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『インクレディブル・ファミリー』のネタバレ感想・解説・考察!ヒーローと家事育児の両立、高い完成度を誇る続編

映画『インクレディブル・ファミリー』のあらすじ・内容

映画『インクレディブル・ファミリー』は、2004年に公開された『Mr.インクレディブル』の続編となるアニメーション作品です。

ヒーローが持つ力と人間社会との摩擦を背景に、家事や育児といったドメスティックな問題と、ヒーローが立場を回復することの是非を並行して描いた、完成度の高い作品になっています。

今回は映画『インクレディブル・ファミリー』の詳しい感想や解説、考察を紹介していきます。なお、ネタバレを含んでいるのでご注意ください。

映画『インクレディブル・ファミリー』を観て学んだこと・感じたこと

・『Mr.インクレディブル』の続編、作品単体としても面白いヒーロー映画
・単なるヒーローアニメではなく、社会的な風刺が詰まった作品
・吹き替えによる声優陣の演技が聞き逃せない

映画『インクレディブル・ファミリー』の作品情報

公開日2018年8月1日
監督ブラッド・バード
脚本ブラッド・バード
出演者Mr.インクレディブル/ボブ・パー(クレイグ・T・ネルソン/三浦友和)
イラスティガール/ヘレン・パー(ホリー・ハンター/黒木瞳)
ヴァイオレット・パー(サラ・ヴォーウェル/綾瀬はるか)
ダッシュ・パー(ハック・ミルナー/山崎智史)
ジャック(イーライ・フシール)
フロゾン/ルシアス・ベスト(サミュエル・L・ジャクソン/斎藤志郎)

映画『インクレディブル・ファミリー』のあらすじ・内容

映画『インクレディブル・ファミリー』のあらすじ・内容

自分だけがヒーローになろうとしたシンドロームの陰謀を阻止してから3カ月後。団らんの最中に銀行強盗アンダーマイナーと遭遇したボブたち一家は、持ち前のパワーを発揮して対向しますが、結果として街に甚大な被害を出してしまいます。

ヒーローとしての活動に悩む一家に、通信会社デブテックを仕切るデイヴァー兄妹が近づきます。彼らはヒーローの活躍を世間に正しく広め、社会的地位を回復させようとボブたちに提案。悩んだ末、妻のヘレンがイラスティガールとして活動に参加し、ボブは家事や育児を担当することになりました。

デイヴァー兄妹の協力もあって、イラスティガールは大きな被害を出すことなく、見事に事件を解決。ヒーローに対する世間の目が少しずつ変わり始めていきます。しかし、発生している事件の裏にはスクリーンスレイヴァーと名乗る存在が暗躍しているのでした。

映画『インクレディブル・ファミリー』のネタバレ感想

前作『Mr.インクレディブル』を簡単におさらい

前作『Mr.インクレディブル』を簡単におさらい

原題が「Incredibles2」であることからもわかるように、映画『インクレディブル・ファミリー』は、前作『Mr.インクレディブル』の続編として作成されたアニメーション映画です。前作では引退したヒーローの哀愁を描きながらも、家族の理解を得てヒーローとしての矜持を取り戻していく展開が絶賛されました。続編では、ヒーロー活動を行っていくことを決めた上で、夫婦で力を合わせてヒーロー活動、家事育児をそれぞれがんばろう、という話になっています。

『インクレディブル・ファミリー』は前作の終幕直後から始まるため、『Mr.インクレディブル』についても少し触れておきましょう。

前作『Mr.インクレディブル』では、ヒーローが社会では危険な存在であるとみなされており、「スーパーヒーロー保護プログラム」と呼ばれる政策によってヒーロー活動が禁止されていました。かつてインクレディブルとして活躍していたボブも保険会社の社員として勤務。日々の仕事をつまらないと感じながらも、かつての仲間であるフロゾンと人助けを行うことで自分を慰めています。

ヒーロー活動ができないというボブの葛藤や諦めには何とも言いがたい哀愁が漂っており、後半における怒濤の展開に対する引きとして印象的です。

 

また、長女のヴァイオレットが能力のせいで内向的な性格になり、長男のダッシュは能力を発揮できないストレスを溜めこむなど、ヒーローとしての制約が家庭にも不穏な空気をもたらしていました。

そんな時、インクレディブルとしてこっそり活動していたボブの前に現れたのが、かつてヒーロー活動中に冷たくあしらってしまった少年、シンドロームでした。ヒーロー狩りを行って自分だけがただ一人のヒーローになろうと画策しているシンドローム。彼の陰謀を食い止めようとするインクレディブルはいったん囚われるものの、イラスティガールやヴァイオレット、ダッシュ、そして次男ジャックの協力を得て、シンドロームを倒しました。

家族とともにヒーローとしてのプライドを取り戻したボブ。家族団らんの時間を過ごしているところ、地下から突然現れた銀行強盗にヒーローとして立ち向かおうとするシーンで、物語は終了します。

ヒーロー活動と育児の両立を正面から描いた良作

ヒーロー活動と育児の両立を正面から描いた良作

『インクレディブル・ファミリー』は前作の最後に登場した銀行強盗、アンダーマイナーを止めようとするシーンから始まります。なお、アンダーマイナーはその後まったく出てくることはないため、前作を見ていなくても十分に楽しむことが可能です。

もちろん、前作からの流れを知っておくと、本作の理解はよりスムーズになります。たとえば、前作におけるトニーとヴァイオレットの関係を知っていると、なぜトニーが記憶を消され、ヴァイオレットがあれほど落ち込んでいるのかを深く理解することができます。

 

また、ヒーロー活動を禁止する政策は今作でも健在です。そのため、どれだけヒーローが大きな力を持っていても、個人や集団でできることには限界があるということがボブたちに重くのしかかっています。結果として、アンダーマイナーを捉えることができず、街への被害を防げなかったインクレディブルたちは、まるで悪人のような扱いを受けることになりました。

そんなボブたちに救いの手を差し伸べるのが、大手通信会社デブテックを仕切るデイヴァー兄妹です。兄のウィンストンは父親も憧れたスーパーヒーローの大ファン。彼は妹のイヴリンが作成した通信カメラの技術を利用してヒーローの活躍を中継し、ヒーローの必要性を社会に認めさせようと提案します。最初の活動にはパワー重視のインクレディブルではなく、能力に応用が利くイラスティガールを指名。彼女は見事に暴走列車の事件を解決しながら、その様子をカメラにおさめることに成功しました。しかし、暴走した列車にはスクリーンスレイヴァーと名乗る存在が暗躍しているらしく、一筋縄ではいかない展開を想像させます。

 

一方、ヴァイオレット、ダッシュ、ジャックの子守りに奔走するボブは、家事や育児が思いのほか大変であることを理解します。思春期の悩みから反発してしまうヴァイオレットの扱いや、ダッシュへの勉強の教え方に苦心するボブ。さらには赤ん坊のジャックがいくつもの能力を制御できずに使い続けるため、ボブは慢性的な寝不足に陥ってしまうのです。

夫であるボブが家事育児をすることに、今更目新しく感じる部分はないかもしれません。しかし、前作とは対照的に、ボブとヘレンの立ち位置を変更する働きを生み出しています。結果としてヒーローとしてのイラスティガールの活躍を表現し、またインクレディブルの良き夫としての一面を描くことに成功しているといえるでしょう。

結果としてインクレディブルの活躍が少なくなったという点は否めません。しかし、邦題に「ファミリー」とあるように、今回は家族全員の活躍に主眼が置かれていると考えると、むしろ当然の帰結ではないでしょうか。家事育児とヒーローの両立を高いバランスで達成した本作は、まさに良質な作品のひとつです。

今回大活躍するのはイラスティガール・ヘレン

今回大活躍するのはイラスティガール・ヘレン

今回、ヒーローとして素晴らしいアクションシーンを見せてくれるのが、イラスティガールであるヘレンです。イラスティガールの能力は体を自在に伸縮できること。自分の体をゴムのように伸縮させるだけではなく、体をパラシュートのように広げて空を飛ぶことも可能です。冒頭、腕や体を伸ばして高層ビルの合間をすり抜けていくシーンや、暴走した列車を止めようとするシーンは非常にスリリングかつスピーディで、見応えがあります。しかも、列車を止めた様子を市民から大絶賛されたヘレンは一躍時の人になり、かつてのヒーローとしての栄光を取り戻すことに成功しました。

そんなイラスティガールことヘレンですが、当初は家事育児をボブに任せることが心配なあまり、ヒーロー活動を行うことに消極的でした。しかし、仕事を終えた後にボブへ連絡をとったときには「暴走列車を止めた!もう最高!」とはしゃぐなど、ヒーローとして活躍できたことが嬉しい様子を見せます。

さらにヘレンは、主に肉代言語で語るボブとは異なり、理想的かつ現実的な思考を並行して持ち合わせています。スクリーンスレイヴァーの様子を冷静に分析しながら、どうすれば相手を捉えることができるかについて、科学者であるイヴリンと同じレベルで討論してみせるヘレン。いわゆる頭脳派ヒーローとしての一面がかいま見えるシーンだといえます。

 

一方、こうした活躍を見せても天狗にならないところが、ヘレンに好感が持てる点だといえます。彼女はヒーローとして活躍できたことや、自分が有名になってヒーローの地位を取り戻すことに肯定的です。

しかし、いつでも頭の中を占めているのは家族のことなのです。ボブへ電話して喜びを伝える前にも、散々確認したのは家の様子と子どもたちのことでした。いったんヒーローとして活動を始めたヘレンが、再び子どもたちと出会うのはずっと後のことです。出会って何よりも最初に子どもたちを抱きしめるシーンでは、母親の優しさや家族への思いやりを感じずにはいられません。

良きパパとしてがんばるボブの姿にも注目

良きパパとしてがんばるボブの姿にも注目

もちろんヘレンだけではなく、良きパパとして奮闘するボブの姿にも注目です。ヘレンが活躍して世間がヒーロー活動を認めるようになれば、いずれ自身も復帰できると少し打算的な期待も抱いているボブ。ヘレンが安心してヒーロー活動に専念できるよう、彼は率先して家事育児を担当します。

しかし、ボブの思惑とは裏腹に、ヘレンの代わりを務めることは非常に大変なことでした。ダッシュの宿題をうまく教えられないだけではなく、ヴァイオレットの突然の反発には手を焼く始末です。

ヴァイオレットの反発には、彼女が思いを寄せている学校の先輩、トニーの存在がありました。物語の序盤、ヴァイオレットはトニーと初めてのデートに行くはずでしたが、アンダーマイナーの襲撃時にヴァイオレットの正体を見てしまったトニーは、ボブの依頼で彼やヘレンの昔なじみであるリックに記憶を消去されてしまいます。しかも、トニーとヴァイオレットのつながりを知らないリックは、ヴァイオレットの正体だけではなく、彼女に関する記憶をすべて消去してしまうことに。トニーの記憶消去にボブも間接的に関わっていたことを知ったヴァイオレットは、ますますボブに反発します。

 

一方、ボブは次男のジャックの育児をしていくなかで、彼がいくつもの能力を無制限に出せることを知って喜びます。ところが、機嫌を損ねるとすぐに能力を出してしまうジャックを宥め続けることができず、ついには寝不足に陥ってしまいます。

当然のことかもしれませんが、ここで家事や育児を放棄せず、自分なりにきちんと役目を全うしようとするのがボブの魅力です。ダッシュに対しては、寝不足であることをこらえながら彼の宿題を学習しなおし、ダッシュへわかりやすく教えてあげることに成功します。また、ヴァイオレットに対しては父親としての行動が空回りしてしまったことを認め、素直に謝る謙虚さを見せていました。長らく家のことをヘレンに任せっぱなしだったボブでしたが、家族に対する思いやりの深さは彼女と同じです。

なお、ジャックの子守りに対してのみ、最後はヒーロースーツのデザイナーであるエドナへ協力を仰いでいるため、独力で家事育児ができていないと非難されるかもしれません。しかし、ヒーローとして素晴らしい力を持っているボブも、父親としては普通の人間です。17種類もの能力を気分のままに出そうとする赤ん坊を、自分の力だけでどうにかしようとするのは無理があるといえるでしょう。むしろ、素直に他人の協力を仰ぐという判断からは、孤独に子育てをする必要はないのだというメッセージ性を感じ取ることができます。

 

ちなみに、トニーの記憶を消去したリックは、スーパーヒーロー保護プログラムのもとでボブたち一家を影ながら保護していた人物であり、前作からも登場しています。記憶の消去やヒーロー活動によって生じた損害賠償への対応を行うリック、その顔つきはまさにトミーリー=ジョーンズそのものです。

もちろん、これはアメリカのSFコメディの傑作『メン・イン・ブラック』に出てくるキャラクター、Kのオマージュであることは疑いようがありません。吹き替えの声優も、前作で担当していた小林清志に代わり、今作ではトミーリー=ジョーンズの声を充てることが多い菅生隆之が担当しています。おそらく多くの人が、某宇宙人が登場する缶コーヒーのCMを思い出すことでしょう。ぜひ吹き替えによる声も聞いてみてください。

【解説】ヒーローもののお約束!ガジェットが凄い!

【解説】ヒーローもののお約束!ガジェットが凄い!

特撮ヒーローに巨大ロボットやスーパーバイクが搭乗するように、ヒーローには凄い科学を駆使したガジェットがつきものです。今作『インクレディブル・ファミリー』にも、2つのガジェットが搭乗します。

そのひとつが、イラスティガールが乗っている電動バイク。彼女のためにイヴリンが発明したこのバイクを駆って、イラスティガールは暴走列車を止めるために街をスピーディに駆け巡ります。しかも前後に分離できるため、イラスティガールの伸縮能力との相性が抜群だという特徴も。道路やトンネル、はたまた列車の上を自在に動き回るアクションシーンは爽快感でいっぱいです。わりと序盤で大破してしまうのがもったいないくらいに、彼女のバイクシーンは見応えのある場面となっています。

 

また、今作ではインクレディブルが搭乗していたというスーパーカー、インクレディビールも披露されます。音声入力による自動走行、陸上だけではなく水上走行も可能であり、さらにはロケットの発射や座席射出機能も搭載。これぞヒーローが乗るスーパーカーと言わんばかりの機能をわかりやすく発揮します。

なお、ジェームズ・ボンドの007シリーズを彷彿とさせる音楽からもわかるように、インクレディビールが同シリーズに登場するボンドカーに影響されていることは、疑いようがありません。

【解説・考察】異能持ちが社会に溶け込むことの労苦

【解説・考察】異能持ちが社会に溶け込むことの労苦

『Mr.インクレディブル』から見られる、強すぎる力が社会に馴染まないという設定。ヒーローの行動が社会システムの一部として広く受容されたり、逆に拒絶されたりする展開は、日本でもさまざまな作品で、さまざまに変容した形でもって見ることができます。

とある戦隊シリーズ作品では、悪の組織に襲われケガをした一般人が、自分たちが襲われたのは戦隊が近くで戦っていたからだとして、ヒーローを迫害し始めるシーンがあります。また、2015年から2016年にかけて放送されたアニメーション作品『コンクリート・レボルティオ〜超人幻想〜』では、道を踏み外そうとする超人を保護することを目的とした「超人課」のメンバーの活動を描いていました。

週刊少年ジャンプの連載作品『僕のヒーローアカデミア』では、異能でもって悪事を働くヴィランに対抗するため、能力や資質を持った者をヒーローに育て上げる機関が存在。ヒーローが社会システムの一部として機能している様子が見られます。

 

インクレディブルシリーズもまた、かつて受容されたヒーローが社会から爪弾きにされているものとして、ヒーローと社会との関係を描いています。今作でも冒頭でインクレディブルたちが責められ、家族間で再び悩むシーンには、前作と同じようにヒーローに対する諦観めいた感情を想起させずにはいられません。

このように、ヒーローと社会との関係がテーマであることの背景には、ヒーローという存在がアウトサイダーの側面を持っていることが伺えます。悪というわかりやすい対立軸があるうちは、ヒーローはヒーローとして社会に必要とされ、持て囃されるものです。しかし、対立軸がいなくなるとヒーローは社会での存在意義を失うことになります。残るのは一般人と異なり危険な力を持っている存在だ、という認識だけです。

一般人との違いを感じ、距離が広がることを恐れたため、前作でヴァイオレットは能力なんていらないと言い、ヘレンはダッシュが能力を使って運動会に出場するのを止めようとしたのでしょう。強すぎる能力の存在は、やがて一般人との差別や不公平感を生み出します。

 

今作『インクレディブル・ファミリー』において、アウトサイダーとしてのヒーローの労苦が以前ほど誇張されることはありません。しかし、間接的にはそのジレンマが滲み出ているのではないでしょうか。たとえばトニーがヴァイオレットのことを忘れてしまったシーンでは、ヒーローとしての能力さえなければこんなことにならなかったのだろうと思うと、非常に切ないものがあります。

前作と同様に、ヒーローとしての活動における葛藤を深掘りすれば、本作の魅力はさらに深まったといえるでしょう。しかし、実は本作は別の意味で興味深い終わり方をすることになるのです。

【考察】賛否両論の安直なラストにこそ、この物語の新たな本質が潜んでいる

【考察】賛否両論の安直なラストにこそ、この物語の新たな本質が潜んでいる

今作『インクレディブル・ファミリー』では、最終的にヒーローが再び社会に認められることになります。スクリーンスレイヴァーの正体を突き止め、その陰謀を阻止し、要人を乗せた大型船が街に衝突するのを防いだインクレディブルたちの功績は、高く評価されることに。その結果、法律で再びヒーロー活動が認められることになります。

ハッピーエンドには違いないのですが、どうにも安直な結末であるという感じが拭えません。あれだけ前作からヒーローと社会との摩擦を描いていたのに、こんなに簡単に摩擦が解消されて良いのだろうかと、拍子抜けしてしまうのではないでしょうか。高い完成度を誇る本作においても、この結末に関しては賛成もしくは反対、両方の意見が見られます。しかし、この一見安直にも見える結末は、作中で投げられたある問いかけと密接にリンクしているように感じられるのです。それは、悪役となったスクリーンスレイヴァーの主張です。

スクリーンスレイヴァーは、テレビ中継されるヒーローという構図に対して、次のように語っています。

観客はテレビの前でお菓子を食べながら、ヒーローが活躍する様子を疑似体験しているだけである。あらゆる体験をスクリーン越しに眺めているだけであり、決して自らつらいことをしようとはしない。ヒーローに守って欲しいという願望は観客を腰抜けにする。誰かの保護で生きているだけ、ヒーローというシステムが普通の人から魂を奪っている。

つまり、ヒーローという絶対的な存在に依存するだけで、自分からは何もせずにいることが、だんだん人間を弱くしていくという意味です。

スクリーンスレイヴァーの主張は、インクレディブルたちの存在理由と真っ向から対立するものです。単純に力でねじ伏せることもできるかもしれませんが、自分たちの存在意義を示すためには、やはりヒーローとしての主張でもって論破するべきでしょう。しかし、作中ではスクリーンスレイヴァーの主張に対する反論はなく、ヒーローたちは簡単に社会復帰してしまいます。

この、社会がヒーローを容易に受け入れたという構図こそ、スクリーンスレイヴァーの危惧していた点ではないでしょうか。誰もヒーローの存在を疑わず、賞賛する社会。それはインクレディブル自身が臨んでいた展開であると同時に、社会があらゆる問題をヒーローに丸投げしてしまうという構図を浮かび上がらせます。この意味において、『インクレディブル・ファミリー』は決してハッピーエンドの物語ではありません。むしろ、スクリーンスレイヴァーが危惧していた構図に陥っている状況を、登場人物たちが誰も気がついていないという点において、非常に怖い物語となっているのではないでしょうか。

【考察】さらなる続編は作られるのか?

【考察】さらなる続編は作られるのか?

スクリーンスレイヴァーの主張がラストで現実のものになったという見方をとるならば、インクレディブルシリーズをこのまま終わらせるのは、非常にもったいないと感じます。前作で社会から拒否されたヒーローは、自分たちの存在意義をもう一度取り戻したいと願い、今作でついにその願いが叶うことになりました。しかし、ヒーローに守られるだけの社会は本当に正しいのかどうか、そのような新たなテーマを設定した続編が出て欲しいと願わずにはいられません。

続編ができそうなネタは、意外にもたくさん転がっているように感じられます。たとえばヴァイオレットとトニーの恋の行方は、異能を持った人間が普通の人間と一緒に幸せになれるのかという、ある意味で普遍的なテーマを描写することにつながるでしょう。ボブとヘレンが同じヒーロー同士で夫婦になっただけに、その対比や結末を見てみたい気がします。

また、成長したジャックが17種類もの能力を自在に使い分ける姿というのも、ヒーローものとして十分な魅力を持っているように感じられます。何よりも、冒頭で登場した謎の悪役、アンダーマイナーがまだ捕まっていません!

その冗談はさておき、商業的には大成功をおさめたと思われる『インクレディブル・ファミリー』。ぜひ前作とセットで見ることをおすすめします。

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