映画「見えない目撃者」は視力を失った女性が、少ない手掛かりから連続殺人犯を捕まえるスリラー作品です。
映画として気になった部分やツッコミどころは多少あったのですが、ハラハラドキドキする展開、吉岡里帆など出演者の演技力の高さなど、ここまでレベルの高い邦画は久々見たなという感想を持ちました。
個人的にかなりおすすめの映画「見えない目撃者」のネタバレ感想や解説、考察を書いていきます。
目次
映画「見えない目撃者」を観て学んだこと・感じたこと
・犯人のジェイソンばりの怪演が恐ろしい
・吉岡里帆の盲目の演技、人を助けたいと感じさせる演技力の高さ
・死亡フラグを見事に回収!なぜか単独行動してしまう登場人物
映画「見えない目撃者」の作品情報
公開日 | 2019年9月20日 |
監督 | 森淳一 |
脚本 | 藤井清美 森淳一 |
原案 | 映画『ブラインド』 |
出演者 | 浜中なつめ(吉岡里帆) 国崎春馬(高杉真宙) 吉野直樹(大倉孝二) 日下部翔(浅香航大) 木村祐一(田口トモロヲ) |
映画「見えない目撃者」のあらすじ・内容

警察官として将来を有望視されていた浜中なつめは、交通事故によって同乗していた弟を死なせてしまい、自らは失明してしまいます。なつめは警察官を依願退職し、盲導犬のパルと共に生活をしています。
そんなある時、なつめは帰り道で車の接触事故に遭遇します。車は急いでその場を離れますが、車の中からかすかに助けを呼ぶ女性の声を聞き、警察に相談するも取り合ってくれませんでした。
しかし、なつめの鋭い推理・洞察力によって犯人に徐々に近づき、犠牲者も増えていく中で警察と協力をして犯人を追い詰めていきます…。
映画「見えない目撃者」のネタバレ感想
久々に質の高い邦画を見た!原案は韓国映画の『ブラインド』

映画を見終わった後は「邦画でここまで面白いの作品は久々見た!」と思ったのですが、調べてみると韓国映画の「ブラインド」という映画が原案になっているみたいですね。
「ブラインド」のあらすじを見てみるとストーリーが全く同じというわけではないようで、引き逃げ事故に居合わせた盲目の女性が命を狙われ、女子大生失踪事件を解決していく内容になっていました。
主人公が盲目の女性、目撃者が二人いる、女性が狙われている事件(見えない目撃者では女子高生がターゲット)という部分は共通しているものの、細部の展開は違っているようなので、きっと「ブラインド」を観た方でも楽しめるのではないでしょうか。
逆に今作が面白かったので、原案の作品も見てみたくなりました!
吉岡里帆の目の見えない演技がスゴイ

映画「パラレルワールド・ラブストーリー」などに出演する吉岡里帆さんですが、今作では目の見えないキャラという難しい役柄だったのにも関わらず、めちゃくちゃ演技が上手で、本当に目が見えないんじゃないかと錯覚させる程の演技力でした。
序盤では、自分の運転する事故で弟を失くしてしまい自分は失明。そして警察官として働くことを諦めるという、人生の絶望の淵に立たされ、心に闇を抱えた暗い雰囲気を感じさせます。
中盤から終盤にかけては「事件を解決して女子高生を救いたい」という強い想いが感じられました。顔も分からない見ず知らずの人間の命を、何が何でも救いたいという気持ちが感じられ、まさに警察官のお手本のような人物でしたね。
また、盲目ということで、手を伸ばして指で物を探りながら自分のいる場所を把握したりする必要がありますが、その演技についても違和感を感じることはありませんでした。
こちらは吉岡里帆さんが実際は目が見えることを知っているので、手の動作や歩幅など、目の見える人と変わらない動きをしてしまうと「実際は見えている」という演技をしてる感が前面に出てしまい、映画の良さや面白さが損なわれてしまうと思うのですが、それを感じさせることはありませんでした。
駅のホームで犯人から逃げるシーンでは、後ろから犯人が迫ってきているのが見えていました。それだけでもかなりの恐怖なのですが、なつめは犯人の姿を見ることができないので、それ以上の恐怖を感じているハズです。その恐怖感が吉岡里帆さんの演技から伝わってくるような感覚でしたね。それくらい上手くて驚きました。
【解説】犯人の正体が日下部というのは分かりやすいかも?でもそこからが面白い

女子高生連続殺人事件の犯人は日下部でしたが、犯人については予想しやすかったかもしれません。登場人物がそこまで多くなかったので、日下部でなくても警察の中に犯人がいるんじゃ?と予想した方は多いのではないでしょうか。
個人的には、木村が署内で食事をとりシュウマイを後輩(日下部)にあげるシーンのくだりが長かったので少し怪しいなと思いましたし、目撃者が二人いることをわざわざ話す必要がないのにも関わらずあのシーンを描き、その直後に春馬が犯人に車で襲われるという展開だったので、犯人が日下部であることは分かりやすかったですね。
しかし、日下部の顔がしっかりと描かれる描写が少なかったので、終盤まで犯人がどんな顔だったけ?と思いながら見進めることができたので、犯人が序盤で分かっても問題なく楽しめます。
また、レビューサイトをみてみると「犯人が分かりやすすぎる!(という理由で低評価)」なんてレビューもちらほらありましたが、この映画は犯人の解明や事件の推理に重きを置いている映画ではなく、連続殺人事件を起こした殺人鬼との戦いをメインに描いていると思います。
なのでこの映画は事件の謎を解いていくミステリー映画ではなく、公式の紹介にあるようなスリラー映画(観客の不安や緊張感を煽っていく映画)なので、犯人が分かった後でもしつこく迫り来る犯人に息を呑み、恐怖を感じる映画なのです。
【解説】死亡フラグ回収しすぎ!木村と吉野の単独行動を止めてくれ!!

先ほど吉岡里帆さんの演技について触れましたが、他の出演者の方々も演技が上手でした。
特に好きだったキャラが田口トモロヲさん演じる木村です。木村は定年間近ということもあってか、始めはそこまで事件についてクビを突っ込むようなことはしませんでしたが、なつめの被害者を救いたいという熱意もあり、中盤から正義の警察官としての情熱を取り戻したかのような人物に変化しているように感じられました。
そして、なつめから警察官の中に犯人がいることや調書を管理していたのが日下部であることから、犯人が日下部であることを確信します。そこで木村は単独行動にでるんですよね。
木村は一人で日下部の自宅を訪れて車を調べようとしますが、後ろから日下部が登場します。もうここからが映画のお決まり展開というか、結末が想像できてしまうんですよね。警察官が一人で犯人と戦おうとすれば、大体やられてしまうのが目に見えていますから…。
しかもそこで木村は「定年後は引退を考えていたけど、悪と戦う警察官として仕事に復帰するんだ」的なことを言ってしまいます。完全な死亡フラグです。「オレ、戦争が終わったら結婚するんだ」と発言する人物が絶対に死んでしまうようなあれですね。
そして、想像した通り木村は日下部に刺されて死んでしまいます。親身になって捜査をしてくれる警察官の鏡のような人物が死んでしまうのは、かなりショックで悲しいシーンでした。
あの時点で日下部が限りなく黒に近かったので、最低でも吉野を連れていけばなんとかなった気もするんですけどね…。
また、犯人が日下部であることが確実に分かり、なつめと春馬、吉野は日下部がいるであろう洋館を訪れます。
そこでも「何で3人だけで行くんだよ!」とツッコミを入れたくなるシーンでしたし、無線で応援を要請して待機してくれと言われているのにもかかわらず、吉野は「警察官が正義の味方ってことを証明してやる」的なことを言って一人で洋館に入っていきます。
これもまた結末は分かってしまうような感じでしたが、吉野はあっさりやられてしまいます。ここも吉野だけでなく、春馬と一緒に行けば2VS1に持ち込めるわけですからね…。1人で立ち向かってやられてしまうという最悪な展開を迎えます。
とは言っても、立ち向かう人が次々に殺されてしまう描写は日下部の狂人ぷりを描くには充分すぎるくらいでした。この後、春馬も殺されてしまうんじゃという恐怖を感じさせてくれる恐ろしいシーンでしたね。
盲導犬のパルが可愛い!パルが生きてたのは救い

なつめのサポートをしてくれているパルですが、地下鉄で日下部から襲われた際には吠えたり噛み付いたりして、なつめを守ろうとします。
そこでパルはナイフで切られてしまい倒れてしまいます。このシーンはつらいものがありましたね。しかし、パルが稼いだ数秒のおかげで駅員がかけつけ、なつめは助かります。
病院に運ばれたパルは無事で、映画のラストではなつめのをサポートするパルの姿が映し出されています。パルが生きていたのはこの映画の中で数少ない救いでした。
親や大人から見向きもされない女子高生、救様など現実的

「見えない目撃者」で被害者となる女子高生は、家出をしても親に通報されることもない女子高生たちでした。
こういった親や大人たちから見向きもされないような子供たちが被害にあってしまうのは現実でもありますよね。家出をしたままどこに行ったか分からないなど、捜索願を出すようなケースもありますが、居なくなったことすら気づかないケースもあるのかもしれません。
年齢を偽って風俗店で働くような人たちもいるので、殺人事件に巻き込まれるまではいかなくても、こういった負の部分は実在していることです。
そして、未成年でまだまだ子供ということで、ネットの中で都市伝説となっている「救様(きゅう様)」を信じてしまうというのもありえそうな内容でした。
警察官であっても大人は「救様」を誰一人として知りませんでしたし、学生の中だけで話題になっているモノってよくありますよね。学生の間だけで流行っている世界は大人には知り得ない部分ですから、事件に巻き込まれてしまうということも考えられますね。
犯人役・日下部翔を演じた浅香航大の怪演がスゴイ!
映画「南瓜とマヨネーズ」などに出演する浅香航大さんですが、人を殺すことに全く躊躇しない様子や、用意周到でサイコパス的な演技がとても上手でした。
被害者が目や鼻、口、耳といった身体のパーツが切り取られてることから、儀式殺人だと思われていましたが、儀式殺人でありながらも死体を見たいという気持ちからただ人を殺すことに快感を覚えるような人物でしたね。
警察官になったのも「死体を見る」という理由でしたし、警察官であれば捜索願の出されていない人を狙うことができるので、ただ犯人がサイコパスだったというよりも、警察官がサイコパスな犯人だったこの展開はかなり怖いものがありました。
ラストの洋館での無音シーンは緊張感MAX

物語のラストでは、なつめが残された一人を助け出すため洋館に残ります。
なつめと日下部戦いはクライマックス!音を立てないように日下部は靴を脱ぎ、そろりそろりとなつめに近づいてきますが、なつめが弟から貰った音のなるストラップ(?)を床に起いてあることに気づかず、日下部はストラップを踏み音がなります。
その直後、なつめは拳銃を発砲して日下部を殺すことに成功します。この1,2分間のシーンが全くの無音になるので、劇場内にいた全ての人が息を吸うのも唾を飲み込むのも止めて居た感じはありました。このシーンの緊張感といったらすごいものがありました。
また、日下部は防弾チョッキを着ていましたから、銃弾が顔面に当たらなければ殺すことはできません。目が見えていても的に当てるのは難しいですが、しっかりとなつめは銃弾を当てます。さすが、将来を有望視されていた警察官なだけありましたね。
R15指定なだけあって過激でグロテスクな描写もあるけど邦画としては最高レベル

R15指定な映画なだけあって、鼻や手が切断された死体が少し映ったりします。
個人的にはそこまでグロテスクだなとは感じませんでしたが、あまりグロ耐性がない方は少し苦手な映画かもしれませんね。ただ、グロテスクで人気なホラー映画に「SAW/ソウ」がありますが、比較してみると「SAW」の方が過激だったので、「SWA」を見れた方であれば問題ないかと思います。
事件や犯人の追求、犯人から逃げるハラハラシーンは素晴らしいので是非見てみてください!