子も描かれています。
ママ友3人の友情を描いた作品であると同時に、親が子離れしていく映画でもあるんですよね。そして、ジリアンとの会話の中でダニエルはエリンと話をすることを決め、エリンを追いかけます。親子が向き合うことで、互いに成長していく展開は良かったですね。
物語の終盤、キャロルに宛てたマットの手紙が感動的
この映画はキャロル、ジリアン、ヘレン3人のやり取りが面白く、フフッとなるシーンが多いコミカルな映画でもあるのですが、物語的には大きな起伏があるわけでもなく、3人の母とその子供たちの関係が淡々と描かれています。
しかし、物語の終盤のキャロルに宛てた手紙のシーンがあることで、映画が粋で感動的な作品に仕上がっています。
手紙では「母について知っている10のこと」を書き、アヤメ(アイリス)の花と共に贈ります。キャロルは「母について知っている10のこと」を一つ一つ読むたびに笑顔になり、涙を浮かべます。このシーンが個人的に一番好きなシーンでした。
手紙って直接口で伝えるのとは別の良さがありますよね。手紙を書く側は常に相手を思いながら書きますし、もらった手紙をふとした時に読んでみると、「あんなことがあったな」と手紙をもらった時のことを思い返すことができて過去の思い出に浸ることができます。
キャロルは亡くなった夫との思い出の品や家を捨て、新しい人生を踏み出しましたが、辛くなった時はこの手紙を読んで元気をもらうことでしょう。
喧嘩をしても簡単に友情は壊れない
3人は喧嘩をしてしまいヘレンは電車で帰ることとなります。仲直りすることもなく舞台は1年後に変わり、ダニエルとエリンの結婚式でジリアンとヘレンは再会することになります。
そこではまだジリアンがヘレンに怒っていることを伝えますが、顔を見るとそこまで怒っているようには感じませんでした。そして、そこにキャロルもやってきて3人は再会し、いつものようなノリで3人は会話を始めます。
もし本当にジリアンがヘレンのことが嫌なのであれば、愛する息子の結婚式に呼ばなかったのではないでしょうか。だからといってこの1年間の空白期間が必要なかったかというと、そうではありません。
3人が互いに離れることによってお互いのことを見つめ直し、腹立つ部分もあるけれど一緒にいて楽しいと3人が感じ、ラストではいつものような関係に戻れたのでしょう。仲が良いからといって喧嘩が起きないわけではないですからね。
ヘレンが言ったように、ヘレンが持ちかけたニューヨーク旅によって子供との関係や様々な悩みが好転しました。ダニエルとエリンの結婚もヘレンがきっかけと言っても過言ではないのです。
【評価】大人の友情、子供との関係、新しい人生を描いた良作
映画「アザーフッド 私の人生」は笑える要素が所々にあるので、どんな方でも気軽に楽しめる作品です。
そして、見る人や自分の立場・経験によって、共感できるポイントがかなり違ってくると思います。家庭を持っていたり子供がいる方はキャロル、ジリアン、ヘレン3人の母親たちに共感できるでしょう。
筆者のように20代の方や結婚、子供がいない方はダニエル、ポール、マットに共感できるかと思います。特に母の日に何もしていない方は、何もされなかった母親がどんなことを感じているのかが分かるので、次の母の日には何かしてあげようと感じることでしょう。
結末はハッピーエンドを迎え、新しい人生を歩む姿を見れるので個人的に好きな作品でした。未視聴の方はぜひNetflixで視聴してみてください。