『犯罪都市』は2018年に公開された、韓国のクライムアクション映画です。本作は韓国のゾンビ映画『新感染 ファイナル・エクスプレス』で話題となった、マ・ドンソクが主演を務めています。
実話の事件を基に描かれた本作は、銃を用いない体当たり的なアクションとエンターテイメント性の高さで韓国歴代3位の大ヒット作となりました。
そんな韓国映画『犯罪都市』ですが、この記事では本作の個人的な感想や解説を書いていきます。ネタバレを含む内容となっていますので、映画を未視聴の方はご注意下さい。
目次
映画『犯罪都市』を見て学んだこと・感じたこと
・韓国版『アウトレイジ』を見ているような、ハラハラしたクライム映画
・主演したマ・ドンソクが人情溢れていて、その上パワフルでかっこいい。
・実話を基にした影のあるシナリオ
映画『犯罪都市』の作品情報
公開日 | 2018年4月28日 |
監督 | カン・ユンソン |
脚本 | カン・ユンソン |
出演者 | マ・ソクト(マ・ドンソク) チャン・チェン(ユン・ゲサン) ファン社長(チョ・ジェユン) チョン・イルマン(チェ・グィファ) ウィ・ソンラク(チン・ソンギュ) |
映画『犯罪都市』のあらすじ・内容

2004年、ソウルでは中国から流れてきたマフィアや韓国マフィアなどの小競り合いが絶えない街になっていました。そんな中、中国から流れてきた新興勢力の「黒竜組」がソウルに姿を現します。
黒竜組のボスであるチャンは残虐極まりない手段で、地元マフィアの「毒蛇組」を乗っ取り、勢力を拡大していきました。縄張りを荒らされたソウルのマフィアたちは怒りは高まり、ソウルは一触即発の事態に陥って事態は悪化の一路を辿ります。
腕っ節の強いソウルの強面刑事、マ・ソクトは事態の収拾を図るために、組織の一掃作戦を立案するが果たしてー。
映画『犯罪都市』のネタバレ感想
【解説】まるで韓国版『アウトレイジ』!緊迫したクライムアクション!

『犯罪都市』は日本映画でいう任侠映画、ヤクザ映画に近い作品となっています。今で言うと『アウトレイジ』、昔の映画だと『仁義なき戦い』に近いですね。『アウトレイジ』のキャッチコピーは「全員、悪人」ですが、『犯罪都市』は「どいつもこいつも悪党ばかり」です。『犯罪都市』は韓国映画ですが、はやりどことなく日本のヤクザ映画っぽいイメージがありますよね。
本作は情け容赦ない残酷なマフィアから、街の人々を守る警察の視点で話が進みますが、警察側も街を守るために綺麗事は一切なしです。警察が他のマフィアと繋がっていたり、賄賂を渡したりするような、少し背徳的を感じるような行為も当たり前のように行われています。しかし、警察側はあくまで街を守りたい一心でマフィア同士の均衡を保ち、街の平穏を維持したいという気持ちから、背徳的な行為も行うのです。そのようなルール無用の危険地帯で、一歩間違えれば街が戦場になるようなスリリングな緊迫感は、日本のヤクザ映画にも負けてはいないと思います。
アクションでは、ヤクザ映画にも関わらずなんと銃が一回も出てきません。アクションは殴り合いか斧などの刃物がメインです。ヤクザ映画で銃が登場しないのは、どうなんだろうと思いましたが、これがパワフルで迫力のある映画の要素となっており、プロレスのような迫力を味わえます。正直、銃がなくても違和感なく鑑賞できるので安心しました。ちょっとグロテスクなシーンもありますが、その分強力な映像作品となっているので、ヤクザ映画が好きな人には絶対楽しめるはずです。
そして、本作は内容的に一作に綺麗に収まっているので、映画として非常に見やすい構成になっていると感じました。シナリオも複雑なものではなく、シンプルでテンポよく展開するので、エンターテイメント作品として非常にすっきりしています。本作はとても鑑賞しやすい映画なので、普段映画を見ない方でも気軽に楽しめるのではないでしょうか。
また、本作はシンプルでありながらも、映画として面白い要素は全部外しておらず、王道的で完成度が高いと思います。例えばマ・ドンソクが演じるマ・ソクトは、強面でマッチョながらも商店街の人や部下の身を常に案じているような、人情溢れるキャラです。これは昔からあるような王道的な人物像で、非常に分かりやすい映画的なキャラですよね。
様々なマフィアが入り乱れ、争いが絶えない街の中ですが、マ・ソクトは仁義を貫きとおし、異様なほどカッコよく映っています。その姿はシンプルかつパワフルです。この人物像は、昔ながらの王道的なヒーロー役を彷彿させます。そう考えると、本作は非常に王道的な映画であると言えるのではないでしょうか。
他にも、ラストシーンのチャン・チェンとの殴り合いも王道的な映画の締め方だったと思います。密室で一対一の戦いも渋くてカッコいいですよね。マ・ドンソクのパワフルなキャラも重なり、満足のいく迫力のあるアクションでした。そのようなことから、『犯罪都市』は本当にシンプルかつ王道で、パワーのある作品であることは間違いありません。本作は非常に王道的で力のある作品なのです。
マ・ドンソクのパワーが凄くてとにかくカッコイイ!

『犯罪都市』の一番の魅力は何と言っても、主役を演じるのマ・ドンソクです。マ・ドンソクは、韓国版ゾンビ映画として大きな反響を呼んだ『新感染 ファイナルエクスプレス』でも出演して、日本でも有名な俳優になりました。
『新感染 ファイナルエクスプレス』のマ・ドンソクはゾンビを素手でなぎ倒し、仁義に厚く人情に溢れた熱血漢キャラで、大きな人気を獲得しました。その筋肉ムキムキで強面でも、人情ある優しい性格である役は話題となり、マ・ドンソクは韓国の人気俳優として活躍していくことになります。
本編の『犯罪都市』でも、その人情溢れる性格とパワフルなキャラは継承されています。アクションでは普通の人の二倍以上はあるかと思うような腕を振り回して敵を倒し、決して悪党に屈さず、街の住民を守ろうしていました。そのパワフルな姿は好印象を覚えますし、思わず憧れてしまうほどカッコイイです。
本作でマ・ドンソクが演じるマ・ソクトは、ただ敵をなぎ倒すだけでなく、その人柄も大きな魅力の一つです。怪我を負った仲間には最大の敬意を払い、警察を辞めようとする部下にも寛大でした。部下の面倒見も良いですし、地元住民からの信頼も厚いです。
そのような性格から多くの周囲の人に支持されていますし、警察や民間人を問わず、多くの人がマ・ソクトに協力していました。このようなことを考えると、マ・ソクトは本当に人間がしっかりした芯のある人物であり、周囲の人から信頼されている素晴らしい人物であることがわかりますよね。
それに加えて、敵に向かっていくときは刃物も恐れず、腕っぷしだけで立ち向かっていくのですから、男性的には本当にカッコイイヒーローとして映ると思います。また、女性にはちょっと弱いというところも人間味がありますね。上司としてもカッコイイし、男としてもカッコイイ。もはや文句のつけようながないレベルのヒーローでした。
マ・ソクトを演じるマ・ドンソクが主演だからという理由で、本作を鑑賞する人も少なくないのではないのではないでしょうか。鑑賞後もまず話題に上がるのがマ・ドンソクです。マ・ドンソク抜きでは『犯罪都市』は語れませんし、他の俳優であったなら映画の魅力も小さくなっていたでしょう。
少しグロいけど、ド迫力でラストまでエンターテイメント性が強い

『犯罪都市』の映像には、過激な暴力描写が少なくありません。斧で腕を切るシーンやハンマーで指を潰すシーンなどがありますので、人によってはかなりグロテスクな内容だと感じる人も多いと思います。
しかし、そのような過激な暴力描写は韓国映画ではさほど珍しくないです。本作より凄惨で不快感を抱く描写は、韓国映画には少なくありません。むしろ、『犯罪都市』はエンターテイメント作品として、過激な暴力の不快感を極力抑えていると思います。
確かにグロテスクなシーンもありますが、暗い雰囲気は少なく、刑事側でもコミカルなシーンも時々見られました。特に銭湯のシーンやマ・ソクトが勝手に人の財布拝借するシーンがそうですね。
笑えるシーンもあるので、映画全体を通してみると憂鬱になるような作品ではありませんでした。そのような不快感を極力抑える工夫をしながら、迫力ある暴力描写を描けたことは評価すべき点です。
また、シナリオ自体もシンプルでテンポがよく、エンターテイメント作品として完成度が高いものとなっています。そもそもヤクザ映画は、三つ巴みたいな複数の組の勢力が入り乱れて、登場人物が多くなり複雑な話になることが少なくないです。
しかし、『犯罪都市』はそこまで複雑ではなく、むしろシンプルな内容でした。映画の構図的にも、人情に厚い強面刑事が両方のマフィアの間をいったりきたりして問題解決を図ろうとする姿は、昔の映画にもよく見られる非常に王道的な内容です。敵側も暴力的で金が目的というところもシンプルで誰にでも分かりやすく、楽しめるということは重要です。
一つ気になったのは、なぜチェン側が何故あそこまで金に執着していたのか?という理由が描かれていないところです。敵側の目的や動機が弱いのためあまり感情移入ができませんでしたね。シナリオの背景が実話を基にしているので、切実な金銭事情があったのかなと思いますが、そのあたりの描写が一切ないので、敵側には狂気ぐらいしか印象が残りません。個人的には敵側の背景の描写をもう少し加えてもよかったかなと思います。
とは言っても、ラストシーンのマ・ソクトとチャン・チェンの最後の勝負も非常に迫力のある映像でした。ラストにチャン・チェンを逮捕して、いつもの態度と変わらないマ・ソクトの姿でみんなの前に現れたのも安心感があってよかったと思います。ここでもマ・ドンソクのパワフルなプロレスが見どころなので、やはりマ・ドンソクの安心感がすごいですね。
敵役のチャン・チェンも迫力あり!狂気に目が離せない

『犯罪都市』はどうしても主役のマ・ドンソクに目がいってしまいますが、敵であるは狂気を秘めたキャラクターをしています。
チャン・チェンは突然ソウルに姿を現した「黒竜組」のボスです。このチャン・チェンの血も涙もないような暴力と狂気は、映画を見ていても強烈な印象を抱きましたよね。チェンの側近である二人も情け容赦なく、まさに冷酷無比と呼ぶに相応しい人物でした。
特にキャバクラの店長の腕を笑いながら斧で切るシーンは、容赦が無さすぎて驚いた人も多いはずです。情けや容赦というものは全くなく、快楽のままに暴力行為や殺人を行っていく姿はまさに恐怖そのもの。完全にイカれてる連中でした。そんなチェンたちによって行われる暴力は、ショッキングに映るシーンも少なくありませんでしね。
チェンたちには「こいつら絶対にヤバイ」というオーラが凄まじく、暴力シーンでない時でも不気味さを醸し出していました。終始そのような明らかにヤバイ雰囲気を出しているので、演じてる俳優たちの演技力に驚かされるばかりです。あのような異様な雰囲気を終始醸し出すのは、並大抵のことではないと思います。
マ・ドンソクが演じるマ・ソクトは、決して部下を裏切らず部下の面倒見も良いですが、チェンは自分が危なくなると、自分の部下でも簡単に切り捨てるほどの非情さを持っています。
また、マ・ソクトはどこまでも街や人々のために行動しているのですが、チェンは完全に金と暴力の快楽といった利己的な理由で行動していました。よく見ると、マ・ソクトとチェンはかなり対照的な人物ですよね。非情に分かりやすい構図なので、これもまたエンターテイメント的に特化してる設定だなと感じる部分です。
ところで、何故チェンはこのような人物なのかは少し疑問に思いますよね。しかし、チェンがどのような過去を持ち、どのような経路で中国からソウルに渡ってきたかは、映画では明らかになっていません。事実ベースを基にしているシナリオなので、何かしらの原因はあるとは思いますが、朝鮮人であるチェンたちの生い立ちは最後まで不明です。
疑問は多少残りますが、チェンたちの狂気と暴力の権化ともいえる姿は恐ろしく、最後の最後まで目的は金と保身だけで、情などは皆無だったので、映画的にはとても分かりやすい「狂った悪党」として描かれていました。圧倒的な狂気と暴力で、敵キャラという意味では魅力的に映る登場人物でした。
中国系朝鮮人という実話を基にしているが・・・

『犯罪都市』は事実を基にしたシナリオですが、事実をベースとした話であることを忘れてしまうかのようなほど、エンターテイメントに特化した作品となっています。
敵役であるチェンたちを、主人公のマ・ドンソクが地域住民や部下たちの力を借りて、悪党達を倒すという分かりやすいシナリオは分かりやすく熱い展開であり、どうみてもエンターテイメントに特化した映画です。
しかし、本作のシナリオは実話を基にして製作されています。シナリオのベースとなった話は、2004年ソウルのチャイナタウンで中国から渡ってきた中国系朝鮮人を警察が一網打尽にしたものです。
これだけ見ると、凄惨な話を想起される方もいらっしゃると思いますが、本作ではそのような暗い話や歴史的な内容は一切含まれていませんでした。しかし、このような事実ベースの話から、移民や差別のような話が一切出てこないというのは、いささか違和感を感じないわけでもありません。
『犯罪都市』は確かにエンターテイメントに特化した作品ではあるのですが、背景となった朝鮮人の話は無視できるものなのでしょうか。確かに、本作はベースとなる実話を気にしなくても十分に楽しめる作品となっています。
しかし『犯罪都市』の本編では、チェンたちの生い立ちが一切描かれず、金と暴力だけが目的となっていて、誰がどう見ても悪党といった立ち位置で描かれていました。分かりやすい悪党ではありますが、その背景は本当に一切触れていません。本作のシナリオのベースとなった話を考えると、やはり個人的に少し違和感が残ります。この違和感の正体が何なのかはわかりませんが、社会的問題をはらんでいるとは少し考えすぎでしょうか。
本作はクライムアクション映画として、完全な娯楽映画であることは間違いないですが、背景となった実話を完全に無視して楽しむというのは、個人的に少し違和感や疑問も感じました。
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※2019年7月現在の情報です。